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「教えない教育」~真に効果のある教育のあり方とは?

2023年11月27日更新

「教えない教育」~真に効果のある教育のあり方とは?

人材育成の重要性の高まりを受け、大人も子どもも学ばなければならないという、学びのブームになりつつあります。人材育成や自己啓発に焦点が当たるのは好ましいことですが、大切なことは教育のあり方です。本稿では、真に効果のある教育のあり方について、「教えない教育」という考え方や、日本の伝統的な教育を参考にしながら考察いたします。

INDEX

教え過ぎの弊害

今や、教育産業が花盛りの時代になりました。矢野経済研究所の調査によると、2022年度の教育産業全体の市場規模は約2兆8,500億円でした。子どもだけではなく、リスキリングのブームを背景に大人も学習対象となって、さまざまなコンテンツや教材、サービスが提供されています。学びの手段やメニューが増えるのは好ましいことですが、その一方で教育産業がサービス業化され、ホスピタリティマインドの名のもとに、丁寧に教え過ぎている傾向にあります。

これは、教育産業が提供する商品・サービスだけではなく、企業の現場でのOJTにおいても、その傾向が強まっているように思われます。教え過ぎや、安易に答えを提供することは、学習者の主体性や自ら考える力を低下させる恐れがあります。昨今、想像力が乏しい人が増えていると言われますが、その原因は教え過ぎにあるのかもしれません。

教えない行為が、本当に大切なことを教えることにつながる

英文学者の外山滋比古(とやま・しげひこ)は、技能伝承などにみられる、かつての日本の伝統的な指導法について次のように言及しています。

昔の塾や道場はどうしたか。入門しても、すぐ教えるようなことはしない。むしろ教えるのを拒む。なぜ教えてくれないのか、当然、不満をいだく。これが実は学習意欲を高める役をする。(中略)弟子のほうでは教えてもらうことをあきらめて、なんとか師匠のもてるものを盗み取ろうと考える。ここが昔の教育のねらいである。学ぼうとしている者に、惜しげなく教えるのが決して賢明でないことを知っていたのである。師匠の教えようとしないものを奪い取ろうと心掛けた門人は、いつのまにか、自分で新しい知識、情報を習得する力をもつようになっている

出典:『思考の整理学』外山滋比古(ちくま文庫)

教えない行為が、本当に大切なことを教えることにつながる――。一見すると相矛盾するような考え方が、実は人づくりの本質を突いているのです。

松下幸之助の指導理念「自修自得」

人材育成に熱い情熱を傾けた松下幸之助は、まさに日本の伝統的な指導法の実践者でした。幸之助の人材育成関連のエピソードを見ていると、部下や従業員に対して指示命令で理解させるのではなく、問いかけや同じメッセージの繰り返し等によって、自ら気づかせるような指導をしていたことがわかります。

彼はことあるごとに、「自分自ら悟る、自分自ら会得しようという意志がなければ、10年やってもダメである」と語り、『自修自得』を基本理念とした人づくり、すなわち「教えない教育」を行っていました。

参考記事:ティーチングからコーチングへ~若手社員の「自ら変わる」力を引き出す教育を│PHP人材開発

基本は相手のレベルに合わせること

そうは言うものの、相手のレベルによっては、教えないといけないこともあります。経験が浅く、もっている知識や技術が充分でない相手には、基本を教えないといけませんし、また、学ぶ意欲や成長欲求が低い相手には、動機づけを行わないといけないでしょう。

しかし、辛抱強く指導を続けるうちに相手が徐々に成長しますので、それに合わせて「教えない教育」にシフトしていく必要があります。つまり、相手の成長段階(マチュリティ)に応じて、指導者の関わり方を変えていくのです。

相手の状況をよく観察して適切な指導スタイルを取りいれつつ、最終的には「教えない教育」、「自ら気づく教育」へと移行していく、そのような指導法が主体的な人材を育てることにつながるのです。

参考記事:新入社員の育て方~成長度合いに応じた指導法とは│PHP人材開発

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部兼人材開発普及部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年、PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年、神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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