部下のやる気を高めるには? 4つの具体的な方法を紹介
2023年9月25日更新
グローバルに見ても、日本企業の社員のやる気の低さは際立っています。やる気の高低は仕事のパフォーマンスに大きな影響を及ぼします。本稿では、やる気のメカニズムを考察したうえで、その高め方について具体的な施策を4つのTipsとしてご紹介します。
生産性と強い相関関係にある「やる気」
ある調査によると、やる気に溢れる社員の生産性は、やる気の低い社員の生産性の2倍超であるという結果が報告されています(※1)。今後、人手不足が急速に深刻化していきますので、社員一人ひとりの生産性を高めなければ競争力がどんどん減退していくでしょう。
したがって、生産性と強い相関関係にある「やる気」をいかにして高めていくかが、すべての企業が直面する喫緊の課題なのです。
※1 ベイン・アンド・カンパニーの調査
部下のやる気を左右するもの
かつてと比較すると、物質的な豊かさを享受しやすくなった現代において、人びとの追求する対象が「モノ」から「心」へと変化してきました。そして、以下の3つの感覚を得られたとき、人は精神的な豊かさを感じ、その感覚を維持・向上しようという内発的な意欲(=やる気)が惹起するのです。
やる気を高める3つの感
(1)貢献感
自分の存在や担当業務が、誰かの役に立っていると感じられること
(2)存在感
自分の存在価値や存在する意味が感じられること
(3)成長実感・予感
この仕事や会社生活を通じて、自分が確実に成長しているという感覚。あるいは成長していけると感じられること
逆に、やる気を失う場合のことも考えておきましょう。先述の3つの要素が欠如した状態になると、やる気を失うのです。
(1)自分の仕事に意義が感じられず、社会の役に立っているという実感が得られない
(2)上司の指導・助言と評価・処遇が適切に行われない
(3)チームや自身の目標が不明確で、仕事を通して成長しているという実感が得られない
上司が実践すべきマネジメント
部下をもつ上司の方がたにとって、人をやる気にさせる力を磨き高めることはたいへん重要な課題です。なぜならば、既に述べたとおり、一人ひとりのやる気の状態が仕事のパフォーマンスに直接的な影響を及ぼすからです。
部下のやる気を高めるための4つのTips
部下のやる気を高めるために、上司が実践するべきマネジメント課題は以下の4つです。
(1)「伝わる」まで「伝える」
会社・部門の目指す方向性や、相手に対する期待・役割を何度も伝えて腹落ちをさせること。一度や二度、伝えるだけでは伝わる状態にはなりにくい
(2)問う
指示命令だけではなく、質問をベースにした対話を重ねることで、相手の内面に主体性が芽生え、やる気が高まる
(3)しっかり「聴く」
表面的なことばだけを「聞く」のではなく、ことばの奥にある本音までも「聴く」ことで、やる気の状態を把握することができ、今後の課題が明確になる
(4)フィードバックする
相手に客観的な事実を知らせることで、自身を違う視点から見つめさせ、自らの長所や改善点に気づかせる。長所を知れば自信が深まり、改善点が明確になればそれを乗り越えようという意欲が高まる
いずれも特別なことではなく、当たり前なことばかりかもしれません。しかし、日本の企業の多くの現場で、やる気の低下が大きな問題になっているということは、当たり前レベルのことが徹底されていないという実態が垣間見えます。
前提となる上司自身のやる気
ここまで部下のやる気をどのようにして高めるか、その方法を考察してきました。言うまでもなく、部下のやる気を高めるための大前提は、上司自身がやる気に満ち溢れているということです。ところが、上司にあきらめ感や疲弊感があり、やる気が低下していることのほうが多いのではないでしょうか。これでは本末転倒で、部下のやる気を高めることはできません。
したがって、上司の方がたは、忙しい中でも日々の内省を通じて自分と向き合う時間を確保する必要があります。そうした営みを通じて、自らの仕事や人生の拠り所となるビジョンが明確になればエネルギーが高まり、それが周囲に波及して個人と組織のやる気が高まるでしょう。
参考記事:松下幸之助に学ぶ 部下のやる気を引き出す管理職の要件│PHP人材開発
的場正晃 (まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部兼人材開発普及部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年、PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年、神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。