若手社員研修で使えるキャリアプラン作成シートの雛型を紹介
2024年1月25日更新
若手社員研修で使えるキャリアプラン作成シートをご紹介します。研修でキャリアプランを描かせるうえでポイントとなるのは、3年後・5年後・10年後のキャリアを「会社の成長」と重ねて描かせること。「社内で習得したい、達成したいスキル」と「自分がどれだけ会社に貢献できるか」を、会社のビジョンにそって考える機会にしたいものです。
キャリアプランと若手社員の将来への不安
先行きが不透明な時代、多くの若手社員が漠然と「将来への不安」を抱いている。まずは会社が、明確に将来の安定・成長に向けての地図を示す必要がある。3年後、5年後、10年後、社会情勢の予測を踏まえて、自社はどうやって力をつけていくのか。
ただし、トップから明確な地図を渡されても、そこに自らの進路を重ねて描ける社員は少ない。ベテランや管理者ならともかく、「会社」と「自分のキャリア」は別と考える社員は多いものである。
「キャリアプラン」は扱い方によっては転職意思を刺激するものになるので、社内で実施する場合は注意が必要となる。あくまで、「社内で習得したい、達成したいスキル」と「自分がどれだけ貢献できるか」を、会社のビジョンにそって考える機会にしたい。
「ワーク・ライフ・バランス」という考え方が注目を集めている。しかし、中小企業では、社員が長く働ける環境づくりが未整備のところも多い。まず企業側が「ワーク・ライフ・バランス」を実現できる仕組みを整えること、また、モデルケースや事例を積極的に紹介することが必要である。
そして、社員には「長く雇用されること」のメリットを伝える。制度が未整備であれば「働き方で悩んだら相談してほしい」という姿勢を見せて、社員からの要望を吸い上げるところから始めるべきである。
次に用意した「キャリアプラン作成シート」は、社員の意欲向上を目指しつつ、会社が「長く雇う」ための情報収集ツールにもなりうる。積極的に活用してもらいたい。
参考記事:なぜ、中堅社員研修でキャリアビジョン(プラン)を描かせる必要があるのか?│PHP人材開発
キャリアプラン作成シートを活用した研修の進め方
会社の今後の展開についてのレクチャーを踏まえて、自身のキャリアの今後を考えてさせる。
(1)実施状況
社員研修内、または事前に記入をさせる。その際、「わが社の3年・5年・10年プラン」を説明する資料を渡し、会社の成長目標を示す。
「今の皆さんに、いきなり『10年後はどんな仕事をしていたいか?』と質問しても、イメージが湧きにくいと思います。一方、会社には明確に今後の計画があります。皆さんは社員としてその計画や目標を知っていますか? まず、1の左の空欄に今から『わが社の計画』を改めてお話しますので、記入してください。3年後、現在は業界シェア30%を50%にすべく、M&Aおよび流通先の拡大を……(以下、会社の事業計画を説明)。
メモをとっていただいた横に、今度は皆さん自身の『3年後・5年後・10年後はどんな仕事をしているか?』を、現状の働き方を維持した場合で考えて記入してください。そのときの年齢も入れてください。
また、一番右に『人生のイベント』とあります。結婚・出産・介護など、想定されるライフイベントを記入してください」
<シート1>の記入が終わった後に、簡単なまとめを入れる。
「会社が成長する中で、皆さんは家庭と仕事をどのように両立していくか、少し見えてきたのではないかと思います。その中で、一度キャリアを休まなければならない場面や、働き方を工夫する場面が出てくるかもしれません。その際には、まず上司に相談をするようにしてください。
さて、今度はもう少し具体的に『目標を立ててキャリアを積む』ためのプランを考えてみましょう。
皆さんの今持っているスキルやポジション・業務内容を『現状』の欄に書いてください。一番右には『今すぐやらなければならない』課題克服のための行動や、勉強内容を具体的に書きましょう」
その後、3年後・5年後・10年後に持っていたいスキルや就いていたい仕事、それを達成するための行動目標を記入していきます。
(2)実施時間
1.をレクチャーと記入で15分程度、2.は15分程度。様子を見て時間調整。名前を記入してもらい、回収する。後日コピーして返却。査定に響くものではないことを、しっかりと伝える。
(3)まとめ
「先を見通して仕事をする」ことの重要性を伝え、まとめる。時間があれば「10年後のために今日からすること」をテーマに、一人ずつ発表させることでさらに効果が上がる。
※出典:『[実践]社員教育推進マニュアル』(PHP研究所)
著者:茅切伸明(株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役)・松下直子(株式会社オフィスあん 代表取締役。社会保険労務士、人事コンサルタント)