なぜ、中堅社員研修でキャリアビジョン(プラン)を描かせる必要があるのか?
2017年6月23日更新
中堅社員が自らのキャリアビジョンを描くことがなぜ大切なのでしょうか。その理由、目的を解説します。
中堅社員にキャリアビジョンを描かせる理由
人生の中で長い時間を占める職場での経験、キャリアは、仕事を通じたその人の人生そのもの。どのような経験、キャリアを積んでいくのかも、決して人任せ、受け身になるのではなく、自らのキャリアビジョンを描き、主体的に経験を積んでいきたいものです。
日々慌ただしく目の前の仕事に追われているだけでは、仕事の「意味」を見失い、やりがいも感じにくく、困難に直面した際に、乗り越える力も湧いてきません。時に目線を上げて、将来の「なりたい姿」や自らの人生を思い描くことが、意欲的、主体的に仕事、人生に向かう上で、大変重要なことなのです。
特に、中堅社員のみなさんにとって、想像できることのほとんどは実現できること。将来の姿、やるべきことを明確にして意欲をもって仕事に取り組んでほしいものです。
参考記事:中堅社員研修で使えるキャリアプラン作成シートの雛型を紹介│PHP人材開発
キャリアを構想することで得られるもの
自らのキャリアを構想することで次のようなことが得られます。
1)自分の職業人生を受け身ではなく、主体的に生きることができるようになる
2)目標をもって取り組むことで、早い成長が期待できる。また、自分の強みを戦略的に育成・強化することができる
3)結果として、「エンプロイアビリティ」(企業から積極的に雇用される力)が高まる
私が担当する中堅社員研修では、自らの人生、キャリアを構想するために、「私のキャリアアンカー」として、仕事とプライベートにおける次のことを書きだしていただきます。
・Must(やるべきこと、期待されていること)
・Can(やれること、得意なこと、強み)
・Want(やりたいこと、大切にしたいこと)
そして、現場の主力、中堅社員として、また、人生の土台作りの期間の今、何に力を入れるべきなのかを明らかにしていきます。さらに
1)私が大切にしたいこと(人生理念)
2)どんな人生にしたいか(人生ビジョン)
3)大切な人、感謝している人
4)私のがんばる理由
5)大切なものを大切にし、ありたい人生を手に入れるためにすべきこと
などを考え、自らの人生に主体的に向かう意識をより高めていただきます。
キャリア構想を深める
そして、より一層仕事を通じた人生を充実させるために、次のことに考えをめぐらせていただき、キャリアの構想を深めてもらいます。
1)自らの強みや実務能力(専門知識、スキル)
2)実務能力以外の人間性やリーダーシップ
3)現在の仕事への取り組み姿勢についての周囲からの評価
4)周囲からの人望
5)仕事上の3年後のありたい姿
6)将来、どのような企業人になりたいか
7)上記を踏まえた上で、自身の革新テーマは何か?
「職場は道場」~魚谷雅彦氏(資生堂社長)
最後に「職場は道場」。目の前の仕事(Must)に打ち込むことで、キャリアが拓けるという話をご紹介しましょう。
資生堂・社長の魚谷雅彦氏は、「国際的な仕事をしたい」という夢をもって就職したにもかかわらず、最初の会社では国内営業の仕事に従事する日々が続き、くさりかけていました。ある人からの励ましによって、目の前の仕事を頑張ろうと気持ちを切り替えてから仕事の成果が出始め、ヘッドハントされていくつかの会社の経営に携わるようになったのです。この経験を元に、魚谷氏は「明確な目標をもちつつ、目の前の仕事に徹底的に取り組めと勧めたい」と語っておられます。
働きがいを感じにくい仕事や職場に身をおいても決して投げやりにならないこと。「職場は道場」、どんな仕事からも学ぶことはあるはずです。(参考:「THE21 2012年3月号」PHP研究所)
「今、ここ」を大切にしたキャリア開発
PHPゼミナールの中堅社員研修では、キャリア構想を深めていただくとともに、現場の中心社員である中堅社員に、「今、ここ」を大切にし、今、なすべきこと(Must)をしっかり行うこと、とお伝えしています。それが、できること(Can)をさらに増やし、経験、実力、周囲からの信頼を一層増して、やりたいこと(Want)ができる力、環境を備えることにつながる、とお話します。
想像力の差が、行動の差、結果の差、人生の差と言われます。
中堅社員のみなさんには、自らの将来を思い描き、夢を語るとともに、ありたい姿を実現するため、キャリア開発の考え方をぜひ学んでいただきたいものです。
旗持玲子(はたもち・れいこ)
PHPゼミナール講師
1990年、北里大学理学部卒業。製紙会社研究員、専門学校講師等を経て、1998年、アール人材開発合資会社を設立。以後、研修講師としてワクワクするセミナーを提供中。PHP研究所認定上級インストラクター・ビジネスコーチ上級・チームコーチ。