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組織開発コンサルタントの手法を学ぶ

2019年4月12日更新

組織開発コンサルタントの手法を学ぶ

組織開発コンサルタントは、どのような手法でクライアント企業の変革を促しているのでしょうか。PHPゼミナール講師がその一端をご紹介します。

「テーブルの下の会話」

私達組織開発コンサルタントは、クライアントの企業の会議やミーティングに参加することが多々あります。会議の準備、進め方、参加者の参加度、議論の方向性などについて必要に応じて途中でフィードバックや視点を変える質問をしたりし、議論を深めたり、効果的に成果を上げるよう会議のゴールに向けてサポートします。

その際、コンテントとしてテーブルの上で取り交わされている会話や議論以外に、メンバーやメンバー間に起きているプロセスを観察します。その多くは言葉では発しない自分の中の会話や、心の声のように受け取れるものや、無意識に取っている行動・振る舞いとその傾向に着目します。そして、それらを「テーブルの下の会話」とか「テーブルの下で起きていること」という表現をします。

今ここで起きていることを受容する

組織開発の現場では、このような出来事を扱って行きます。メンバーやメンバー間に起きているプロセスや無意識に取られている振る舞い、反応は、組織開発の現場では現象、出来事というデータとなります。

組織開発コンサルタントは、このデータを基にフィードバックや介入(intervention)、様々な働きかけを行います。

つまり「今、ここ(Now Here)」で正に起きていることをメンバーが認識(受容)し、そこから気づきや学びに繋げていきます。

マイクロコズム(小宇宙、小さな環境)の考え方

そして組織開発の現場では、対話や実習、ワーク、体験学習プログラムを活用し、丁寧な「ふりかえり」を行い、体験を通じての学びを重要視します。

会議やミーティングにおける議論、会話、振る舞い、思考は、限られた(選ばれた)人数、少人数の人達のものであっても、ここで起きていることは、組織全体でも起きているだろうというマイクロコズム(小宇宙、小さな環境)の考え方に基づいています。

往々にして、私達は組織で作りだしていること(葛藤や不協和、コミュニケーションミス等のプロセスロス)を、小さな場や環境においても作ってしまうことが多いのです。

社会構成主義

組織開発では、様々な理論や考え方、手法が活用されます。歴史を遡ってみると組織開発は様々な変化や発展を経て今日に至っていることがわかります。

組織開発がどのような理論や学術的領域をベースにしているかを知ることにより、人材開発との違いも認識しやすくなると考えます。

組織開発のベースにある考え方に、社会構成主義があります。社会構成主義とは、本質主義に対抗する社会学の概念の一つで、社会における様々な事象・出来事は人の認知の世界にあり、生成的なものであるという考え方です。

ケネス・J・ガーゲンは、日常使っている言葉や感情は、所属しているコミュニティ(組織、社会)の文化であり、異なる文化のもとでは、言葉の意味する内容、感情、反応が全て異なる。そして、人々はお互いの言葉のやり取り(対話、ダイアログ)の中で「意味」を作っていくのであり、「意味」とはメンバー(話し手と聞き手)の相互作用の結果であると言っています。

Words create world(言葉が世界を創る)。

「ナラティブ」とは?

組織の中がぎくしゃくしたり、パフォーマンスが発揮できていない時、組織構成員がその状況をどのように認知し、状況や組織全体に対してどのような意味づけを行っているかがとても重要です。

組織開発の目的の一つに、この意味づけを変えることがあります。

構成員が組織に対して悲観的で期待できないという意味付けを行っていたとしたら、そのままでは良い方向に変化する可能性は低くなります。

逆に、組織は今、次のステップに向けた移行期にあり、将来に向けて発展が期待できるという認識をしているならば、肯定的な変化や発展が見込まれるでしょう。

この意味づけを自身の物語としてストーリー化したものとして「ナラティブ」があります。現在、組織の生成的発展に、ナラティブを活用する取り組みが、盛んに行われています。

ゲシュタルト心理学

組織開発コンサルタントがプロセスを直接扱う際にベースとしているものに「ゲシュタルト心理学」があります。ゲシュタルトとは、精神療法としてフレデリック・パールズが始めたことは有名です。

人間の精神を、部分や要素の集合ではなく、全体性や構造に重点を置いて捉える考え方で、この全体性を持ったまとまりのある構造をドイツ語でゲシュタルトと呼びます。

ゲシュタルトは、だまし絵で有名な「図と地」という概念を持っています。人は対象物か背景いずれかしか認識することができず、意識を向けたものが図として浮かび上がるという考え方をとります。

ルビンの壺

人々の日常の出来事や、組織における物事の認識も同様であると考えます。       

ゲシュタルトを組織開発に融合させたものが、ゲシュタルトOD(組織開発)です。ゲシュタルトODの特徴としては、「経験のサイクルとユニットオブワーク」、「ユース・オブ・セルフとプレゼンス」、「抵抗」といった概念があります。

SENSATION(感覚)、AWARENESS(気づき)、ENERGY MOBILIZATION(エネルギーの高まり)、ACTION(アクション)、CONTACT(コンタクト)、RESOLUTION CLOSURE(解消・終結)という経験のサイクルで、感覚から気づきに移る時、地が図となるととらえ、そのタイミングが組織の中で、人によってバラバラの状態では、全体としての動きに支障をきたすと考えます。人々のこのサイクル(気づきのタイミング)を調和させることで、組織の効果性や健全性を実現しようとします。

もう一つ重要な概念にユース・オブ・セルフがあります。ユース・オブ・セルフは組織開発コンサルタントが組織に関わる際、自分自身の「今、ここ」の体験を活用することを言います。自らの観察、価値観、感情などに基づき動くことです。

また、プレゼンスとは、組織開発コンサルタントが、今ここで観察したこと、気づいたことをメンバー(クライアント)やそのシステムに正直に伝えることを通して、刺激し、喚起することです。

より全体的で熟慮的な関わりになることから、影響を及ぼすコンサルタント自身の在り方、感情の傾向、価値観などについて客観的に捉えるスキルが必要なことです。

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福田祥司(ふくだ・しょうじ)
NECグループ、三菱ケミカルホールディンググループにて、システムエンジニア、プロジェクトマネージャー、事業企画管理、経営企画管理担当。2014年、組織開発、人材開発、経営コンサルティングを柱とするインテリジェンスフィールド合同会社を設立。業界業種を問わず幅広い企業、組織を対象に経営改革、組織変革、人材育成の支援を行っている。PHPゼミナール講師。

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