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リテンション・マネジメントとは? 社員の離職理由とその対策を解説

2021年11月17日更新

リテンション・マネジメントとは? 社員の離職理由とその対策を解説

近年は労働者人口が減少しており、人材確保や従業員の離職に悩んでいる人事採用担当者は少なくありません。そうした中で注目を集めているのが「リテンション・マネジメント」です。そこで今回は、リテンションとは何か、従業員の離職理由とその対策についても解説します。

INDEX

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人事部門におけるリテンションの意味

そもそも英語表記の「retention(リテンション)」には、維持や保持といった意味があります。ここから転じて、人事の分野では「人材の維持や保持」という意味で使用されるのが一般的です。優秀な人材の離職を防ぎ、その能力をいかんなく発揮できる状態を作る人事施策の総称をリテンション・マネジメントと呼びます。

リテンション・マネジメントにおいては報酬や福利厚生の見直しだけではなく、働きやすい、やりがいある環境づくりへの改善など、金銭や処遇以外の取り組みも検討しなければいけません。

リテンション・マネジメントの重要性

近年は少子化で労働人口が減少し、各企業の求人倍率が上昇しています。従来は定年まで勤める終身雇用が当たり前でしたが、求職者有利の人材市場では転職しやすい状況にあるのが現状です。

転職へのハードルが下がる現代では、会社に不満があった場合、我慢をせずにより働きやすい環境や良い条件を求めて転職するのが普通です。現代の転職は、労働者にとってポジティブな選択肢になっているのです。一方で人材不足を感じる企業は多く、優秀な人材の獲得や既存従業員の定着率の低さに頭を抱えるケースも少なくありません。

深刻な人手不足が懸念される中、優秀な人材ほど採用競争は熾烈になります。人事としては、既存従業員の満足度を向上させ、いかに離職を防ぐかを考えなければいけません。このような状況でリテンション・マネジメントが注目され、多くの企業が真剣に取り組んでいるのです。

リテンション・マネジメントで得られる6つの効果

リテンション・マネジメントを実施することで、企業は次のような効果を得られます。

1. 社員の定着率が上がる
2. 優秀な人材を採用できる可能性が高まる
3. 人事管理のコストを削減できる
4. 知識やスキルなど社外漏洩を防げる
5. エンゲージメント向上に繋がる
6. 社員一人ひとりの生産性が上がる

リテンション・マネジメントでどのような効果を得られるのか、それぞれの項目を確認しましょう。

1.社員の定着率が上がる

リテンション・マネジメントを実施することで、社員の定着率を上げられます。リテンション・マネジメントで人材の離職原因となる問題を突き止め、改善策を講じることができるからです。離職の原因は社員によってもさまざまですが、主に仕事に対する負荷とモチベーションによるものが大きいでしょう。なかには、部下の定着率を管理職の評価対象にする企業も少なくありません。仕事に対するモチベーションは、直属の上司の対応次第で変わることが多いからです。

また、リテンション・マネジメントの強化でコミュニケーションが活性化するため、職場における人間関係のトラブル防止や精神的なストレス低減を図れるのも嬉しい効果でしょう。

2.優秀な人材を採用できる可能性が高まる

現在の人材市場は求職者にとって有利であり、ほとんどの企業は求職者から選ばれる立場です。このような状況下で離職率の高い企業は、求職者から敬遠される傾向が強まっています。特に若年層は仕事よりもプライベートを重視する働き方を求めていることが多く、離職率が高いというだけでマイナスイメージに繋がり、企業に対する興味関心が失せてしまうのです。

リテンション・マネジメントを実施すれば人材の定着率が高まるため、求職者に離職率が高いといったマイナスイメージを持たれることはありません。また、求人に対して優秀な人材の応募率が上がり、採用に繋げられる機会も多くなります。

優秀な人材は環境に対応しながら主体的に動ける力を持っているため、職場の利益にも貢献してくれます。周囲にも良い影響をもたらしてくれるはずです。

3.人事管理・採用コストを削減できる

リテンション・マネジメントを強化すれば、人事管理、採用コストを抑えられます。通常、新入社員が入った場合、会社や事業内容を理解してもらうために教育訓練を行わなければいけません。また部署に配属された後も、仕事に慣れるまではOJTやオンボーディングなどを用いた教育が必要で、新入社員を育てるためのコストがかかります。

そこでリテンション・マネジメントを実施すると、定着率が向上するため社員の教育研修にかかる時間が削減され、人的なコストを低減できるのです。

社員が長く働き続けてくれる職場は、採用活動に時間や費用をかける必要がなくなります。上司は既存社員の教育に注力できるため、即戦力となる人材が増え、企業の利益に繋げられるでしょう。

4.知識やスキルなど社外漏洩を防げる

リテンション・マネジメントの実施で、長く勤務する高業績者の持つ知識やスキルなどの社外漏洩を阻止できる効果があります。リテンション・マネジメントが機能していない企業の場合、時間や人的なコストをかけて人材を育てても離職に繋がる事例が多いのです。

離職する社員が高業績者だった場合、今まで培った知識やスキルが外部に流出する恐れがあります。なかには知識やスキルだけではなく、営業先や取引先の人脈や社内機密が流出することも否めないのです。

リテンション・マネジメントを強化すれば人材の流出自体を回避できるため、重要な情報が社外に漏れる心配はありません。逆に、高業績者の持つ知識やスキルを企業の安定的な成長に役立てられます。

5.エンゲージメント向上に繋がる

働きやすい職場は、社員のエンゲージメントを向上させます。そもそも社員のエンゲージメントとは、企業への信頼や貢献意欲を指す言葉です。社員のエンゲージメントが高いほど愛社精神があると判断でき、社員の離職を回避できるでしょう。

特に近年は働き方の多様化により、在宅ワークやリモートワークを導入する企業も増加しています。効率の良い働き方を追求できるようになったものの、このような状況下ではコミュニケーションが取りづらくなり、社員のエンゲージメントを維持するのが難しくなっているともいわれます。リテンション・マネジメントはこのような課題にも効果を発揮してくれます。

6.社員一人ひとりの生産性が上がる

リテンション・マネジメントによって離職率が大幅に改善されれば、職場は経験豊富な社員が増えてきます。当然のことながら、新人社員よりも勤続年数の長い社員のほうが業務の生産性が高いです。そのため、職場全体の業務効率化が見込めます。

近年は働き方改革により、残業を減らすための施策を行っている企業がほとんどです。リテンション・マネジメントを用いて離職率を下げることができれば職場の生産性が上がり、なおかつ部下一人ひとりの残業を減らすことができるでしょう。短い時間でも結果を出せる職場環境を整えられます。

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従業員の離職に繋がる2つの要因

ブラック上司に悩む会社員たち

リテンション・マネジメントを用いて社員の離職を回避するには、まず離職に繋がった要因をきちんと理解することが大切です。社員の離職に繋がる要因には、ポジティブな事柄とネガティブな事柄があります。

離職という結果は同じであっても、離職を決断した要因が異なることも多いのです。それぞれどのような違いがあるのかを確認していきましょう。

1.ネガティブな要因

● 人間関係や職場の雰囲気が合わない
● 業務内容が自分のキャリアに役立たない
● 自分にかかる業務の負担が大き過ぎる
● 自分や会社の将来に不安を感じた
● 労働時間が長いのに給料が安い
● 自分の評価に不満を感じている
● 会社の理念や経営方針に不満がある

直接的な離職の理由には、職場での人間関係が多くなっています。次いで上位を占めるのは、「上司が信頼できない」や「人間関係、職場の雰囲気が合わない」といった理由です。

2.ポジティブな要因

● 仕事の領域を広げたかった
● これまで以上に能力や知識を発揮したい
● 新しい分野に挑戦したい

転職に繋がったポジティブな理由には、「仕事への意欲はあるものの、今の会社では自分の理想を実現できない」といったものが挙げられます。ポジティブな理由で離職を検討する社員の場合、上司がしっかりとコミュニケーションをとれば離職を回避できることも多いです。

とはいえ近年はテレワークが浸透しており、上司と部下とのコミュニケーションが希薄化しやすい傾向にあります。その結果、求心力が低下し、テレワークなどの環境が若手の早期離職に拍車をかけている面は否定できません。

リテンション・マネジメントの具体的な施策

リテンション・マネジメントで講ずるべき施策は、以下のとおりです。

● 働きやすい環境の整備
● 給与体制や人事評価の見直し
● キャリアアップの支援
● ジョブローテーションの実施
● 管理監督者の研修を実施し、若手社員の特徴を理解した育て方を今一度学んでもらう
● 若手社員に対する1on1やアンケートを実施する
● 1年目の後半、3年目、5年目などの区切りで研修やミーティングを実施する

リテンション・マネジメントの施策は、金銭的報酬と非金銭的報酬に大きく分かれています。金銭的報酬とはその名のとおり、社員に金銭的な報酬を与えて定着を促す手法です。例えば、業績に応じたボーナスや優秀社員に対するインセンティブの付与が挙げられます。労働の対価であるお金を支払うことで、社員の働く意欲を刺激することが目的です。金銭的な利益を得られる金銭的報酬の効果は高いですが、一時的な効果に過ぎない場合もあります。人材流出を回避するには、金銭的報酬だけでは不十分である場合があることを理解しておきましょう。

一方で非金銭的報酬とは、社員が仕事にやりがいを感じられるように、労働の価値を生み出して定着を促す方法です。例えば、労働条件の改善や多様な働き方の導入、人事評価制度の見直しなどが挙げられるでしょう。優秀な人材は、自身のキャリアプランや理想とするライフスタイルが明確で、そのプランや理想を実現できる職場を選ぶ傾向があります。このような場合、非金銭的報酬が効果を発揮してくれることが多いのです。

日本企業で従来取り入れられていた終身雇用が崩壊し、労働市場が流動化している現状において、若手社員の離職を完全に防ぐことは難しいでしょう。とはいえ、自社の状況を正確に把握し、現状に合致した対策を施す企業の離職率が低いことは間違いありません。ここで紹介したリテンション・マネジメントの施策は、対策のすべてが必要ということではなく、あくまで参考です。まずは自社にあう施策を検討しましょう。検討した施策を社内で正しく取り入れられれば、求めていた効果が出るものです。

離職を防ぐには? 上司が実践すべき3つのポイント

部下の離職率の低下は、直属上司のマネジメント、部下への日常の働きかけ次第で大きく変わります。上司がマネジメント上で留意すべきポイントとしては次のようなものがあります。

1. 「成⻑実感」をもたせる
2. 仕事の「意義」を理解させる
3. コミュニケーションを促進する

これらはリテンション・マネジメントにおける非金銭的報酬の手法です。それぞれの手法を細かく確認しましょう。

1.「成⻑実感」をもたせる

成長実感と成長志向について、どちらが仕事への意欲や組織のパフォーマンス、働き続けたい気持ちなどに大きな影響を与えるかを見たところ、どの項目においても成長実感の影響度が大であることが分かっています。離職を防ぐには、社員に成長実感をもたせることが大切です。

社員に成長実感をもたせる施策には、意図的に成功体験を積ませることが有効であるといえます。そこで社員にとって無理のない範囲の業務を任せてみましょう。その業務で成功を収めれば、成長実感を得られるだけではなく当該社員の自信にも繋がります。

2.仕事の「意義」を理解させる

自分の業務に対してワクワク感を抱いている社員ほど転職思考が弱く、感じていない人ほど転職思考が強いことが分かっています。社員の離職を回避したいのならば、上司は部下に対して仕事の意義を理解させることが重要です。

仕事の意義を伝えるには、まずDoable発想とDeliverable発想の違いを理解しなければいけません。Doable発想とは、業務の側面だけを捉える発想のことです。一方のDeliverable発想とは、業務を通じて誰にどのような価値を提供しているのか、といった観点から仕事を捉える手法のことをいいます。

上司が部下に対して仕事の意義を伝えるには、このDeliverable発想を重視することが大切なのです。Deliverable発想を意識して対話を繰り返すことで、部下は仕事の意義を理解することができ、仕事に対するワクワク感の向上に繋げられます。

3.コミュニケーションを促進する

コミュニケーションの促進は、社員の定着率を向上するうえで重要なポイントです。近年は在宅ワークやリモートワークといったように働き方が多様化するなか、上司と部下の関係性が希薄になる傾向があります。

希薄な関係のまま放置すると部下の離職に繋がるため、あらゆる手段でコミュニケーションの量や質を高めることこそが大切です。部下とのコミュニケーションを促進するスキルには、次のようなものがあります。

傾聴のスキル

文字どおり傾聴のスキルとは、相手の話を聞くスキルのことです。話を聞くだけと簡単に考えがちですが、多くの人は無意識に自分が知りたい情報だけを聴いていることがよくあります。部下の発する言葉には必ず意味があり、上司にはその意味を汲み取ろうとする姿勢が求められるのです。また相手の話をただ聴くのでなく、部下が安心して話ができるような雰囲気づくりも大切といえます。聴く姿勢や視線など相手の状態に合わせることを意識しながら、部下の話をしっかりと聴いてあげましょう。

承認のスキル

承認スキルとは、部下を褒めて受け入れることです。例えば、部下とコミュニケーションを取るとき、相手の良い部分を言葉や態度に表して褒めてあげましょう。上司から褒められると、部下は「認められた」や「評価された」と感じます。

他者から認められると自己肯定感が上がるため、仕事のモチベーションが向上する人が多いのです。また一度褒められると、「次の仕事でもまた褒められたい」と考えて任せられた業務を必死に頑張ろうとします。承認のスキルをうまく活用すれば、仕事に対する部下のやる気を向上できるでしょう。

質問のスキル

質問のスキルは、対話を通して部下に新たな気づきを与え、自発的な行動を引き出すための力です。上司は質問を通して正確な情報を引き出したり、部下の理解状況を確認したり、本音を聞き出したりすることができます。ただし、上司は単に質問をすれば良いわけではなく、部下に気づきや発見、変化をもたらす質問を投げかけなければいけません。そのような質問を投げかけることで部下は自分で考え、気づき、そして自発的に行動するようになるのです。

フィードバックのスキル

フィードバックとは、部下が行った業務に対して上司が改善や学び、成長に繋げるためのアドバイスをすることです。仕事の成功や失敗を放置するのではなく、次にもっと良い仕事ができるように改善を繰り返すことで人は大きく成長できます。業務が多い職場の場合、成功や失敗に対して考える暇もなく、またすぐに次の仕事を行わなければいけません。このような場面で上司が主導となり、仕事に対するフィードバックを行うことで部下に気づきを与えられます。より大きな成長へと導けるため、部下の自己肯定感が高まって定着率も向上できるでしょう。

まとめ

近年は少子化が進んでおり、働き盛りである労働人口が減少しています。一方、人材市場は求職者有利で求人が溢れている状態です。

応募者が集まらず、優秀な人材を確保できなくて頭を抱える企業も少なくありません。このような状況下では、既存社員の定着率を高めるリテンション・マネジメントの実践が有効です。まずは社員の離職要因を突き止め、自社にあう施策を検討してみましょう。

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