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「自走する組織」とは? メリットやつくり方、企業事例を紹介

2024年2月13日更新

「自走する組織」とは? メリットやつくり方、企業事例を紹介

収益面の好調さとは裏腹に、日本の会社の現場には今なお問題が山積しています。そうした問題を解決する上で有効なアプローチとして、本稿では「自走する組織づくり」に焦点を当て、基本的な考え方と実践方法を考察します。

INDEX

「自走する組織づくり」が求められる背景

昨年来、日本の株式市場が活況を呈し、日経平均株価は34年ぶりに37,000円を上回りました。また大企業を中心に最高益を更新する企業も続出しています。一見すると日本の産業界は、コロナ禍や戦争、物価高等の障壁を乗り越え、力強さを取り戻しつつあるかに見えます。
しかし、個々の企業に目を転じると解決すべき問題が山積しています。具体的には、ホワイトカラーの生産性の低さ、不祥事を根絶できないマネジメント、イノベーションが起きにくい職場風土、等々があるでしょう。こうした問題は、以前から企業の現場で発生していましたが、根本的な解決が図られることなく先送りにされてきた感があります。

 

「自走する組織」とは? 定義とメリット

日本の会社が抱える諸問題は、「やらされ感」を感じながら仕事をする社員が多い(※1)ことに起因するという指摘があります。やらされ感で仕事をすると、やる気が上がらないので、当然パフォーマンスも上がりません。今、多くの会社に必要なのは、やらされ感から解放された自走する組織をつくることでしょう。
自走する組織とは、組織を構成する社員一人ひとりが、自ら走ることができる組織と定義できます。自走組織では、人びとは指示命令を受けて行動するのではなく、やるべきことを自分で考えて行動します。自分で決めたことに対しては所有感が高まりますし、最後までやり抜こうという責任感も芽生えます。また、もっと効果的・効率的なやり方はないか、創意工夫する発想も誘発され、イノベーションの創出にもつながります。

※1 米国のギャラップ社の調査(2023年公表)によると、日本企業の従業員のやる気は調査対象125カ国中、最低であった。

参考記事:やらされ感のない組織のつくり方│PHP人材開発

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「自走する組織」の具体例 日本レーザーにおける全員経営

レーザーの専門商社である(株)日本レーザー(年商:62.9億円、社員数:60人)は、現会長の近藤宣之氏のリーダーシップのもと、社員が一丸となって自走組織をつくってきました。
同社にはノルマがありません。営業部門では、個々の営業担当者が自分で販売目標を設定し、それらの総和がボトムアップ的に経営層に上げられ、会社の事業計画としてオーソライズされます。自分で設定するからといって、安易に達成できるような低いレベルに目標を置く社員はいません。そして、自分で決めた目標を達成するために、強い責任感をもって最後までチャレンジし続けていきます。
同社が競争の激しい業界の中で、無借金経営、29年間連続黒字を達成しているのも、自走する組織をつくり上げたことが大きな要因であると思われます。

「自走する組織」のつくり方 3つのポイント

日本レーザーでは、最初から理想的な組織運営ができていたわけではありません。かつては債務超過に陥り、倒産の寸前まで追い込まれた時期(1994年)もありました。同社の再建のために親会社(当時)の日本電子から送り込まれた近藤氏が、人を大切にするマネジメントを徹底することによって徐々に会社が変わっていったといいます。

近藤会長が、試行錯誤を重ねながら到達した「自走する組織づくりのポイント」は以下の3点です。

(1)主体者意識を育む
・あらゆる教育機会を活用して、自分たちの事業が果たす社会的責任や意義を徹底的に腹落ちさせる
・指示命令ではなく質問を多用し、自分で考えさせる
・マイクロマネジメントを排除し、信じて任せる
・チャレンジした結果の失敗は責めない

(2)健全な危機意識を醸成する
・すべての社員に経営情報を開示し、経営状況を理解させる(尻に火を点ける)
・ビジョンを明示し、ワクワク感を高める(心に火を点ける)

(3)仲間意識を育む
・人の可能性と善性を徹底的に信じる
・リストラは決して行わない
・心理的安全性を高め、一人ひとりの本音を引き出す
・社外のステークホルダーも仲間と位置づけ、大切にする

「自走する組織」をつくる経営者・リーダーの人間観

ここまで日本レーザーにおける実践事例をもとに、自走する組織のつくり方を考察してきました。具体的にどういう仕組みをつくり、何をするかは重要ですが、もっとも大事なことは、経営の根底にある人間観のあり方です。
もし、経営者やリーダーが組織を構成する「人」の可能性と善性を信じることができなければ、いかにすぐれた仕組みや仕掛けがあったとしても、自走する組織をつくることはできないでしょう。
組織を活性化させたいという問題意識があるなら、まず経営者、リーダーの方々が、自らの人間観の内容を点検してみることを強くお奨めしたいと思います。

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的場正晃 (まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部兼人材開発普及部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年、PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年、神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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