中堅・若手社員に求められるリーダーシップ行動とは?
2018年12月20日更新
近年のリーダーシップ理論では、職場全体の活性化につながる「全員発揮のリーダーシップ」が注目を集めています。役職や権限のない中堅、若手社員にもできるリーダーシップ行動には、具体的にどのようなものがあるでしょうか?
リーダーシップ理論~近年の研究
近年「リーダーシップ」は、これまでとは異なる新しい見方がなされるようになり、若手社員の段階でリーダーシップ開発を行なう動きが広まってきています。この流れについては「才能も権限もいらない『新時代のリーダーシップ』とは?」でご紹介していますが、この新しい時代のリーダーシップについて、背景にある理論を紹介いたします。
そもそもリーダーシップとは、何でしょうか? 近年の研究の流れを受けて、リーダーシップとは、「職場やチームの目標を達成するために他のメンバーに及ぼす影響力」(石川淳,2018)と定義されています。この定義の中に「役職・権限・カリスマ」などに関する言及はありません。つまり、リーダーシップはリーダーのみが発揮する行動のことではなく、「誰が発揮してもよい行動」なのです。
重要なポイントは、職場やチームが目標を達成することに対して、他のメンバーに対してどのような影響を発揮しているかということです。したがって、若手社員が、職場にプラスになるような行動をして、他者にポジティブな影響を与えれば、それはリーダーシップ行動を取ったと捉えることができるのです。
シェアード・リーダーシップ
役職や権限のない中堅・若手社員も含めて全員がリーダーシップを発揮する状態を、昨今の研究領域では「シェアード・リーダーシップ」と呼びます。
シェアード・リーダーシップが特に効果的なのは、やるべきことが明確でなく、複雑で、創造性が求められ、専門性の高い仕事だと言われています。世の中の変化を受けて「定型的な仕事」は少しずつ少なくなってきています。シェアード・リーダーシップは今まさに、多くの職場で必要とされている考え方だといえるでしょう。
役職や権限のない中堅・若手社員にもできるリーダーシップ行動
役職や権限のない中堅・若手社員にもできるリーダーシップ行動には、具体的にどのようなものがあるでしょうか?
率先垂範
まず、リーダーシップ行動において最も重要な要素は「率先垂範」です。率先垂範とは、自分が動くことで、周りの人に「こういうふうに行動すればよいのだな」と示す行動のことです。まずは自分から行動して周りに良き影響を与えることがリーダーシップ発揮のポイントになるのです。
その上で、特にどのような行動を率先垂範すればいいか、3つの視点でまとめてみると、それは「個の確立」「同僚支援・環境整備」「目標設定・共有」になります。
個の確立
「個の確立」とは、自分自身が個人として確立するように努力することを指します。例えば、なにか新しいことをやってみようと思ったり、自分自身が成長したりする行動のことを指します。こういう行動をすることで、周りの人たちも「あの人が挑戦しているならば自分もやってみよう」と思うような雰囲気を作ることができます。特に中堅・若手社員は、直接誰かに指示をするというよりも、自分自身が成長しようとする姿で周りを動かすという側面が大きいでしょう。
同僚支援・環境整備
「同僚支援・環境整備」とは、自分の周りにいる人たちが行動しやすくなるよう環境を整えることを指します。例えば、自分が若手社員であっても、上司や同僚が動きやすい環境はどのようなものかを考えて行動したり、チームの目標を達成するために自分は何をすべきか考えることなどがあてはまるでしょう。
目標設定・共有
「目標設定・共有」とは、目標・計画を立てて周りの人と共有することです。例えば、理想の職場の環境について考えたり、職場として具体的な目標を明確化する行動のことを指します。中堅・若手社員の間は、自分が職場の理想を語って巻き込むという行動はとりにくいかもしれません。でも、上司が掲げている理想や目標がチームに共有されていないと感じた時に、「向かうべき方向はこっちなんじゃないかな?」などと同僚と話し合い、メンバーの意識のベクトルを合わせるような働きかけをすることはできるでしょう。
このように、自分たちが向かうべき方向を確認する行動も、リーダーシップ行動のひとつと言えるのです。
中堅・若手社員が職場で実践できるーダーシップ行動
そして、リーダーシップの三本柱をさらに具体的な行動に落とし込んだのが、下の「リーダーシップ行動の具体的な種類」です。
リーダーシップ行動の具体的な種類
個の確立
・新しさを求める
・自分自身が成長しようとする
・挑戦する
・立ち直る
・約束を守る
・フィードバックを求める
・流されない
・自分を客観的に見る
環境整備
・お互いに認め合う
・意見を求める
・やる気を引き出す
・良い雰囲気をつくる
・仲間を助ける
・利害を調整する
・役割、指示を与える
・フィードバックする
目標設定・共有
・理想を描く
・理想を共有する
・目標を立てる
・計画を立てる
・目標
・計画を共有する
・進捗を管理する
ここで示しているように、リーダーシップ行動にはいくつもの種類があります。こういった行動の中から、一つか二つをピックアップして日々の仕事の中で実践することが、リーダーシップ発揮の第一歩につながるのです。
出典:『リーダーシップ教育のフロンティア 研究編』(北大路書房)
的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。