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入社3年目の若手社員に伝えておきたい「3つの『つ』」

2019年6月28日更新

入社3年目の若手社員に伝えておきたい「3つの『つ』」

一通りの仕事を覚え、自分で判断し行動する機会が増える入社3年目。若手社員として自立した姿勢が求められるようになります。そんな時期に伝えておきたい「3つの『つ』」を紹介します。

INDEX

入社3年目 若手社員の課題

一通りの仕事を覚え、仕事に対する自立した姿勢が求められるようになるのが入社3年目です。入社1~2年目とは違い、若手社員として自分の仕事に対する判断も責任も、ある程度上司から本人に移行します。これまでのように、逐一、上司への確認を取らなくても、自分の判断で仕事を進められるようになるため、本人の仕事の処理速度は上がります。
ですが、その一方で業務内容がタコ壺化して仕事の進め方が自己流になる、コミュニケーション量が減り周囲との人間関係が希薄になる、仕事の成果を「自分の実力」と勘違いする、仕事が惰性になって新鮮味や丁寧さに欠けた怠慢が生まれる、などの独特な課題が出はじめてくるのも入社3年目の特徴です。

そんな入社3年目の社員に、本当の意味で一人前となってもらうために伝えておきたいのが「3つの『つ』」です。

入社3年目の社員に伝えておきたい「3つの『つ』」

1.詰め
2.繋がり
3.積み重ね

参考記事:新入社員は入社3年で「伸びる人材」と「伸び悩む人材」に分かれる│PHP人材開発

効率化と手抜きの境界線

1番目の「つ」は、仕事の「詰め」です。
中国の史書『戦国策』には、「百里の道を往く者は九十九里をもって半ばとせよ」

仕事がある程度自分の判断で出来るようになる入社3年目の社員は、これまでの経験から仕事の達成が感覚的に「見える」ようになってきます。上司の目を離れて、最後まで自分の仕事を自分でやり切れるという意識があります。そうなると、最後の最後で詰めが甘くなり、油断や怠慢が出て、仕事が雑になりやすくなるのもこの時期です。

仕事の全体像が見えるようになってくると、人は効率化を図れるようになります。しかし、そこには落とし穴があります。それは効率化と手抜きの境界線が見えていないとハマってしまう落とし穴です。効率化の条件で絶対に忘れてはならないことは、仕事の成果のクオリティ(品質)を下げてはいけないということです。ここを見失うと、効率化という建前の手抜きが生まれ始めます。

筆者はよく研修などである取り組みをしてもらいます。それは、前の画面に大きなイラスト(例えば、機関車のイラスト)を映し出し、それを受講者に制限時間10分でA4の白紙に丁寧に描き移してもらうというものです。そして今度は同じイラストを制限時間2分で描き上げてもらいます。
すると、どれだけ絵が上手な人でも10分と3分では描き移したイラストのクオリティに差が出ます。受講者にはこれが効率化という建前の手抜きであると知ってもらうのです。
そして、この効率化と手抜きの罠に、はまってしまいやすいのが、仕事の詰めの部分なのです。

仕事のメドが立ち、詰めに入る部分は、ゴールが一番よく見えます。そこに油断が生まれやすいのです。登山でも九合目は怪我をしやすいと言われていますが、仕事でも何でも最後の最後まで丁寧にやり切るという態度が一人前と半人前の差と言えるでしょう。

仕事の成果は多くの人の助けによって生まれている

2番目の「つ」は、「積み重ね」です。入社3年目になり一通りの仕事を自分でこなせるようになると、自分の実力を過信しやすくなります。よい仕事の成果を出せるようになっても、それが自分の実力によるものであると勘違いをしてしまうのです。これは謙虚さどうのといった話以前の問題です。
たしかによい仕事の成果が出せるということは、本人の実力があることは確かです。しかし、本人がその仕事を行えるということは、ほかの誰かが別の仕事を受け持ってくれているからです。その他にも直接的にも間接的にも、その仕事をサポートしてくれる人がいてくれるからです。その会社でその仕事があるということは、過去にその仕事を生み出してくれた先輩たちの存在があったからです。その仕事を必要としてくれている人々の存在もあります。そして何より、本人がその仕事で成果が出せるよう、成長を支援してくれた人々の存在があるのです。
そういった多くの繋がりの中で生まれた恩恵によって、自分は仕事を任され、活躍の場が与えられているということに気がつかなければなりません。
成長とは見えなかったものが見えるようになるということです。感謝できなかったものに感謝できるようになるということです。
繋がりという見えない恩恵に気づき、感謝できるようになってこそ一人前です。

小さなことの積み重ねこそが、ただ一つの道

仕事ができるようになると、目先の成績や成果に執着が生まれるようになります。しかし、長い職業人生の中でいくらよい成果を上げたとしても、それが単発であればあまり大きな意味を持ちません。偶然、運に恵まれていただけかもしれないからです。
仕事で求められるのは、よい成果を上げることではなく、よい成果を上げ続けることです。逆境や不況があっても、一定の品質を守り抜ける仕事をすることです。そこに近道などはありません。地道で丁寧な積み重ねがあるだけです。

2019年3月に現役を引退した元メジャーリーガーのイチローさんは次のような言葉を残しています。

「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行く、ただ一つの道」

この言葉は、メジャーリーグで年間安打記録を塗り替えたときの記者会見で発した言葉と言われています。

同じように、将棋棋士の通算勝数の記録を27年ぶりに塗り替えた羽生善治九段も、

「天才的なひらめきも地道な積み重ねなくしては生まれない」

と、サッカー元日本代表監督の岡田武史さんとの対談時に語っています。よい成果を上げ続ける、強くたくましく発展し続ける、そのためには地道な積み重ねが重要なのです。

入社3年目には、仕事ができるようになったからこそ訪れる数々の罠があります。しかし、仕事ができるようになっただけではまだまだ半人前。「詰め・繋がり・積み重ね」という3つの「つ」が丁寧に継続できるようになって、はじめて一人前なのです。

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延堂溝壑(えんどう こうがく)
本名、延堂良実(えんどう りょうま)。溝壑は雅号・ペンネーム。一般社団法人日本報連相センター代表。ブライトフィート代表。成長哲学創唱者。主な著書に『成長哲学講話集(1~3巻)』『成長哲学随感録』『成長哲学対談録』(すべてブライトフィート)、『真・報連相で職場が変わる』(共著・新生出版)、通信講座『仕事ができる人の「報連相」実践コース』(PHP研究所) など。

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