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承認と厳しさのバランス~中堅社員のモチベーションを上げる方法とは?

2022年8月17日更新

承認と厳しさのバランス~中堅社員のモチベーションを上げる方法とは?

組織の中核を担う30歳前後の中堅社員の方がたのモチベーション低下が、多くの企業で問題視されています。なぜ、彼ら彼女らはモチベーションが低いのか、どうすればモチベーションを上げることができるのか。本稿では、承認とフィードバックという観点から、その解決策を考えてみたいと思います。

INDEX

「承認不足」で元気のない中堅社員

PHPゼミナールでは、階層別・テーマ別にさまざまな公開コースを開催していますが、受講生にもっとも大きな変化が見られるのが「中堅社員研修」です。
このコースの受講生は、20代後半から30代半ばの一般社員の方がたが中心ですが、非常にモチベーションが低い状態で研修に参加します。他のコース、例えば階層が近接する「若手社員研修」「係長研修」の受講者に比べても、その差が顕著です。

なぜ、この階層の人たちのモチベーションが極端に低いのでしょうか。要因はいくつか考えられますが、最大の要因は「承認不足」です。この階層の方がたは、現場の中核を担う存在として期待もされ、責任も大きくなってくる時期に入っています。当然、苦労が多くプレッシャーも強い中で、仕事を頑張っているにも関わらず、周囲から承認されることが少ないので、モチベーションを下げているのです。

そこで、「中堅社員研修」のなかでは、講師は受講生一人ひとりと真剣に向き合って承認のメッセージを伝えることに徹しています。2日間にわたって承認され続けることによって、受講生の表情が見違えるように生き生きしてきますし、発言内容もポジティブになっていきます。
同コースの受講生に大きな変化が見られる理由は、他者からの承認によって自己肯定感が高まり、モチベーションが上がるからなのです。

参考記事:自己肯定感が低い若手社員をどう育てる?~高め方のヒントと承認スキル

承認とは

ことほどさように、人を動機づけるうえで非常に重要な要素が承認ですが、その概念に対する理解は、人それぞれの解釈に委ねられているようです。そこで、改めて承認の定義やその効果に対して考えてみたいと思います。

承認とは、「相手の良いところを認めて伝えること」と定義づけられます。この定義のポイントは、伝えることであり、伝えるためにはことばにする必要があります。つまり、良いところを認めていても、心の中で思っているだけでは相手に伝わらないのです。

承認の3つの効果

そして、承認の効果には以下の3つがあります。

  • 認められると嬉しくなる ⇒ 気分がポジティブになる
  • やる気とエネルギーが増す ⇒ 自己肯定感が高まる
  • 承認してくれた人への信頼感が深まる ⇒ 人間関係が良好になる

承認を上手に使いこなして、上記のような効果を上げることができれば、当然のごとく、人材開発・組織開発に大きな成果が得られるでしょう。

 

松下幸之助に学ぶ、部下のやる気の高め方

ここで、人のやる気に火をつけた事例として、松下幸之助の人づくりに関するエピソードをご紹介しましょう。

ある日、松下幸之助が松下電池工業(現・パナソニックエナジー)の自転車ランプの製造現場を視察に来ました。実際に自転車ランプを手に取ってスイッチを動かしながら、「今のスイッチは、どうなっているか」と質問した幸之助に対して、企画課長が「今でもこれです。これを使わしてもらっています」と答えました。
すると、みるみる幸之助の顔色が変わり、事務所中に聞こえるような大声で怒り出したのです。「これは、わしがつくった、考え出したスイッチやで。君の考えたのはどれや。君は何も考えていないではないか」と。そして、ぱっと立ち上がって、「返せ、返してくれ」と手を出し、給料を返せと言い出しました。
厳しい叱責はその後もしばらく続きましたが、最後に「もうええわ。しかし、君だったらやってくれると思ったし、今でも思っているで」と言い残して、幸之助はその部屋を出て行きました。
叱られた課長は、最初はへこんでいましたが、最後は「ようし、これはやらねばならん」という気になり、同じ場に居合わせた人たちも同じ思いになって、職場全体が盛り上がっていったのです。

承認と厳しさのバランス

時代背景が異なりますので、幸之助の行動や発言だけに焦点を当てると、現代の企業では「パワハラ」と言われかねません。しかし、幸之助の言動の根底にある、「思い」に焦点を当てると、違った側面が見えてきます。

幸之助が厳しく叱るのは、相手の可能性を信じているから、真剣に向き合ってそのことを伝えようとしているのです。そして、どんな人でも厳しく叱責されると気分が落ち込むので、必ず最後は相手を承認するようにしていました。

承認とフィードバック

こうした幸之助流の指導法は、現代の代表的な人材育成スキルである「フィードバック」に通じる部分があります。両者に共通しているのは、相手にとって耳の痛いことを言いつつ(情報通知機能)、最後は期待を伝えて承認し、相手のやる気を高める(立て直し機能)という、2つの機能から成ることです。

人を育てるうえで、2つの機能のバランスが大切になります。厳しいことだけ言っていても相手のモチベーションが上がりませんし、承認だけだと成長するための課題に気づくことができなくなります。つまり両方の機能が必要なのです。
人を指導する立場の方がたには、相手の可能性を信じたうえで、言うべきことを言いつつ、相手のやる気を引き出す承認をバランスよく使い分けていただきたいと思います。

参考記事:部下指導の最強の武器となる人材育成法「フィードバック」

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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