生きがい・働きがいを高めるパーソナルブランディングとは?
2023年2月 3日更新
上司から命じられたことだけをただこなしていくよりも、自らを高め、自らの意思でパーソナルブランディングを確立するほうが、仕事から得られる喜びは何倍にもふくらんでいきます。自分自身を客観的に分析し、課題を克服して成長していくことが重要です。
パーソナルブランディングとは
買い物をするとき、同じ商品で同じ値段だった場合、「好きな店員さん」「知識が豊富で感じのいい店員さん」から買いたいという意識がある人も多いでしょう。その店員さんのファンともなれば、たとえ他店よりも値段が高かったとしても、ぜひその人から買いたいと思うはずです。そのような店員さんは、顧客から「他の誰でもなく、あなたから買いたい」と思ってもらえる「パーソナルブランディング」を確立しているといえます。
どんなジャンルでも、専門技術や専門知識、豊かな経験が求められる仕事であればなおさら、「この仕事ならこの人に頼めば間違いない」と思ってもらえる「パーソナルブランディング」を構築することが重要です。そうした「個人」が自身のプロモーションを行うことで、企業のイメージアップも図られます。同時に、その人のアイデンティティも明確になるでしょう。
パーソナルブランディングの基本ステップ
自分の強みを知り、パーソナルブランドを確立していくには、次の5つのステップで考えていく方法が有効です。一つひとつの項目をよく考え、できるだけ客観的に自分自身を把握していきましょう。
[第1ステップ]自分を知る
自分の強みや個性はどのようなものか、思いつくままに書き出します。
[第2ステップ]顧客を知る
自分を必要としている人は誰なのか、その人たちに何が提供できるのかを考えます。
[第3ステップ]競合を知る
自分と似たような存在、ライバルといえる存在は誰かを考えます。
[第4ステップ]自分の軸をつくる
自分自身のプロフィールを作成します。その際、自分のスキルや過去の実績を周囲に伝えるための一覧表(ポートフォリオ)も併せて作成します。
[第5ステップ]知らせていく
自分と自社のファンを増やしていくにはどうすればいいか、ターゲットとなる顧客に知らしめていく方法を考えます。
パーソナルキャンバスで自己の課題を知る
もう一つ、パーソナルブランディングを明らかにしていくのに有効な「パーソナルキャンバス」というフレームワークをご紹介します。これは、新規事業の構想や既存事業の見直しなど、会社のビジョンを整理するために考案された「ビジネスモデルキャンバス」の個人版です。自分という人間を会社に見立てて、周囲との関係性や経営資源の状況を勘案しながら、「自分で自分を経営していくうえでの課題」を明らかにしていきます。
上記の基本ステップと内容が重なる部分もありますが、改めて次の9項目についてよく考え、思いついた順に下のフォーマットに記入してみましょう。徐々にビジネスパーソンとしてのあなたの実像が浮かび上がってくるはずです。このフォーマットはこちらのサイト(https://businessmodelyou.com/)から無料でダウンロードできます。
(1)「誰のために役に立つか」
あなたのお客さんは誰でしょうか。社内・社外のかかわりのある人すべてがお客さんになり得ます。視野を広くもって考えてみてください。
(2)「自分自身」
あなたがもっているリソース(知識、スキル、経験、人脈など)には、どのようなものがありますか。
(3)「主な活動」
現在、どのような仕事をしていますか。
(4)「どのように役に立つか」
あなたのお客さんに対して、どのような価値を提供していきますか。
(5)「価値を認知させ、届ける手段」
あなたのお客さんに対して、どのようにしてあなたの価値を知らせますか。
(6)「コミュニケーションの取り方」
あなたのお客さんと、どのようにして関わっていきますか。
(7)「支援者・協力者」
あなたを支援したり、協力したりしてくれる人は誰ですか。
(8)「得るもの」
日々の活動を通して、(給料以外に)あなたは何を得られますか。
(9)「自己投資」
自分の価値を上げていくために、どのような投資(お金、時間)が必要ですか。
「個人」を「企業」に見立てる「社員稼業」という考え方
パーソナルブランディングに関連して、パナソニックの創業者である松下幸之助が提唱した「社員稼業」という考え方をご紹介します。幸之助は次のように述べています。
自分が社員稼業の店主であるとなれば、上役も同僚も後輩も、みんなわが店のお得意でありお客さんである。そうすると、そのお客さんに対し、サービスも必要であろう。第一、商品を買っていただかなくてはならない。創意工夫をこらした提案を、誠意をもって売り込みにいく。用いられたとなれば、わが店、わが家業は発展していくわけである
単に指示された仕事をこなすだけでも、もちろん人の役に立つことはできます。しかし、個人と組織が発展し、やりがいや生きがいを感じつつ、さらに高みを目指していくためには、企業人一人ひとりが「経営者」の感覚をもち、自分自身を高めてブランディングしていくことが重要です。そうした意識をもって日々の仕事に取り組めば、より多くの方々から喜ばれ、あなた自身の喜びも増大していくに違いありません。
※本記事は、PHP通信ゼミナール『仕事のやりがいを高め、自律的に成長するための「5つの原則」』のテキストを抜粋・編集して制作しました。
PHP通信ゼミナール
『仕事のやりがいを高め、自律的に成長するための「5つの原則」』
松下幸之助の思想・哲学に基づいたフレームワーク「5つの原則」を学ぶことで、自己成長のための方策を明らかにし、実践につなげるためのコースです。
森末祐二(もりすえ・ゆうじ)
フリーランスライター。昭和39年11月生まれ。大学卒業後、印刷会社に就職して営業職を経験。平成5年に編集プロダクションに移ってライティング・書籍編集の実績を積み、平成8年にライターとして独立。「編集創房・森末企画」を立ち上げる。以来、雑誌の記事作成、取材、書籍の原稿作成・編集協力を主に手がけ、多数の書籍制作に携わってきた。著書に『ホンカク読本~ライター直伝!超実践的文章講座~』がある。