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パワハラ相談窓口の役割は? 対応のポイントは?

パワハラ相談窓口の役割は? 対応のポイントは?

(2019年12月 6日更新)

 
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パワハラ防止法で、企業の措置義務の筆頭として挙げられているのが、相談窓口の整備です。そこで今回は、問題発生時(有事)のマネジメントの一つであるパワハラ相談窓口の役割や、担当者の対応のポイントをご紹介します。

 

パワーハラスメント防止のための「指針案」の内容

本題に入る前に、本年(2019年)11月20日、厚生労働省労働政策審議会分科会において、パワーハラスメント防止のための「指針案」の内容が示され、了承されたことにふれておかなければなりません。筆者は、パワハラかパワハラではないのかの「判断基準」が示されるのではないかと大いに注目していましたが、下表のように「事例」をもって「判断基準」を示す方法がとられました。

 

【指針案で示されたパワハラ類型と主な具体例】

パワーハラスメントの具体例

(産経新聞オンラインニュースより)

 

労働側はこれでは不十分だと反発したようです。確かに内容的にはなお曖昧で、微妙な部分が残っているように感じます。しかし、パワハラかそうでないかは、もともと二者択一で割り切れるものではなく、それよりは社内のしかるべき権限を持った部署が、不適切な言動を見聞きしたら個別に指摘して改善させる、というパワハラ対策の体制が機能していることが大事ではないでしょうか。

 

パワハラ相談窓口の役割を社内に周知する

事業主は、(前述の定義)のないよう、労働者からの相談に応じ、必要な体制の整備その他の雇用管理上の措置を講じなくてはならない。

(第30条の2より)

 

いわゆるパワハラ防止法の中で、企業が講じなくてはならない措置義務の筆頭として挙げているのは、平たく言えば、相談窓口の整備です。会社は、相談窓口を設け、従業員から相談があったら迅速に調査を行い、不適切な言動があれば指導や懲戒を行い、紛争を自主的に解決する。法律は、相談窓口に並々ならぬ期待を寄せていることがわかります。

相談窓口の開設にあたって、人事部としてまずやっておくべきことは、相談窓口の役割について十分に社内に周知しておくことです。「相談したけれども全然味方してくれない」「相談窓口はやっぱり会社と上司を擁護するんだ」といった様々な誤解を生んでしまうことがあるので、窓口の役割を明記して、ポスターや社内報、イントラネットなどで十分に周知しておく必要があります。それは、相談窓口にとっても社員に約束した行動基準になります。以下はその一例です。

 


 

1.パワーハラスメントの相談は当社の○○○○で受け付けます。

 …電話番号、メール、文書宛先、匿名の可否等。

2.相談したことで処遇上の不利益な取扱いをすることはありません。

 …ただし相談者に、相談とは関係なく不適切な行為があればまた別です。

3.相談者に問題解決のための適切なアドバイスを提供します。

 …パワハラの定義、パワハラの6類型とその本質、判断基準等

4.相談者了解のうえで、行為者の言動について調査をする場合があります。

 …相談窓口が勝手に調査をすることはありません。

5.場合により、職場の関係者(第三者)を調査する場合があります。

 …相談窓口が勝手に調査をすることはありません。

6.相談者、行為者、調査関係者のプライバシーに配慮します。

 …相談者、行為者、調査関係者には秘密情報の守秘義務があります。

7.調査の結果により、関係者を指導または懲戒する場合があります。

 …会社は会社の判断基準に基づき、公平中立的な立場から評価・判断します。

8.なお、社外の契約先相談窓口として××××もあります。

 …契約先は相談者の秘密情報の守秘に努めますが、社員の生命・財産などの重大な危険が迫っているような場合は、会社に連絡する場合があります。

9.関連する相談窓口の案内

 …メンタルヘルス相談窓口/健康カウンセリング相談窓口/その他相談窓口

 

パワハラ相談窓口の対応には高度なスキルが必要

相談窓口の役割の周知とともに、大事なのが担当者の応対スキルです。

相談者の多くは、相談窓口は自分の味方になってくれるものと思って相談してきます。しかし窓口担当者としては、相談者の話を一方的にうのみにするわけにはいきません。一つ一つ聞き返して事実を確認していこうとすると、「あなたは私の話を信用していないのですか」と相談者を怒らせてしまうことがあります。

また、相談窓口担当が「ちょっとおかしなことを言うな」と相談者の発言を勝手に判断し、不用意に、「あなたの部下にこんなことを言っている社員がいます。注意したほうがいいですよ」などと上司に言ってしまった結果、相談者が配転されて、これを無効とする裁判が起きた例もあります。こじれにこじれて最高裁まで行き、配転の無効と損害賠償が確定しました(オリンパス社員通報事件 2012.6.28付最高裁第1小法廷(白木勇裁判長))。窓口の初期対応を誤ると、相談者も会社も致命的な損害を被ることになった事例です。

このように、担当者には思いのほか高度なスキルが必要とされています。

しかし、大丈夫です。厚労省が出している『パワーハラスメント社内相談窓口の設置と運用のポイント(第4版)』に従って対応していけば、なんとかやっていけそうな自信がつくと思います。パワハラ関連で厚労省が運営しているサイト『明るい職場応援団』(※)の中にあります。『明るい職場応援団』は情報があまりにもてんこ盛りにされているため、使いづらいところがありますが、当ガイドは経験豊富な弁護士が書いているので、窓口担当者には非常に頼りがいがある資料です。

 

※厚生労働省『明るい職場応援団』https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/

 

パワハラ相談窓口の担当者が心すべき7つのポイント

かつて企業のコンプライアンス室で社内相談窓口の担当者を数年間やっていた私の失敗や経験を踏まえて、特に運営上で注意すべき点をお伝えします。

 

(1)担当者は相談者と和して同ぜず

相談者は大きなストレスをかかえ、駆け込み寺に駆け込むような気持ちで相談してくる場合が少なくありません。その気持ちには十分配慮しつつも、事実を確認できない状態ではあれこれ判断できない、という立場を崩してはなりません。

 

(2)社員に「不利益な取り扱いをしない」ということの意味を理解させておく

相談したことによって、社員が処遇上の不利益な取り扱いを受けないということであって、その社員が不正を働いたり罪を犯したりしていた場合は、それはそれとして処理されます。ただし、自分から申し出たことで、一定の情状酌量があるかもしれません。

 

(3)相談窓口担当者が相談者の利害関係者でないこと

担当者が相談者と利害関係があるような場合は、公平な対応ができにくくなるので、窓口責任者は担当者を代えるようにすべきです。

 

(4)証言者の利害関係に注意する

第三者にヒアリングといっても、職場の中では第三者が相談者や行為者と利害関係を持っている場合があります。口裏合わせや陥れの証言もあると認識したうえで、対応しなくてはなりません。

 

(5)相談者・関係者の秘密保持はきわめて重要だが、調査の過程で危うくなりやすい

調査にあたっては、関係者には調査内容に関する守秘義務が生じることを伝えますが、調査対象者が増えてくるとどうしても漏洩のリスクは高くなります。ですから、調査対象者は必要最低限に絞ること。また調査にあたっては、あらかじめ作成しておいた「情報守秘義務に関する誓約書(メモや覚書でもいい)」に日時とサインをもらうなどするといいでしょう。

 

(6)パワハラかそうでないか断定する必要はない

行為者が不適切な言動に気がついて、改めてくれればよいのであって、処罰が目的ではありません。もちろん懲戒処分が必要な場合もありますが。

 

(7)相談者の安全を第一に考える

調査をしたが、行為者には特段の不適切行為はなかった。しかし、相談者は深く傷つき病んでいるというような場合、「パワハラはなかった」で済まされるでしょうか。そんなことはありません。企業には安全配慮義務があるからです。相談者の健康回復のために、行為者と接しない他部署への配置換えすることや、心のケアのための受診を薦める必要があります。安全配慮義務は、企業が負う義務です。労働契約法の第5条に定められ、2008年3月に施行された比較的新しい法律です。

 

次回に続きます。

 

コンプライアンス教材

 


 

星野邦夫(ほしの・くにお)

慶應義塾大学文学部卒。帝人株式会社で初代の企業倫理統括マネージャー。2007年度内閣府「民間企業における公益通報者保護制度その他法令遵守制度の整備推進に関する研究会」委員。2009年より一般社団法人経営倫理実践研究センターで「ハラスメント研究会」を主宰。「パワーハラスメント防止」や「会社員の個人不祥事防止」などをテーマに、企業・団体向け研修を多数実施している。一般社団法人経営倫理実践研究センター上席研究員


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