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社員が「幸せな会社」とは、どのような会社か?

2019年2月14日更新

社員が「幸せな会社」とは、どのような会社か?

昨今、社員が「幸せな会社」という視点で企業のあり方が論じられることが増えてきました。今回はその定義と、組織の存在理由や目的について考えます。

社員が「幸せな会社」とは何か?

近年、「いい会社」「幸せな会社」というキーワードが随分と一般的となってきたように思います。ベストセラーとなった法政大学大学院教授の坂本光司先生の『日本で一番大切にしたい会社』(あさ出版)や、過重労働や行き過ぎたハラスメントで従業員を駒のように使い捨てるブラック企業の反対に、関わる人々の幸せを追求する「ホワイト企業」という言葉も誕生し、徐々に社会に浸透してきています。

思い返すと、日本において「幸せな会社」といった視点で企業のあり方が論じられるようになったのは、2011年の東日本大震災を境にしてのことだったように記憶します。それまでの日本では、いい会社として雑誌やニュースで取り上げられる会社といえば、事業成長の著しい会社、成功を収めているベンチャー企業、といった人目をひく会社がほとんどでした。

物質的な豊かさに偏りすぎていた近年の日本

日本では1945年の敗戦以降、人の幸せも物質的な豊かさに偏りすぎていたのではないでしょうか。たとえば、その象徴ともいえるのが家電の「三種の神器」という表現です。1950年代の「白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫」にはじまり、「3C(カー・クーラー・カラーテレビ)」、平成に入ってからはあまり一般的には浸透しませんでしたが、それでもマスコミでは「デジタルカメラ・DVDレコーダー・薄型テレビ」、「スマートフォン・PC・タブレット」といった具合に情報を発信し、物質的な豊かさを幸せの指標として測ってきた節があります。

物質的な豊かさは幸せではない、とは必ずしも思いません。しかし、物質的な豊かさに偏り追求し続けた結果、現代の私たちは「本当の人生の豊かさは、物質的な豊かさだけでは満たせない」ことに気づき始めたのではないでしょうか。本当の豊かさには、心の豊かさも必要です。

心の豊かさとは、豊かな人生を送るということです。そのためには、イキイキと生き、イキイキと働くことが大切です。一説には一生涯の労働時間は人生の3割とも言われていますが、その労働時間が苦労苦痛では、とても幸せな人生とは言えません。しかし現代社会では職場内での様々なハラスメントや重労働長時間労働によって、精神疾患や自殺は後を絶ちません。組織で働くということの意味とはいったい何なのでしょうか。

組織の存在理由について考えてみる

組織の存在理由について考えてみたいと思います。「組織」という言葉を辞書などで調べてみると、「組織とは、ある目的を追求するために人や物が集まり、秩序立てられた集合体」という意味合いのことが書かれています。つまり組織とは、目的を追求するための集団であると言えます。組織の存在理由は、この「目的」を追求するためにあると言えるでしょう。

では、組織の目的とは何でしょうか。目的とは筆者なりの言葉で簡潔に表現させてもらうならば、それは「何のために」です。たとえば「人は何のために生きるのか」、これは「人生の目的」です。人は皆、自らの人生に「あなたは自分の人生を、何のために生きるのですか」と問われ、生きています。

では、組織の目的とは。これは組織によって様々あってよいと思いますが、会社組織というものについて考えるならば、それは企業理念です。しかし、その企業理念はいったい何のためにあるのでしょうか。企業理念のさらに上位の目的です。筆者は組織の最上位目的は、次の一点に限ると言えるのではないかと考えています。それは「幸せ」です。

会社組織の究極の目的は、「幸せ」の追求にある

株式会社という組織の場合、これまで組織の目的は「利益の追求」と言われてきました。しかし近年、そうではないと言われ始めています。「利益を追求するのは、何のためか」という、多くの人々の視点が「利益追求の上位目的」に向くようになったからです。

利益の追求は何のためか、それは幸せのためです。そして組織立って働くということは、幸せの追求のために助け合ってより良い仕事の成果を生み出すためなのです。人は皆、幸せになるために生きています。以前、ある企業の経営幹部の方が筆者に対して次のようなことを言っておられました。「従業員のためにも、会社は永続的であらねばならない。そのためには、会社の永続的発展がやはり第一の目的である」「そのためにも従業員一人ひとりには、ある程度の無理も我慢してもらわなければ、会社の永続的発展は得られない」「会社の永続的発展が得られなければ、従業員の幸せも得られないのだから、第一となるのはやはり会社の永続です」。

もっともらしく語っておられましたが、その会社は毎年の離職率が20%を超えており、筆者にはその会社の従業員の方々の表情は疲れているように見えました。会社の永続的発展のために従業員があるのでは、本末転倒ではないでしょうか。

これは会社が永続的でなくてもよい、という単純な対比思考の意味ではありません。一見すると、「会社の永続か、関わる人々の幸せか(A or B)」という状況を、どのようにして「会社の永続と、関わる人々の幸せと(A and B)」という困難とも思える難題に立ち向かい実現していくのかを考えるからこそ、会社組織での仕事が尊いのです。

目的と目標を混同してはなりません。会社の永続はそこに関わる人々の幸せの追求のためです。「私は不幸になりたくて、一生懸命生きています」という人など、誰一人としていません。勉強・スポーツ・趣味・仕事・家庭、それらはすべて幸せのためにあると言えます。これを会社組織というものに置き換えて考えてみると、「会社は、関わる人々の幸せのために存在している」ということが、はっきりと見えてくるのではないでしょうか。

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延堂溝壑(えんどう こうがく)
本名、延堂良実(えんどう りょうま)。溝壑は雅号・ペンネーム。一般社団法人日本報連相センター代表。ブライトフィート代表。成長哲学創唱者。主な著書に『成長哲学講話集(1~3巻)』『成長哲学随感録』『成長哲学対談録』(すべてブライトフィート)、『真・報連相で職場が変わる』(共著・新生出版)、通信講座『仕事ができる人の「報連相」実践コース』(PHP研究所) など。

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