ダイバーシティ研修とは? 注目される背景や実施で得られる効果を解説
2022年3月29日更新
個人の価値観やライフスタイルの変化により、働き方について企業の柔軟な対応が求められるようになりました。ダイバーシティ研修とは、各人が働く人の多様性を理解し、それぞれの知識や能力を最大限に発揮して企業競争力を高めていく組織をつくるための研修です。今回は、ダイバーシティ研修の概要を解説します。
INDEX
注目を集めるダイバーシティ研修とは
ダイバーシティとは「多様性」を意味し、年齢や性別、人種などあらゆる属性の人が集まる状態のことです。
近年は少子高齢化による労働人口の減少で、女性や外国人など多様な人材を採用する企業が増えています。また、定年後の再雇用やシニア社員の活躍も、多くの企業で見られるようになってきました。
このように、さまざまな立場の人が働く職場では、それぞれの価値観や考え方を尊重しながら協力して業務を行い、企業競争力を高めていかなければなりません。
ダイバーシティ研修は、働く人がお互いに働きやすい職場環境を整えるために、多様性を理解し、理解を深めることが目的です。
ダイバーシティが意識され始めた背景
ダイバーシティの考え方は、1960年代のアメリカから始まっています。当時は、人権問題の解消や雇用機会の均等などを推進するための社会運動が活発化していました。企業においても、少しずつダイバーシティの考え方が受け入れられ始め、今では企業を成長させるために欠かせないものとして定着しつつあります。
一方、日本では、1980年代からダイバーシティの考え方が認識され始めました。その後、どのような変化が起きたのかを確認していきましょう。
男女の雇用差別の問題がきっかけ
ダイバーシティの考え方は、日本では1980年〜1990年代にかけて徐々に認識されるようになりました。そのきっかけとなったのは、男女の雇用差別問題です。当時、労働者が性別によって差別されることなく、能力を十分に発揮できる雇用環境を整備することが大きな課題となっていました。そして、1985年には男女雇用機会均等法が、1999年には男女共同参画社会基本法が策定され、男女の差別をなくし、人権を尊重することが企業に義務付けられました。
これらの法律が制定されて以降、日本の企業でもダイバーシティという考え方が認識されるようになっていったのです。
労働人口の減少により意識が高まる
2000年に入ると、ダイバーシティ・マネジメントを取り入れた経営に注力する企業も増えました。特に日本では、少子高齢化により労働人口の減少が進んだことで、人材の確保に課題を抱える企業が増えました。そうしたなかで、女性や外国人、シニアの採用が進められてきたのです。
また企業を成長させるには、縮小傾向にある国内にとどまらず、海外にも事業を展開して利益確保を目指すことも必要です。このような時代の流れを受けて、多様性を柔軟に受け入れて組織を強化するダイバーシティ・マネジメントが注目を集めるようになりました。
ただし、このダイバーシティ・マネジメントを実現するには、ダイバーシティの正しい知識を働く人たちが身につけなければいけません。そこで重要になるのがダイバーシティ研修なのです。
ダイバーシティ推進の取り組みがもたらす5つの効果
ダイバーシティを推進することによって、企業にとってはさまざまな効果が期待できます。その効果の主要なものをご紹介しましょう。
- 女性やシニアが働きやすい環境を整備できる
- マネジメント層の意識改革を行える
- 働き方の多様化に対応できる
- 企業のグローバル化に適応できる
- 企業イメージが向上する
1.女性やシニアが働きやすい環境を整備できる
ダイバーシティ推進により、女性やシニアが活躍する環境を整備できます。特に女性は、結婚や出産など人生のターニングポイントにおいて、職場の環境や労働条件によっては、このまま働き続けるかどうかの決断を迫られることも多いものです。
ダイバーシティ研修を実施するなどで、働く人の多様性に関する理解を深めることができれば、優秀な女性社員が出産や育児で離職することを防げますし、育児に積極的に取り組む男性に対するハラスメントを防ぎ、誰もが働きやすい職場風土をつくることができます。
また、シニアに関しても、多様性への理解を深めることで、柔軟な働き方を認め、大きな戦力として期待できるようになります。
2.マネジメント層の意識改革を行える
ダイバーシティを推進することで、マネジメント層の意識改革を行うことができます。マネジメント層が多様性について正しい知識を身につけていないと、ダイバーシティの考え方は従業員にも浸透しません。
また、従業員への正しい評価ができないことにもなるため、従業員から不満が出て離職させてしまうリスクもあります。マネジメント層の意識改革を行えるのは、ダイバーシティ推進がもたらす大きな効果です。
3.働き方の多様化に対応できる
ダイバーシティの推進により、働き方の多様化にも対応できます。ライフスタイルや価値観は働く人によって異なります。職場全体が、その多様性を受け入れ、状況に応じて柔軟にワークスタイルを変えていける環境を整えなければいけません。
例えばフレックスタイム制やテレワークを導入したり、育児休暇や介護休暇の取得を推進したりする企業も多くあります。制度だけでなく、ダイバーシティ研修や教育の推進によって、働き方の多様性を理解する組織風土ができれば、従業員は自分のライフスタイルに合わせた働き方を選択できるでしょう。
4.企業のグローバル化に適応できる
近年は、事業の拡大を目指して海外市場に目を向ける企業も増えています。
グローバル化を進める企業では、外国人を採用するケースも増えています。日本人の従業員が外国人と一緒に働く機会が増えるため、多様な価値観や考え方を受け入れることが必要です。
ダイバーシティ研修や教育を進めることによって、従業員は多様な価値観や考え方を学べるため、企業のグローバル化にも適応できます。
5.企業イメージが向上する
会社をあげてダイバーシティ推進に取り組むことで、世間から評価される可能性があります。その結果、企業のイメージアップを図ることができれば、優秀な人材を確保することにつながるでしょう。
ダイバーシティ研修の主な種類は?
ダイバーシティ研修の効果を得るには、対象者にあわせた適切なカリキュラムを選ぶことが大切です。ダイバーシティ研修の種類には、次のようなものがあります。
- 女性活躍推進研修
- 外国人活躍推進研修
- シニア活躍推進研修
- 障がい者活躍推進研修
例えば、女性活躍推進研修の対象者は、管理職や人事担当者、管理職を目指す女性従業員です。女性の活躍で企業を活性化させるには、どのような取り組みを行う必要があるのかを学びます。
外国人活躍推進研修は、外国人の上司である管理職が対象です。外国と日本では価値観や考え方が異なるため、どのように対応すればいいかを学びます。
シニア活躍推進研修には、シニアを対象にした活性化研修と、シニア社員をマネジメントする管理職向けの研修があります。
障がい者活躍推進研修では、障がい者に対する正しい知識を身につけたり、適切な対応方法を学んだりします。
ダイバーシティ研修における3つの実施ポイント
ダイバーシティ研修は、実施したから即効果が得られる、というわけではありません。ダイバーシティ研修を実施する際は、次のようなポイントに注意しましょう。
- 意見を出し合う時間を設ける
- まずは管理職の理解を深める
- 目的を明確にして研修内容を決める
これらのポイントを踏まえて実施できれば、研修後に得られる効果も変わります。それぞれのポイントを解説していきましょう。
1.受講者が意見を出し合う時間を設ける
研修担当者が一方的に話すだけの研修では、受講者はさまざまな価値観や考えに触れる機会を得られません。そのためダイバーシティ研修では、受講者が意見を出し合える時間を設けましょう。
例えば、ケーススタディで、複数の状況を設定し、どのように対応するべきかを話し合うのもおすすめです。他人の考え方に触れることで、自分とは異なる価値観や考え方があることを理解できるでしょう。
2.まずは管理職の理解を深める
職場におけるダイバーシティ推進で、中心的な役割を果たすのは管理職です。ダイバーシティ研修を実施するときは、まず管理職を対象にした研修から始めるのがいいでしょう。そして、管理職を中心にして、職場でダイバーシティを推進するうえでの具体的な取り組みを決めることが大切です。
また、管理職向けの研修では、コミュニケーションスキルの修得を盛り込むといいでしょう。従業員の多様な価値観や考え方を理解するために、コミュニケーションの重要性を伝えたいものです。
3.目的を明確にして研修内容を決める
ダイバーシティ研修の内容を決めるときには、目的を明確にするといいでしょう。
例えば、女性がより働きやすい職場環境を整えたいのならば、直接の上司となる管理職を対象とした女性活躍推進研修を実施して理解を深めることが大切です。目的を具体化することで、問題解決につながるダイバーシティ研修を実施できるでしょう。
まとめ
働く人の多様性を理解し、それぞれの知識、経験、能力を最大限に活かして企業競争力を高めるためには、ダイバーシティ研修を実施することが有効です。ダイバーシティの推進によって従業員の働きやすい環境が整います。優秀な従業員の離職防止や、新たな人材確保にもメリットがあります。職場の課題や目的に応じたダイバーシティ研修を実施しましょう。