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企業は何のために存在するのか?

2023年12月26日更新

企業は何のために存在するのか?

企業の不祥事は、産業界のみならず地域社会にも大きな影響を及ぼします。なぜ不祥事が絶えないのか、どうすれば不祥事を防止できるのか、本稿では、その本質を考察いたします。

INDEX

絶えない企業の不祥事

2023年も、企業による不祥事が多発しました。保険金不正請求問題等で厳しい批判を浴びた中古車販売業B社、同社との不適切な取引を続けていたことでガバナンス体制の不備を指摘された損害保険業S社。さらに、認証試験をめぐる不正行為によって全車両の出荷停止に追い込まれた自動車製造業D社。
いずれも歴史が長く、その業界のリーダー的存在であった企業が犯した不正が、社会に及ぼすマイナスの影響は計り知れません。ようやく日本企業が復活の狼煙をあげ、日本の株式市場も活況を呈し、いよいよこれから攻めの経営に転じようという時期に立て続けに起こった不祥事。今後、グローバルな市場で、不祥事を起こしていない企業も含めた日本企業全体に対する視線が厳しくなり、各社の成長戦略に暗い影を落とすことにもなりかねません。

企業不祥事の温床

不祥事を起こす組織に共通しているのは、業績至上主義という絶対的な価値観をもった風土が確立しているということです。人々は厳しいノルマに追い立てられ、追いつめられた結果、手段を選ばず方式で不正に手を染めてしまうのです。不正に手を染めた人が非難されるべきはもちろんですが、それ以上に個人に不正をさせてしまう風土や、それを生み出し強化してきた歴代経営者の責任が大きいと言わざるを得ません。

企業の本来の目的

企業の本来の目的には次の3つの要素があります。

(1)存続

一度、事業を始めたら、その活動を途中でやめることは許されません。そして、活動を続けるためには活動資金が必要です。その原資になるのが利益なのです。

(2)貢献

企業の存続を決めるのは、社内外のステークホルダーです。そうした人たちから「存続してもいい」と認めてもらうためには、事業を通じて社会に貢献するという理念と実践が不可欠になります。

(3)変革

社会の変化が激しいので、何もしなければ貢献度合いは下がります。したがって、商品・サービスの質を高めたり、ラインナップを変えるなど、変革を続けないと貢献度合いを維持向上させることはできません。

このような、企業の本来の目的を見失うと、目先の業績や自分の利益になることのみに意識が向かってしまいます。その結果、「何のために仕事をするのか」「何が正しいのか」に対する判断力が鈍り、それが不祥事の温床になっていくのです。

参考記事:PHP人材開発「コンプライアンス研修の内容、ネタはどうする? 効果的な実施方法なども解説」

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松下幸之助の訓え

松下幸之助は、「企業の社会的責任」にこだわった経営者でした。そうした姿勢の根底にある、彼の人生観・事業観をご紹介しましょう。

眼前の小利
一匹狂えば千匹狂うというが、これは何も、馬だけにかぎったことではない。人間でも、一人がちょっとした心得ちがいをしたならば、それに引きずられてまた多くの人が道を誤る。ことに、それが私欲にかかわった問題となると、とかく人の判断は狂いやすい。そして眼前(がんぜん)の小利(しょうり)にとらわれる。
眼前の小利にとらわれるな、とは昔からのことわざであるが、小利にとらわれては、結局は損をする。その損も、単に自分だけで終わるのならまだ罪は軽いが、今日の世の中のように、人と人と、仕事と仕事とがたがいに密接につながっているときには、一人の損がみんなの損となり、その心得ちがいは大へんな結果を生む。
こんなことは、いまさら事新しくいう必要もないのだが、この世の中、やっぱり一部の人のちょっとした心得ちがいからいろいろの問題が引き起こされていることを思えば、眼前の小利にとらわれるなと、何度も何度もくりかえしていいたくもなってくる。 別にむつかしいことをいうつもりはない。またいっても詮(せん)ないことだと考えてもいない。こんなことは結局、人の良識に訴えるのが根本で、だから何度も何度もあきずにいいたいのである。

引用元:松下幸之助著『道をひらく』(PHP研究所)

参考記事:PHP人材開発「企業の存在意義、経営の目的とは何か~松下幸之助に学ぶ」

不祥事の起きない組織へ

一度の不祥事が、企業イメージ・ブランドを著しく棄損し、場合によっては企業活動の存続を困難にすることさえ起こりえます。
そうならないよう、コンプライアンス教育の徹底や、現場レベルでの企業価値観(パーパス、ミッション、クレド、等)の浸透の取り組みが以前にも増して重要になってきました。幸之助のことばにもあるように、大事なことを何度も何度も伝え続けるのです。
ただ、「魚は頭から腐る」ということわざの通り、企業の健全性は経営陣のあり方にかかっています。したがって、上記の取り組みをする際、必ず経営陣も巻き込んで受講対象・実践対象に加え、全従業員とともに学び実践するという姿勢を示すことが、不祥事の起きない組織づくりの成功ポイントです。
「企業は何のために存在するのか?」
この本質的な問いに向き合うことがすべてのビジネスパーソン、特に経営を担うトップリーダーの方々に今、強く問われているのではないでしょうか。

参考記事:PHP人材開発「コンプライアンスの徹底した組織風土づくり」

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部兼人材開発普及部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年、PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年、神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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