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なぜ社員教育体系が必要なのか~その意義と目的

2017年10月18日更新

なぜ社員教育体系が必要なのか~その意義と目的

社員教育体系を構築する意義はどこにあるのでしょうか。教育担当者としては、社員教育体系を構築する意義をしっかり押さえておく必要があります。

社員教育体系を構築する意義とは

個別の研修をただ集めただけでは、教育体系とは言えない。個別の研修がそれぞれの目的で、バラバラに実施されていては、効果性が薄れてしまうどころか、経費の無駄遣いになってしまう。ましてや、予算が取れるときだけ行うとか、余裕があるときだけに実施するものでもない。教育体系があることにより、人材育成に力を入れているというメッセージを社員に伝えることにもなる。また、成長ストーリーを見せることによって、「この企業で自分はこのように成長できる」と感じさせることで社員のモチベーションにもつながる。そういう意味でも教育体系をつくる意義は十分にある。

ところが、どこから何から手をつけてよいか分からないという声をよく耳にする。どの点に力を入れて社員教育すべきかは、経営環境や企業の置かれている状況、抱えている課題などによって変わってくる。社員教育が効果を出すためには、目的を明確にして戦略的に教育体系を構築することが必要だ。そのためには、教育担当者は中長期的視点に立って、経営者や現場の上司に教育の重要性を語り続け、教育ニーズを収集しながら、自社に最適な教育体系を構築しなければならない。まず、教育担当者として、教育体系を構築する意義をしっかり押さえておく必要がある。

【教育体系を構築する意義】

(1)会社が期待する組織と人材をつくる
(2)社員の能力開発を会社の業績向上につなげる
(3)教育体系がOJTと自己啓発を後押しして、人材育成を促進する
(4)会社の人材競争力が増し、人的資本が充実することで、企業価値が高まる
(5)人材育成の風土が定着する

社員教育体系を構築する5つの視点

また、教育体系を構築するためには、次の5つの視点をもっておく必要がある。

【教育体系構築 5つの視点】

(1)わが社はどのような人材を育成したいのか?(求める人材像)
(2)どのような考え方・仕組みで人材を育成するのか?(教育方針)
(3)経営戦略や人事制度やそのほかの管理制度とどう連携させるのか?
(4)どのような研修テーマをそろえ、どのようなカリキュラムで研修するのか?
(5)研修後、上司と教育担当者がどのようにフォローアップするのか?

教育体系を構築するためのポイント

さらに、教育体系を構築するに当たって押さえておくべきポイントを確認する。教育体系を構築するときに次ページの10の要件を満たしていないと、教育体系が機能しないので、十分にこれら10のポイントを意識してほしい。

【教育体系を構築する10の要件】

(1)企業理念・ビジョン、経営戦略を経営者から十分にヒアリングする
(2)求める人材像に基づいて習得すべき知識・スキル・態度や開発すべき能力を明確にする
(3)階層別・職種別に求める知識・スキル・態度・能力を体系化する
(4)職種ごと、各階層別に上司と社員の教育ニーズ・課題を事前に把握した上で設計する
(5)長期的なニーズと短期的なニーズの両面から設計する
(6)社員が必要と考える能力開発の機会として、自己啓発を促進する仕組みを導入する
(7)社員のキャリア形成を踏まえた計画的な人材育成が行えるものとする
(8)社員の主体性と自律性を促し、やる気と可能性を引き出すことで、自己成長を促す環境をつくる
(9)社員一人ひとりの人材育成カルテに落とし込む
(10)教育体系は現場OJTと人材育成会議・育成面接を線でつなげる

社員教育体系を構築すると得られる効果

社員教育体系を構築することで次のような効果がある。

(1)教育方針が明確になる
「人材育成」に対する会社の取り組み姿勢や社員教育に対する経営者の考え方を方針として伝えることができる。

(2)求める人材像を社員に周知できる
階層ごとに職掌や責任・権限などを定義し、求める役割機能・能力要件が明確になる。

(3)各種研修が整理・体系化され、実施の優先順位と時期が決まる
毎年コロコロ変えるのではなく、継続的に社員教育を線でつないでストーリー化することで、社員のモデル成長パターンが分かる。

(4)研修を実施することで人材育成サイクル(PDCA)がまわる
階層別ごとの求める人材像に必要な能力要件を抽出し、対応する研修プログラムなどの具体策が計画・実施され、効果検証のサイクルがまわる。

(5)現場に必要な知識やスキルを必要なときのために準備できる
あわてて詰め込みで研修するのではなく、現場で必要なことを計画的、体系的に学ぶことができる。

人材育成のPDCAサイクル

出典:『[実践]社員教育推進マニュアル』(2009年1月・PHP研究所発行)

PHP公開セミナー

茅切伸明(かやきり・のぶあき)
株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。 著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会)

松下直子(まつした・なおこ)
株式会社オフィスあん 代表取締役。社会保険労務士、人事コンサルタント。 神戸大学卒業後、江崎グリコ(株)に入社。新規開拓の営業職、報道担当の広報職、人事労務職を歴任。現在は、社会保険労務士、人事コンサルタントとして顧問先の指導にあたる一方、民間企業や自治体からの研修・セミナー依頼に応え、全国各地を愛車のバイクで巡回する。「人事屋」であることを生涯のライフワークと決意し、経営者や人事担当者の支援に意欲的に向き合うかたわら、人事部門の交流の場「庵(いおり)」の定期開催や、新人社会保険労務士の独立を支援するシェアオフィス「AZ合同事務所」の経営など、幅広く人材育成に携わっている。著書に、『実践社員教育推進マニュアル』『人事・総務マネジメント法律必携』(ともにPHP研究所)、『採用・面接で[採ってはいけない人]の見きわめ方』『部下育成にもっと自信がつく本』(ともに同文舘出版)ほか。

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