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成果に直結する組織風土改革の進め方とは? 成功事例も解説

2022年11月16日更新

成果に直結する組織風土改革の進め方とは? 成功事例も解説

組織風土改革とは、組織を構成するメンバーの価値観や考え方、ルール、暗黙の規範、習慣などの見直しに取り組むことです。組織風土が企業に与える影響は大きく、いま理想的な状態でないのであれば見直しが必要です。今回は組織風土の定義や4つの分類、組織風土改革の成功事例をご紹介し、成功のポイントを解説します。

INDEX

組織風土とは

働き方改革やリモートワークの浸透を機に、 組織のあり方について再検討している企業も多いかと思います。厳しい経営環境のもとで事業を成長させるためには、社員がやる気と主体性をもって活動し、各自の個性と能力が存分に発揮され、それがある方向に向かって結集され、前進し続けている強い現場をつくる取り組みが欠かせません。そのためには、組織風土の改革が必要です。

組織風土改革について考える前提として、そもそも組織風土とは何か確認しておきましょう。
組織風土とは、組織を構成するメンバーの価値観や考え方、共通認識となっているルール、暗黙の規範、習慣などのことです。組織風土が企業に与える影響は大きく、その成長を左右します。
組織風土は、企業によって大きな違いがあります。例えば、急成長を遂げるベンチャー企業と、安定を志向する大企業では、組織風土も大きく異なります。
ベンチャー企業は、スピード感を重視し、失敗を恐れず新しいことにチャレンジするという組織風土をもつことが多いという特徴があります。これに対し大企業は、成長だけでなく組織の安定を重視し、厳格な判断基準のもとに動きます。意思決定も関係者が会議を重ね、時間をかけて慎重に行う傾向にあります。

では、組織風土はどのように形成されるのか、影響を与える要素についてみていきましょう。

組織風土に影響を与える要素

組織風土に影響を与える要素は、制度や戦略、規則など目に見えるハードの部分と、人間関係や価値観、経営スタイルなど、可視化が難しいソフトの部分があります。
ハードの例として、企業理念や人事制度、就業規則などがあげられます。これらは、組織風土に大きな影響を及ぼしますが、明文化されているものであるため、経営陣が主体となって変えることができます。
一方、ソフトにあたるのは、社員のモチベーションや社内コミュニケーション、信頼関係、暗黙の規範、習慣、経営スタイルなどです。これらは明文化されていないうえ、社員一人ひとりの意識や行動から変えていかなければならないため取り組みが難しく、また、明確に示す指標がないため変化の実感を得るのにも時間がかかります。

ソフトに当たる部分のなかでも、特に重要なのが、社員の心理状態にかかわる「メンタル要素」です。
例えば以下のような内容がメンタル要素にあたります。

●発言や行動に際し、上司への気遣いが必要か
●新しい挑戦がしやすい組織か
●失敗をしたときにサポートがあるか

メンタル面は、社員の感情が関わり、職場や部署ごとに異なる場合も多い要素です。経営層からは把握しにくい部分もあり、変革には時間がかかります。
組織風土にソフト部分やメンタル要素の占める割合は大きく、可視化できないため、その変革には長期的な取り組みが必要です。改革するには、自社の組織風土がどのようなパターンで、どこに課題があるのかを知ることから始めなければなりません。

組織風土の4つの分類

組織風土は、大きく4つのパターンに分類されます。目指すべき理想的な組織風土の例が「ブリリアンス型」であり、今すぐ組織風土改革に取り組むべきパターンが「腐敗型」です。その中間に属するパターンもあります。
まずは自社の組織風土がどのパターンに属するか、チェックしてみてください。

1.ブリリアンス型|社内の雰囲気が良く、成果に直結しやすい

ブリリアンス型は、良好な組織風土を確立した理想のパターンです。社内コミュニケーションが活発で雰囲気が良く、社員一人ひとりが成長を志向し、高いモチベーションをもって業務に取り組んでいます。チームワークが高く、メンバーの活動が成果に結びつきやすいのが特徴です。
問題が発生しても協力しあって迅速に解決し、メンバーがお互いを信頼し合っているため、人間関係のストレスもほとんどありません。会社として人材育成に積極的に取り組んでいることが多く、離職率が低い傾向にあります。

2.仲良しクラブ型|社内の雰囲気が良いが、成果に直結しない

仲良しクラブ型は、ブリリアンス型と同じく社内の雰囲気は良いものの、それが成果には直結していないのが特徴です。
表面的にはコミュニケーションがとれて良好な人間関係にありますが、お互いに遠慮し合っているため、先輩から後輩へのアドバイスや問題点の指摘、相互のフィードバックがあまり行われず、社員の成長が鈍化したぬるま湯状態にあるといえるでしょう。組織としてのチェック機能が働かないため、大きなトラブルが発生するリスクもあります。

3.ギスギス型|成果への意識は高いが、社内の雰囲気が悪い

成果への意識は高いものの、社員同士の関係はギスギスして、社内の雰囲気が良くないパターンです。成果主義を採用する企業にありがちな組織風土で、自己の成果を重視するあまり社員同士の協力が行われません。
ミスや困りごとが起きても周りのメンバーに相談できる雰囲気はなく、トラブルが発生したときに迅速な対応ができない可能性があります。チームワークが必要になる業務で意思決定が遅くなり、うまく進められないこともあるでしょう。
社員はストレスや疎外感を抱えることも多くなり、離職率も高くなりがちです。

4.腐敗型|社内の雰囲気が悪く、成果への意識も低い

社内コミュニケーションがなく、職場の雰囲気が悪い状態です。社員は成果に対する意欲が低く、チームワークを発揮することもありません。お互いに無関心で、チェック機能が働かないため内部不正も起こりやすくなります。
離職率も高く、経営陣がまず意識を変えて組織風土の改革を検討することが急務といえるでしょう。

参考記事:「心理的安全性」とは?「ぬるま湯組織」が若手社員の成長を阻む

「良い組織風土」とはどういうことか

良い組織風土とは、ブリリアンス型のパターンです。良い組織風土のある企業は、共通した目標の実現に向けて社員一人ひとりが行動するための環境やルールが整っています。また、以下のような特徴があります。

●経営者が使命(組織のミッション)を明確に掲げ、社内に浸透する取り組みが行われている
●現場の声がトップや経営層に伝わり、経営に反映されている
●社員同士の意思疎通がスムーズに行われている
●組織の目標達成に向けた行動規範を、社員一人ひとりが理解している

先に述べた組織風土に影響する要素のうちハード面においては、社員に企業理念が浸透し、企業と社員の方向性が一致している状態です。それにより「会社に貢献したい」というエンゲージメントや仕事へのモチベーションも高くなります。
ソフト面における良い組織風土の特徴は、社内コミュニケーションが活発ということです。風通しの良い職場であり、社員同士がサポートし合ってスムーズに業務が進行することから生産性が高く、業績も伸長が見込める状態です。
また、メンタル要素においても、良い組織風土が構築されていると、従業員満足度が高く、社員の離職という問題を抱えることも少ないでしょう。

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組織風土改革が必要不可欠な企業の特徴

組織風土の要素である4つのパターンのうち、「仲良しクラブ型」「ギスギス型」「腐敗型」に属する組織風土の企業は何らかの改革が必要です。これらのパターンに共通する点として、社内コミュニケーションが活発でないことがあげられます。

「仲良しクラブ型」は一見コミュニケーションが活発のように見えるものの、表面的なものです。お互いに率直な指摘を行わないため、成長につながりにくいという問題があります。
また、表面的にもコミュニケーションに欠ける「ギスギス型」や「腐敗型」はチームワークを発揮できず、従業員エンゲージメントも低い状態です。社員のモチベーションも低く、生産性も上がりません。離職率が高く、社員が定着しない状態になりがちでしょう。
このような組織風土の場合は、できるだけ早く改革に着手する必要があります。

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企業の組織風土改革の成功事例

組織風土が企業の業績に大きく影響することから、組織のあり方についての再検討や課題解決に取り組む企業が増えています。長い時間をかけて根付いた組織の価値観や明文化されていない行動規範を変革するのは容易ではなく、経営トップの方針によって企業全体で取り組む必要があります。
ここでは、組織風土改革に成功した企業の成功事例を紹介します。

事例1.労働組合や若手社員を巻き込んだ「キリンビール株式会社」

キリンビール株式会社は1907年の創業以来、ビール業界トップの地位を守ってきました。しかし2001年、これまで不動だった市場1位の座を明け渡すことになります。これが改革の契機となり、当時の社長・荒蒔康一郎氏が「新キリン宣言」という新たな行動指針を発表しました。
原点である「お客様本位」と「品質本位」の観点に立ち返り、組織を総点検してキリンの再生に取り組んだのです。2004年には「V10推進プロジェクト」と銘打つ組織風土改革に着手し、キリンにとっての「お客様本位」「品質本位」とは何かについての議論を部門横断で実施しました。その結果、2009年には9年ぶりにビール類(発泡酒・第三のビールを含む)出荷量の国内市場シェア1位を奪還しています。

さらに、キリンビールの組織風土改革は続きます。2015年に社長に就任した布施孝之氏は、社員との対話集会を繰り返し、問題意識のある若手社員や労働組合をも巻き込んだディスカッションを重ねてきました。
そこでは「真にお客様のことをいちばんに考える組織風土に」というメッセージや、「判断基準はお客様に」を徹底することを繰り返し伝えています。全国11の営業拠点と9のビール工場すべてを回り、若手社員を対象に「布施塾」を開講するなどトップ自ら発信を続けたという経緯があります。その結果として社員の意識は着実に変わり、組織風土改革に成功しました。

参照元:キリンホールディングス

事例2.新しい経営陣が変革を起こした「オリンパス株式会社」

光学機器・電子機器メーカーのオリンパス株式会社では2011年に粉飾決算が明るみになり、株価の急落や経営陣の辞任という事態に発展しました。混乱の中で同社は2012年「原点回帰」、「One Olympus (ワン・オリンパス)」、「利益ある成長」という経営方針を掲げ新体制を発足させます。企業調査によって現場の活力が下がっていることがわかると、その原因が組織風土にあると判断して改革に乗り出しました。
改革のプロセスでは経営トップによる対話集会の開催や部門間の交流、全社イベントの開催などを積極的に行い、社内の一体感を熟成する取り組みを行っています。
社員とともに取り組んだ結果、改革はスムーズに進み、100周年を迎えた2019年には「Transform Olympus」という企業変革プランを発表しました。そのなかには、経営陣と従業員の距離を縮めるため、年4回発行する社内報「OLYMPUS FORUM」のリニューアルに取り組むということも書かれています。

参照元:オリンパス株式会社|企業変革プラン「Transform Olympus」について

組織風土改革の進め方 5つのステップ

組織風土改革の進め方5つのステップ

組織風土改革を進めるには、手順を踏むことが大切です。ステップは、主に以下のような流れになります。

1.組織風土の現状を把握する
2.組織の問題点を可視化する
3.行動指針・行動計画を策定する
4.組織風土改革の必要性を社員に伝える
5.組織風土をアップデートしていく

1.組織風土の現状を把握する

組織風土変革に取り組む前提として、 どのような組織を目指すのかゴールを明確にしましょう。組織があるべき姿を定め、目標を構築します。
さらに、目標に対して現在の組織風土はどのような状態にあるのか理解が必要です。現状を理解するには、社員との対話やアンケート調査で、会社に対する考えや感じていることを確認するという方法があります。
社内で実施することもできますが、自由に率直な意見を集めるには外部に依頼するという方法もあります。

2.組織の問題点を可視化する

組織風土の現状が理解できたら、目標を達成するために変えなければならない点を抽出します。企業の成長を阻む問題は何かを可視化するとともに、どのような要素に置き換えれば組織風土改革を実現できるかを検討しましょう。

3.行動指針・行動計画を策定する

問題となる要素を特定したら、あるべき姿の実現に向けてどのように行動すべきかを明確にした基本方針を策定します。新しく根付かせたい組織風土をパワーワードにまとめてみるのもいいでしょう。
行動指針が策定できたら、次に行動計画を決めていきます。具体的な行動計画は、目標や課題に応じてさまざまなシナリオが考えられます。アプローチは企業ごとに異なりますが、 基本的にハード面とソフト面へのアプローチをバランスよく組み込むとよいでしょう。

行動計画は、具体的には次のような内容になります。

・経営理念の浸透や共有化
・新しい行動基準の構築
・ビジネスモデルを転換する戦略の立案
・人事制度・マネジメントシステムの再構築
・部門間・社員間の関係性強化

4.組織風土改革の必要性を社員に伝える

組織風土は、社員一人ひとりの意識や行動で形成されます。その意識・行動を変えるには、改革の必要性について、社員の納得を得ることが必要です。組織風土は事業所ごとに違ってくる場合がありますから、拠点ごとに定期的に経営トップから説明する機会を設けるなどで組織のあるべき姿を繰り返し伝え、浸透させていく取り組みが必要になるでしょう。

5.組織風土をアップデートしていく

組織風土改革には時間がかかります。特にソフト面では社員の意識と行動を変えていかなければならず、スムーズに進むとは限りません。新しい組織風土を獲得するプロセスは、ときに社員に大きな負担を強いる場合もあり、現場の反発が起きやすくなります。ほかにも揺り戻しや業績への影響など、多くの阻害要因が発生する可能性があるでしょう。
しかし、それらによって中断するのではなく、改革を進める過程で得られる経験や実践知を糧に、賛同する社員を増やしながら組織風土をアップデートしていくことで、改革はおのずと進んでいきます。

組織風土変革プログラム「5つの原則」はこちら

組織風土改革を成功させる4つのポイント

組織風土改革を成功させるため、押さえるべきポイントがいくつかあります。ポイントを4つご紹介します。

1.リサーチを十分に行い現状を正確に把握する

組織風土改革を成功させるには、十分なリサーチが欠かせません。組織風土に影響を与える要素は3つありますが、そのうちソフトやメンタルの側面は組織風土を形成する要素の中で多くの比重を占めています。それらは可視化できないために把握しづらく、リサーチで問題点として抽出するのは容易ではありません。
問題点の抽出が不十分であると改革自体の推進が難しくなるため、時間をかけてしっかりリサーチを行い、できる限り多くの要素を把握するようにしましょう。

リサーチの方法として、事業所単位などで社員に集まってもらい、改革責任者とディスカッションを行う方法が有効です。自由に意見やアイデアを出し合うブレインストーミングもいいでしょう。出された意見を上位者が批判することなく、自由に発言できる場を設定すれば、社員が感じている問題点を把握することができます。

2.「思想・型・形」で捉えて現状を整理する

組織風土の現状を把握するには、次のような「思想」「型」「形」で整理することもできます。

●思想:組織の価値観や考え方
●型:日々の判断基準や行動原理
●形:実際に職場で行われている会話や行動

それぞれの内容における現状を把握したら、未来に向けてどのように変えるべきかを考えます。「思想」すなわち組織の価値観や考え方はすべての根底にあるもので、「型」や「形」を変えるにはまず「思想」へのアプローチが大切です。社員に新しい組織の価値観や考え方を浸透させることで、それが日々の判断基準や行動原理に反映され、会話や行動を変えていきます。

3.経営トップが先頭に立って取り組む

組織風土改革を成功させるには、経営トップが先頭に立って取り組む覚悟が必要です。企業のトップが本気で取り組まなければ、社員の納得を得ることはできません。
行動指針が風土として根づくまでには長い時間がかかり、トップが全力を注ぐという前提でも5年から10年はかかるとされています。すぐに成果が表れないからといって方針転換するのではなく、中長期の計画をもって取り組む必要があるでしょう。

4.改革の目的・意義を繰り返し伝えて社員に浸透させる

組織風土改革は、改革の目的や意義を繰り返し伝えて社員の納得と理解を得なければなりません。その際はトップダウンのみで進行させるのではなく、現場の意見をくみ上げるボトムアップの手法を取り入れることが大切です。
まず、経営層から社員に現在企業が抱えている問題を伝えましょう。それを解決するには組織風土の改革が必要であることを理解してもらわなければなりません。改革には社員の協力が必要であること、負担をかけることもあるが、それでもやり遂げなければならないことを社員に理解してもらうことが大切です。
ここで注意したいのは、強制的な改革にならないことです。社員に上からの押し付けと感じさせる改革は、一見成功したように見えても定着しません。社員が納得して改革へのメリットを感じ、主体的に行動するようにしていきましょう。

まとめ:組織風土改革はトップが先頭に立って中長期的計画で取り組む

社内の雰囲気が悪い、チームワークがとれず成果が上がらないといった課題がある企業は、自社の組織風土を把握することから始めてみましょう。現在の問題点が明確になったら、改革を検討してみてください。
組織風土改革はトップが先頭に立って取り組むことが不可欠であり、社員に目的や意義を伝えて納得・理解を得ることも大切です。中長期的な計画で、組織風土改革を実現させましょう。

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