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ゴールイメージと「段取り力」~京セラ・稲盛和夫氏のエピソードに学ぶ

2018年8月22日更新

ゴールイメージと「段取り力」~京セラ・稲盛和夫氏のエピソードに学ぶ

段取りの最初のステップは、仕事の完成形、つまりゴールをしっかりとイメージさせることです。ここで、ゴールをイメージすることの大切さを教えてくれる、京セラ名誉会長・稲盛和夫氏のエピソードをご紹介しましょう。

若手社員の育成は、企業にとって喫緊の課題

転職市場が活性化し、労働力の流動化は進むいっぽうです。少子高齢化による人手不足が企業の成長の足枷となっているともいわれます。今後、企業が競争力を維持・強化していくためには、人材の質的水準をこれまで以上に向上させていくことが不可欠です。特に、将来を担う若手社員の育成は、企業にとって喫緊の課題といえるでしょう。
ところが、人事教育を担当する方や現場の上司からは、「今どきの若手はどうも物足りない」「意思伝達が難しい」「どこまでも指示待ちで自ら動かない」といった声が聞かれます。一日も早く戦力になってほしいのに、思うように育ってくれない若手社員。彼らを育成する方法はあるのでしょうか?

「段取り」を教えて、小さな成功体験を積ませる

若手社員の育成において、大切にしてほしいのが、小さな成功体験を積ませることです。成功体験を積むことで、「組織の役に立っている」「成長できている」と実感できれば、それが突破口になり、彼らは少しずつ主体性をもって仕事に取り組むことができるようになります。
そこで、彼らにまず身につけてほしいことの一つに「仕事の段取り力」があります。段取りとは、「行動をする前に、効率的に仕事を進めるにはどうしたらいいかを考える」ことです。つまり「仕事の先読み」をし、「この仕事を完成させるためには、どういう準備が必要なのか」と事前に考えることです。「段取り八分、仕事二分」という言葉がありますが、これは、時間をかけて事前の段取りをしっかりと行なっていれば、仕上げは残りの二分の力でできるという意味です。この「段取り」ができるかいなかで仕事のスピードや成果に大きな違いが生まれるのです。
もちろん、仕事には失敗がつきものです。どれだけ慎重に進めても、予期せぬトラブルで失敗してしまうことがあります。若手社員であれば、なおさらのことです。しかし、その失敗の可能性を低くするために重要なのが「段取り」なのです。仕事の完成形から逆算し、必要なことを必要な時に行なう方法を身につけることができたら、彼らの仕事の精度はグンと上がるはずです。

京セラの創業者・稲盛和夫氏の目標設定

段取りの最初のステップは、若手社員に1つひとつの仕事についての完成形、つまりゴールをしっかりとイメージさせることです。
ここで、ゴールをイメージすることの大切さを教えてくれるエピソードを紹介しましょう。
京セラの創業者・稲盛和夫さんは、京セラを日本を代表する大企業に育て上げたことで知られています。稲盛さんは、創業当時から「世界一の企業になろう」という目標を設定していました。その目標があったからこそ、「世界一になるためには何をしなければならないか」と考えることができ、迷うことなく前に進むことができたといいます。
もし、稲盛さんが経営者としての明確な目標を持たずに何となく経営を行なっていたとしたら、京セラは今日のような日本を代表する企業に成長することはできなかったでしょう。
稲盛さんは、創業当時、若い社員たちの前で次のような話をしていたといいます。

「京都市中京区西ノ京原町で創業したのだから、まずは西ノ京原町で一番になろう。そうしたら次は中京区で一番だ。そこまでいったら、今度は京都で一番になろう。いやその前に、建物を貸してもらっている宮本電機よりも大きくなろう」。

稲盛さんは、心の中では「世界一になりたい」と思っていました。しかし、できたばかりの小さな会社がいきなり「日本一」「世界一」という大きな目標を掲げても、社員はピンとこないだけでなく、「どうせ無理だ」とやる気を失ってしまいます。
そこで稲盛さんは、目標を身近なところに設定し、一歩一歩確実に進んでいこうとしました。つまり、一つの目標を達成したら、次はもう少し大きな目標というようにイメージしやすい目標を設定し、社員が進むべき道を見失わないように導きながら、日本一、そして世界一への階段を上って行ったのです。

大きなゴールに到達するための小さなゴール

仕事には、1日でできるものもあれば、1週間、1か月かかるものもあります。若手社員にとっては、大きな仕事であればあるほど、ゴールまでの道のりが遠く険しいものに感じられるでしょう。そのような仕事を目の前にしたら、「ゴールはわかったけど、自分にはできない」とあきらめてしまう人がでてくるかもしれません。
そうならないためには、大きなゴールに到達するための小さなゴールを自ら設定してもらう必要があります。そうすると、「ゴールに到達するためにしなければならないこと」が明確になり、一歩一歩着実にゴールに向かっていくことができるはずです。

本来のゴールを見失ったことで失敗した事例

ここで注意しなければならないことは、小さなゴールにこだわるあまり、本来の大きなゴールを見失ってしまうということです。
若手社員がお客様と商談するというケースで考えてみましょう。お客様と商談をするという大きなゴールを達成するためには、商談用の資料を用意する、資料をもとにセールストークの練習をする、という小さなゴールへの到達が必要です。
ところが、その若手社員は、その資料を完璧に仕上げることに力を注ぎ過ぎてしまった結果、気がつけば商談の前日になってしまい、もうひとつのセールストークの練習をするという小さなゴールに到達できなかったのです。
このケースで問題となるのは、資料づくりが、いつの間にか大きなゴールにすり替わってしまっていることです。上司の方は「ゴールはどこか」「ゴールは何か」を常に意識させ、そこから逸れることなく逆算して考えるよう指導する必要があります。

若手社員の成長には周りの支援が欠かせない

この事例のように、若手社員は、失敗したり、試行錯誤を繰り返したりしながら経験を積み、成長していきます。日々の企業間競争の中で、あるいは慢性的な人手不足の現場において、彼らの成長はいかにも遅々として物足りなさを感じることがあるかもしれません。しかし、彼らに仕事を通した成長のチャンスを与え、きめこまかく支援する日々の取り組みは、確実に彼らの成長のエンジンとなるのです。
御社の若手社員は「仕事の段取り力」が身についているでしょうか。ビジネスパーソンとしての基礎を築くこの時期に、求められるスキルが身についているかどうかを今一度確認し、彼らの成長を加速させていきたいものです。

※本記事はPHP通信ゼミナール『ダンドリ仕事術マスターコース』を抜粋・編集して制作しました。

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仕事には失敗がつきものです。どれだけ慎重に進めても、予期せぬトラブルなどで失敗してしまうことがあります。その失敗の可能性を低くするために重要なのが「段取り」です。仕事の完成形から逆算し、必要なことを必要な時に行なう方法を身につけることができたら、仕事の精度はグンと上がるはずです。

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【監修者紹介】桑原晃弥(くわばら・てるや)
1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者、不動産会社、採用コンサルタント会社を経て独立。人材採用で実績を積んだ後、トヨタ式の実践と普及で有名なカルマン株式会社の顧問として、『「トヨタ流」自分を伸ばす仕事術』(成美文庫)、『なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか』(PHP新書)、『トヨタが「現場」でずっとくり返してきた言葉』(PHPビジネス新書)などの制作を主導した。
『スティーブ・ジョブズ全発言』『ウォーレン・バフェット 成功の名語録』(PHPビジネス新書)など著書多数。

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