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潜在ニーズを掘り起こす「デザイン思考」のフレームワーク

2021年8月18日更新

潜在ニーズを掘り起こす「デザイン思考」のフレームワーク

「デザイン思考」には、ユーザーの潜在ニーズを掘り起こすためのフレームワークが用意されています。ユーザーを理解するための考え方や具体的な方法、事例とともに解説します。

INDEX

「エスノグラフィー」によるユーザー理解

ユーザーを理解し、真のニーズを掘り起こすために、「デザイン思考」においては「エスノグラフィー」という考え方が重視されています。「エスノグラフィー」とは「行動観察のための現地調査」という意味で、文化人類学や民俗学で用いられる用語です。ユーザーをきちんと理解するためには、ユーザーの行動を自分の目で直接見て観察する必要があるということです。
かつて、プリンターやコピー機などを兼ねた複合機を、優秀な研究者が使いにくそうにしている「現場を観察」し、機械のインターフェースの改良に結びついたことがありました。いわば「フィールド調査」がニーズに応える新製品の開発に役立ったのです。

「潜在ニーズ」はどこにあるのか

「デザイン思考」においては、すでに顕在しているニーズではなく、ユーザーが抱える「潜在ニーズ」の解決を目指します。潜在ニーズを見つけるための考え方として、「ジョハリの窓」というマトリックスが参考になるのでご紹介します。
「ジョハリの窓」は、1955年に心理学者のジョセフ・ルフト氏とハリー・インガム氏が提唱した「対人関係における気づきのグラフモデル」で、もともとはコミュニケーションにおける自己を分析するためのモデルです。
「デザイン思考」では、このジョハリの窓を応用してユーザーの理解を深めていきます。

【デザイン思考におけるジョハリの窓】

デザイン思考におけるジョハリの窓

上図をご覧ください。マトリックス左上の「開放の窓」は、ユーザーも自社および競合他社も「すでにわかっているニーズ」です。複数の会社が商品化している確率が高く、価格競争に巻き込まれる可能性があるといえます。
ここ以外の「盲点の窓」「秘密の窓」「未知の窓」に該当する潜在ニーズを、前述の「エスノグラフィーの精神」を大切にしてつかみとることが、ビジネスでの成功の鍵となるのです。

ターゲットユーザーに直接インタビューする

ユーザーを理解するためには、まず自社の製品・サービスのターゲットユーザーを定め、その人たちを含む幅広い層を対象にインタビューを行い、直接話をうかがうことから情報収集を始めます。さまざまな人から話を聞くことで、担当メンバーが知らなかった知識が得られたり、まったく新しい視点に気づかされたりすることがあります。
インタビューには、1人からじっくりと話を聞く「デプス・インタビュー」、5~8人の対象者に特定のテーマで議論していただく「フォーカス・グループ・インタビュー」などの方法があります。インタビュアーは、事前にインタビューのテーマに関連する種々の情報を集めて頭に入れ、「5W1H」に沿った質問項目を用意してからインタビューを行います。実際のインタビュー時には、用意した質問項目にこだわりすぎず、話の流れを優先し、最終的に聞きたい情報が得られれば問題ありません。インタビュー後、すぐに内容をまとめてメンバーと共有しましょう。

「ペルソナ」を設定し、真のニーズを探求

ペルソナの設定

ユーザーの真のニーズを導き出すうえで、「ペルソナ」という「仮想のユーザー像」を設定し、それをもとに検討する方法も有効です。ある商品の仮想ユーザーについて、「年齢・性別・所属団体・所属部署・現住所・家族構成・体格・性格・趣味・所属団体での役割・その人の人生の目標・好きなファッション・好きな食べ物・自家用車のタイプ」といった項目を設定します。さらにユーザーへの調査を繰り返し、ペルソナの内容をブラッシュアップしながら、潜在的なニーズの「理解」につなげていくのです。

直接的・間接的にユーザーを観察する

「潜在ニーズ」を発見するためには、インタビューやペルソナの想定に加えて、やはりユーザーの行動をじっくりと観察することが重要です。観察方法には、「直接観察法」と「間接観察法」があります。文字通り、「直接観察法」は調査対象者を現場で直接観察し、「間接観察法」はビデオ映像等から得られた情報をもとに調査対象者を観察します。

観察法から生まれたアイデア(事例)

例えば銀行のATMには「バックミラー」がついていることが多いと思います。これは、ATMを使っている人を直接観察した結果、「背後を気にする行動が多く見られた」ことで発見された「潜在ニーズ」でした。ユーザーのインタビューでは、誰もこのことを話していなかったそうですが、直接観察によって「無意識の行動」に気づくことができたのです。

1996年に発売された日立の「野菜忠臣蔵」という冷蔵庫は、文字通り「野菜室」を冷蔵庫の中央部に取り付けた製品です。それ以前は野菜室が最下部にあったのですが、膨大なビデオ映像から「冷蔵庫の開閉頻度」を集計したところ、(1)冷蔵室、(2)野菜室、(3)フリーザーの順で開閉されていました。そこで、よく使う野菜室を冷蔵室とフリーザーの間に移動させたところ、ヒット商品が生まれたというわけです。

インタビュー・観察で得た情報を「AIUEOフレームワーク」で分析

ユーザーのインタビューや観察によって得られた情報を整理する方法にはいくつかありますが、ここでは「AIUEO(あいうえお)フレームワーク」をご紹介します。下記の質問項目にさまざまな情報をあてはめて、メンバー間の議論の材料にしましょう。

A(Activities:行動)
・何が起きているのか?
・観察対象者は何をしているのか?
・観察対象者の仕事は何か?
・観察対象者が実現したいことは何か?

I(Interactions:相互作用)
・個々のシステムがどのように関係しているのか?
・インターフェース(ハードウエア同士、ソフトウエア同士、ユーザーと機械の関係性)はどうなっているのか?
・ユーザーは他の人とどのようなやりとりをしているか?
・オペレーションはうまくいっているか?

U(Users:顧客)
・ユーザーは誰なのか?
・ユーザーはどのような役割を果たしているのか?
・誰に影響を与えているのか?

E(Environments:環境)
・外観的にどのような場所なのか?
・何をするための場所なのか?

O(Objects:もの)
・どのようなもの・機械を使っているのか?
・誰がどのような環境でものや機械を使っているのか?

問題(ニーズ)の定義づけ

「デザイン思考」の次のステップは「視点の定義」です。このステップでは、問題の定義づけを行ない、どの問題を解決するのか決めていきます。このステップでは、インタビューや観察によって集まった種々の情報を、可能な限りシンプルにまとめていくことが重要です。

※参照「イノベーションをもたらす「デザイン思考」とは?」

「デザインのダブルダイヤモンド」にあてはめると、理解・観察は、できる限り幅広く発見しながら可能性のある課題を拡散する段階でした。それに対して問題(ニーズ)の定義は、収束の段階です。

まとめ方の例として、スタンフォードの文章をご覧ください。

「〇〇(ユーザー)」は、「△△(ニーズ)」を必要としている。
なぜなら「□□(驚きの洞察)」だからだ。

この「□□」の洞察の部分にあてはまるのが、前述の「ATMを使うとき、多くの人が背後を気にしていた」ことや、「冷蔵庫は冷蔵室の次に野菜室をよく使う」といった調査結果です。こうして判明した「潜在ニーズ」「真のニーズ」を、新商品の開発に生かしていくのです。

※本記事は、PHP通信ゼミナール『顧客視点からはじめる「デザイン思考」入門コース』のテキストを抜粋・編集して制作しました。

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森末祐二(もりすえ・ゆうじ)
フリーランスライター。昭和39年11月生まれ。大学卒業後、印刷会社に就職して営業職を経験。平成5年に編集プロダクションに移ってライティング・書籍編集の実績を積み、平成8年にライターとして独立。「編集創房・森末企画」を立ち上げる。以来、雑誌の記事作成、取材、書籍の原稿作成・編集協力を主に手がけ、多数の書籍制作に携わってきた。著書に『ホンカク読本~ライター直伝!超実践的文章講座~』がある。

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