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OJTとは? 人材育成における意味や目的、可能性を解説

2022年12月14日更新

OJTとは? 人材育成における意味や目的、可能性を解説

OJTは、On the Job Trainingの略で「職務の現場で実際の業務を通して行われる職業訓練」と定義されています。人材育成の手法は大きく分けてOJT、Off-JT、自己啓発の3つといわれますが、本稿では、昨今、重要性が増しているOJTの意味や目的、本質について、理論と実践から解説します。

INDEX

OJTの重要性が増している背景

今、日本の企業の現場では、OJTの重要性が増しているといわれます。その背景として、人材育成におけるさまざまな問題が指摘されています。
モチベーションの低下や、職場の一体感の欠如、優秀な人材の離職等々、顕在化・潜在化するさまざまな問題が山積しています。こうした問題を解決し、「人的資本経営」が力強く推進できる体制をつくるためには、どうすればいいのでしょうか。

ここ数年、労働環境の変化や「働き方改革」の推進によって、個人のワークスタイルの選択肢が広がりました。このようにダイバーシティが進展するということは、リテンション(人材の流出防止)やイノベーションの促進が期待される反面、組織に遠心力が働き、個人と組織がバラバラになるリスクもはらんでいます。

企業の現場で今、多発しているのは、上司-部下間のコミュニケーションの質と量が低下して人材育成機能が弱体化しているという事態です。経営の観点からは、「人的資本経営」の重要性が叫ばれていますが、現場の実態は人を活かすことができていない職場が多く、理想と現実の間には大きなギャップが存在しているのです。

※参考記事: OJT、Off-JT、自己啓発―人材育成の3大手法│PHP人材開発

OJT強化は企業の最優先課題

上記問題に対処するための「打ち手」として、もっとも効果が高いのがOJTの強化でしょう。なぜならば、「ロミンガーの法則」(※1)が主張しているように、「日々の仕事経験」と「他者からの薫陶」が人の成長に大きな影響を及ぼすからです。そして、この人材育成の原則は、現在の複雑な職場環境の中でも変わりません。
つまり、激変する環境の下、人材育成機能を強化するために最優先すべきは、日本企業が得意としてきたOJTを強化し直すことです。

※参考記事: OJT担当者(上司・先輩)向け「OJTチェックシート」~スキルや適性度がわかる│PHP人材開発

上司がOJTを正しく理解していない

しかし、OJTの担い手である現場の上司の方がたが、OJTの意義や理論的意味、具体的な実践方法を理解しているでしょうか。管理職研修等で受講者の発言に耳を傾けていると、OJTを正しく理解して実践している管理職が驚くほど少ないという印象を受けます。OJTの理解が不十分であれば、当然、その効果も限定的になってしまいます。したがって、現場の人材育成機能を強化する第一歩は、部下をもつ上司の方がたにOJTを正しく理解してもらうことです。

※1 米国の調査機関・ロミンガー社の調査によれば、経営幹部としてリーダーシップを発揮している人たちに「どのような出来事が役立ったか」について聞いたところ、"70%が経験、20%が薫陶、10%が研修"という結果が明らかになった。

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参考記事:D.コルブの提唱する「経験学習モデル」とは?│PHP人材開発

OJTを理解する【理論編】

OJTとは、「職務の現場で実際の業務を通して行われる職業訓練」と定義づけられています。そして、OJTのベースにある理論が、D.コルブが提唱する「経験学習モデル」(※2)です。この理論は、経験と内省(ないせい・振り返り)を通じて持論(じろん)が形成され、個人の成長が促進されるという因果関係を示したものです。
このサイクルを回していくためには、上司の支援(業務支援、内省支援、精神支援)が欠かせません(※3)。この支援が、まさしくOJTの機能なのです。

上司の支援

※2 出所: Kolb,D.A (1984) Experiential Learning:Experience as the Source of Learning and Development,Prentice Hall,Englewood Cliffs.をもとに一部加工
※3 参考:中原淳 (2017)『フィードバック入門』PHP研究所

OJTを理解する【実践編】

OJTの理論的背景を理解したうえで、次におさえておくべきは、具体的にどのようなことをすればいいかという実践知の習得です。
OJTの効果を上げるために、上司がなすべきことは以下の5つです。

  • 役割、期待を伝える
  • 果たすべき役割や、組織として、上司として期待していることを相手に理解させる。「伝わる」状態になるまで、何度も「伝える」ことが大切。
  • コミュニケーション量を増やす
  • 日々の声かけや、定期的な「1on1面談(※4)」などを頻繁に行う。「量質転化」ということばのとおり、量を増やせば副次的に質が向上する。
  • 受容する
  • 自分と異なる意見や考えであっても、まずは相手のことばを受け止め、承認すること。
  • 耳の痛いことも伝える
  • 誤った考え方や行動に対しては、即時フィードバックする。
  • 相手の可能性を信じる
  • 「相手が育つ」と信じて接すると本当に育つ(※5)

※4 上司と部下が1回15分程度の対話を月に1~2回のペースで継続していくこと
※5 教育心理学では「ピグマリオン効果」という

共に育つという発想

ここまで企業の現場の人材育成機能の強化について、OJTという文脈で述べてきましたが、OJTが果たす機能は上司⇒部下への一方通行ではありません。部下への支援を通じて、上司も人間的な幅を広げて成長することができるのです。
つまり、教育の本質は「共育」なのです。ぜひ、部下を預かる上司の方がたには、「共に育つ」という意識をもってOJTを実践していただきたいものです。

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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