OJT担当者(上司・先輩)向け「OJTチェックシート」~スキルや適性度がわかる
2023年2月21日更新
OJTを効果的に実施するためには、指導する上司・先輩社員のスキルアップが求められます。そのために役立つのがチェックシートです。本稿ではOJT担当者に求められる資質やスキルを確認できるチェックシートをご紹介し、OJTスキルを向上させるメリットについても解説します。
INDEX
参考記事:OJTとは? 人材育成における意味や目的、可能性を解説│PHP人材開発
OJTチェックシートで適性度を確認しよう
OJTは、主に新入社員や若手社員を対象に、上司や先輩から業務上の指導によって知識やスキルを身につけ、チームの戦力に育てることを目的に行います。
OJTで教育上の成果を上げるためには、指導する側の上司や先輩社員が、指導者としての心得を学び、指導スキルを高めておくことが大切です。そのために役立つのが「OJTチェックシート」です。
OJT担当者に求められる資質やスキルを確認するとともに、自社の教育計画策定にも役立てることができます。貴社の管理職や先輩社員が自らチェックするための雛形としてご活用ください。
OJTチェックシート
1.会社の理念・方針の理解
□1. 会社理念・方針を正しく理解している
□2. 会社理念・方針を自分の言葉で語ることができる
□3. 会社の歴史や課題について部下に説明できる
□4. 自社や担当部署のミッションや目標達成のイメージが明確である
□5. 自社や担当部署の行動方針・ルールを把握している
2.リーダーシップ
□1. 仕事に対する熱意・情熱は誰にも負けないと自負している
□2. いつも謙虚で自信に満ちた態度を心がけている
□3. 緊急の事態に直面しても、冷静さを失わずに対応できる
□4. 相手の立場を尊重して行動をしている
□5. 常に自分が手本となるよう心がけている
3.人材育成
□1. 人材育成やOJTの意義を理解している
□2. 計画に照らして評価し、改善を指示している
□3. 部下に対しやるべきこと・やってほしいこと5W1Hを使って伝えている
□4. 仕事を任せながらも任せっぱなしにはせず、進捗状況を随時報告させている
□5. 仕事の成果やプロセスの振り返りを行うよう促している
4.コミュニケーション
□1. 部下を承認することに努めている
□2. 部下の仕事に対する考え方や価値観を理解している
□3. 相手の話は最後まで傾聴するようにしている
□4. 必要に応じて、適切に叱ることができる
□5. 自身の中にある答えに気づかせる働きかけをしている
5.OJTの体制づくり
□1. OJT計画策定では、目標項目・達成水準・期限・方法を明確にしている
□2. 上長にOJTの状況を逐次報告している
□3. 部署・チームも巻き込み、多くの人が育成に携わる機会を設けている
□4. 次年度のOJT計画策定に向け、引継ぎができる準備を整えている
□5. PDCAサイクルによるOJTを実践している
OJTスキルを高めるには、OJTチェックシートの活用が有効
企業がOJTを行う目的は、新入社員や若手社員を効果的・効率的に育成して、一日も早くチームの戦力として活躍してもらうことです。
OJTチェックシートを活用することで、OJT担当者に必要な資質と現状の強み・弱みが可視化できます。OJTを進める上で解決すべき課題も明確になるため、効果的なOJTを実施する一助となるでしょう。
OJTを行う現場では「指導する担当者によってスキルにばらつきがある」「OJTに取り組む意識が統一されていない」などの問題を抱えていることが少なくありません。
チェックシートを活用することによって、OJTを担当する上司や先輩の資質やスキルを確認し、事前にスキルアップに取り組むことで、指導の質を高めることもできます。指導の質が高まれば、教えられる側も現場での仕事の進め方、専門知識の習得などを通して、早い自立が期待できるでしょう。
教育スキルを上げれば部下・後輩が陥りがちな状況に対処できる
OJTで指導にあたる上司・先輩が教育スキルを上げれば、部下・後輩が陥りがちな状況に対処できます。
新しい職場に配属されて新しい業務に取り組む部下・後輩は、現状が理解できておらず、どこに向かっているかもわからない状態です。不安は大きく、孤独を感じる場合もあるでしょう。上司・先輩はそのような新入社員ができるだけ早く一人前になるため、サポートしなければなりません。
上司・先輩は、自分の仕事を持ちながら指導にあたることになりますが、指導スキルが高まれば、部下・後輩の状況を見極め、限られた時間の中で適切なサポートができるようになります。
適切なOJTによって信頼関係を構築できれば、新入社員・若手社員の早期離職を防止することにもつながるでしょう。
上司・先輩がOJTスキルを向上させることのメリット
OJT担当が指導スキルを磨くことは、会社にも、上司・先輩自身にも、部下・後輩にもメリットがあります。どのようなメリットが得られるのか、具体的に見ていきましょう。
会社にとってのメリット
会社にとってのメリットとしては、効率的な人材育成や職場の活性化があげられます。
コストをかけず効率的に教育できる
OJTにおける会社側のメリットは、コストをかけず効率的に教育を行えることです。Off-JTでは、場所や講師の確保などの費用が発生し、時間的にも人的にもコストがかかります。
OJTは現場で仕事をしながら仕事の基本やスキル、ノウハウを伝えられるため、特別な場所や時間を必要としません。実践の中で何度も繰り返し指導することができ、そのたびに理解を深められるのもメリットです。
職場が活性化する
OJTでは上司・先輩が職場で直接指導することで、新入社員との綿密なコミュニケーションができます。現場ではOJT担当者だけでなく、周囲の社員も新入社員を適宜サポートすることでコミュニケーションが活発になり、職場も活性化していくでしょう。
職場の活性化は、業務を円滑に進める役割もします。社員の仕事へのモチベーションが高まり、業績アップにもつながるでしょう。
上司・先輩にとってのメリット
OJT担当者となることは、上司・先輩にとっても、いくつものメリットがあります。
チームの成果が高まる
OJTを担当する上司・先輩が教育スキルを高めれば、部下・後輩の成長が加速します。実務を通じて学ぶため、研修内容と実際の仕事とのズレもありません。早く自立してチームの戦力として活躍することができるため、チーム全体の成果も高まるでしょう。
目標達成に向けてより強力なチーム編成にすることができますので、担当者自身の業務にも余裕が生まれるようになり、円滑に業務を進められるようになります。
適材適所の人材活用ができる
OJTでは新入社員一人ひとりのスキルや経験、習熟度に合わせて指導ができます。新入社員の強みや弱みを把握でき、適材適所の人材活用ができるのがメリットです。
自身の成長につながる
上司・先輩が教育スキルを向上させることで、自身の成長も促します。どのように教えたら相手が理解してくれるのかを考えながら指導を行うため、教育のノウハウを身につけることができるでしょう。
また、教えることを通し、自らも業務への理解度を増すこともできます。部下・後輩の成長とともに、自身も成長できるのが利点です。
部下・後輩にとってのメリット
OJT指導を受ける部下・後輩にとっても、多くのメリットがあります。
能力や理解度に応じて教育内容やスピードを変えられる
OJTでは上司・先輩が部下・後輩をマンツーマンで指導します。そのため、個人の能力や理解度に応じて教育内容・スピードを配慮できるのが利点です。臨機応変にトレーニングを進められるでしょう。
また、集合研修などの一斉指導では、わからないことをすぐに確認できません。しかし、OJTでわからないことがあればすぐ確認でき、効率的に業務を覚えられるのがメリットです。
業務全体を体系立てて習得することができる
OJTでは、目の前の業務をこなすようになるのはもちろん、上司・先輩を通じて業務全体の知識やスキルを習得することができます。また、Off-JT研修で学んだ知識を、実践を通じて確認し、定着できるのもメリットです。業務に対するフィードバックが得られるため、振り返りを行いながら正しい知識・スキルを身につけることができます。
OJTで上司・先輩がもっておきたい4つの方針
OJTを担当する上司・先輩は、新入社員や若手社員を指導するときの方針を決めておきたいものです。ここでは、OJTで上司・先輩がもっておくべき指導方針、心構えを4つご紹介します。
1.部下・後輩の目標を一緒に決めて達成のための道筋を示す
新しい職場で業務内容がわからない部下・後輩には、目標達成のための道筋を示すことが大切です。目標がなければ、間違った方向に業務を行う可能性もあります。
目標があることで達成したいというモチベーションが生まれ、集中力を発揮できます。業務習得の効果も高まるでしょう。部下・後輩の目標を一緒に決め、目標を達成するために計画を立てることが大切です。
2.部下・後輩の障壁を取り除く
部下・後輩は新しい職場で不安を持ちやすいため、上司・先輩は、安心して仕事ができるような雰囲気づくりを心がけることが大切です。不安や心配などの障壁があるうちは、業務をうまく習得できない可能性があります。
上司・先輩は仕事の見本を示したり、リラックスできる雰囲気を作るなどして、不安や心配などの障壁を取り除くサポートが求められます。
3.OJTを適切に実施する
OJTを実施する際は、以下のポイントを押さえましょう。
* PDCAサイクルによるOJTを実践する
* 適切なタイミングで問いかけ、仕事の成果やプロセスの振り返りを促す
* 教えるだけでなく、コーチングによって自身の中にある答えに気付かせる
* 指示を出すときには、5W1Hを用いて具体的に・明確に伝える
これらのなかでも、目標・計画(Plan)を設定して指導育成(Do)を行い、計画に照らして評価(Check)し、次の改善(Action)を行うというPDCAサイクルを回すことが特に大切です。
また、OJT計画策定にあたっては、以下の点を明確にすることを心がけましょう。
1. どのような内容を(目標項目)
2. どのレベルまで(達成水準)
3. いつまでに(期限)
4. どのような方法で身につけさせるか(OJT の方法・手段)
4.部下・後輩の状況を把握して適切な評価・フィードバックを行う
上司・先輩は部下・後輩に現状を伝え、軌道修正を図るためのフィードバックをしなければなりません。
フィードバックは、部下・後輩が自ら成長するための振り返りを促す効果があります。
参考記事:フィードバックを進んで受ける部下は、なぜ成長するのか?│PHP人材開発
OJTを行う前に上司・先輩が理解しておくべきこと
ここでは、OJTの実施前に上司・先輩が理解しておくべきことを2つ紹介します。
肯定的な人間観
上司・先輩が、OJTを実施するにあたって理解しておきたいのが「肯定的な人間観」です。肯定的な人間観を持つことで、自分自身の意識がポジティブになります。メンバーに対して肯定的に捉えられるようになり、接し方や態度もおのずと変わってくるでしょう。
他人の「ものの見方・考え方」を人は敏感に感じやすいものですが、相手が上司・先輩ならなおさらです。ポジティブな意識は相手にも伝わります。部下・後輩は「期待されている」と感じ、モチベーションを高めるでしょう。
参考記事:「人を育てる人」に求められる人間観│PHP人材開発
会社の理念・方針・組織運営
管理職には社員をマネジメントしていく役割があり、会社理念や経営方針、組織運営の正しい理解が欠かせません。教育のスキルを身につけるとともに、組織の発展を考えた経営的な視点が必要です。
OJTで指導する際は、ただ業務をこなすことを教えるのではなく、業務の背景にある会社理念や経営方針を伝え、最終的に何を目指すのかを明確にしていくことが求められます。
上司・先輩が身につけるべき6つのスキル
上司・先輩が主に身につけたいスキルは6つあります。以下のスキルをぜひチェックして、OJT担当者のスキルアップに活かしてください。
1.コミュニケーションスキル
コミュニケーションスキルは、指導する部下・後輩との信頼関係の構築において求められるスキルです。部下の話を途中で遮らずに聴いたり、表情や態度に気を配ることで、関係を良好に保つことができます。
2.目標設定スキル
OJTを効果的に進めるには目標設定が欠かせません。明確な達成基準を設けることでモチベーションの低下を防げます。具体的で達成可能な目標を設定できるスキルが求められます。
3.ティーチングスキル
仕事のやり方や業務知識だけではなく、会社の経営方針やチームのミッションを踏まえ、仕事の意味・目的を自分の言葉をまじえて伝えるスキルが必要とされます。
4.コーチングスキル
コーチングとは、相手の中にある答えを引き出す育成方法です。傾聴と問いかけによって相手の潜在的な能力や特性を引き出します。新入社員が対象であればティーチングがメインにはなりますが、問いかけを通じて相手の自主性を引き出すコーチングによる指導も必要になってくるでしょう。
5.フィードバックスキル
フィードバックとは、部下・後輩にとって耳の痛いことであってもしっかりと伝え、彼らの成長を立て直す人材育成法です。具体的には、情報通知と立て直しの働きかけを通して、問題を抱えた部下や、能力・成果の上がらない部下の成長を促進することを目指します。
参考記事:部下指導の最強の武器となる人材育成法「フィードバック」│PHP人材開発
6.適切に叱るスキル
適切に叱ることもスキルのひとつです。「叱る」と「怒る」は異なります。感情的に怒るのではなく、OJTの目的を達成するために修正すべき点を冷静に指摘できるスキルが必要です。
参考記事:部下を「ほめる目的」「叱る目的」を、あらためて考える│PHP人材開発
まとめ:上司・先輩(OJT担当者)の教育スキルを向上させよう
OJTは新入社員の早い成長のために効果的な教育手法であり、その目的を達成するには、指導を担当する上司・先輩の教育スキル向上が欠かせません。
そのために役立つのがチェックシートです。適性をチェックし、課題を明確にできます。チェックシートを上手に利用して上司・先輩のOJTスキルを高め、部下・後輩指導を成功させましょう。