ハラスメント研修の実施に必要なことは? 開催の頻度や講師などを解説
2022年4月 7日更新
パワハラ防止法の対象が、2022年4月1日から中小企業にも拡大され、ハラスメント研修の必要性が高まっています。研修を実施することによって、ハラスメント防止に関する正しい知識を広め、従業員の理解を促し、働きやすい職場づくりを進めたいものです。本記事ではハラスメント研修の内容や実施時期、講師の選び方などをご紹介します。
ハラスメント研修とは
ハラスメント研修とは、ハラスメントについての基本的な知識の習得を促し、職場でのハラスメントを予防するための研修です。
近年、パワーハラスメントをはじめとする職場でのハラスメント行為が社会問題となり、誰もが働きやすい職場づくりを進めるために、パワハラ防止法(正式名称は改正労働施策総合推進法)が施行されました。2022年4月1日からは、大企業に続いて、中小企業にも対象が拡大され、これを受けて、ハラスメント研修を実施する企業が増えています。
まずは、ハラスメント研修とはどのようなものかをご紹介していきましょう。
ハラスメント研修は義務?
パワハラ防止法では、企業にパワーハラスメントの防止措置をとることを義務づけています。
ハラスメント研修を行うこと自体は義務ではありませんが、パワーハラスメント防止措置をとることが事業主の義務とされているため、防止措置の一環として多くの企業が研修実施を始めているというのが現状です。
ハラスメント研修を実施する目的
ハラスメント研修を実施する目的は、ハラスメントについての理解を深め、従業員のリテラシーを強化して、ハラスメントを起こさない職場風土づくりを進め、働きやすい環境を構築することです。
ハラスメント研修では、どのような行為がハラスメントとなり、コンプライアンス違反になるかの理解を促します。研修の対象は、全従業員になります。コンプライアンス違反となるハラスメントについて皆が理解し、組織としてハラスメントを起こさない職場風土づくりを進めたいものです。
参考記事:職場におけるハラスメントの種類は? 企業への悪影響と具体的な対策も解説
ハラスメント研修はいつ行う?
ハラスメント研修は、全従業員が受講することで目的を達成します。また、ハラスメントへの理解を定着させるためには、1回だけで終わるのではなく、継続して実施することが必要です。
研修を行うタイミングは、いくつか考えられます。まずは、新入社員に対する導入研修。そして、管理職に昇格したときの節目研修があげられますが、ほかにも定期的な研修や、職場の勉強会などとあわせて実施することができます。
ハラスメント研修を行うタイミングについて、具体的にご紹介しましょう。
入社時の導入研修
ハラスメント研修を行うタイミングとして必須なのが、入社時の新入社員研修です。新入社員は、ハラスメントという言葉は知っていても、その解釈はさまざまです。どのような行為がハラスメントになるのか、正しい知識を身につけなければなりません。
正しい知識がないと、上司や先輩からの指示や指導、注意を、ハラスメントと混同してしまう可能性があるからです。ハラスメント研修を受けることで、そのような問題が起こるのを防ぐことができます。
管理職への昇格研修
管理職に昇格する節目は、ハラスメント研修を実施するよいタイミングです。管理職として職場のハラスメントをどう防ぐのか、どのような行為がハラスメントとなるのか、ハラスメントが発生したときにどう対応するのかを、正しく理解しておく必要があります。
さらに、ハラスメントを未然に防止するために、部下との信頼関係を築くためのコミュニケーションスキルを学ぶカリキュラムがあるといいでしょう。
相談窓口担当者や人事労務担当者向けの研修
ハラスメントの相談窓口を担当する社員や、人事労務担当者向けの研修を行うことも必要です。
研修では相談を受ける際の心得や対応方法、ハラスメントが発生した場合の事実確認、相談に対応する際に配慮すべきことなどを学びます。
具体的にどのようなことがハラスメントになるかを正確に把握し、解決へと導く実践力を身につけることを目的とする研修ですので、体制をスタートする時や、担当に任命する時など、適切なタイミングで実施するといいでしょう。
全従業員に研修を行うのが難しいときは?
ハラスメントを起こさない職場づくりのためには、全従業員が継続的に研修を受けることが望ましいといえるでしょう。定例の全体会議や、定期的に行う研修のカリキュラムの一つとして組み込むのもいいでしょう。
従業員を一カ所に集めて研修を実施するのが難しい場合には、オンライン研修や、eラーニング、通信教育講座の利用も検討しましょう。ケーススタディなどの研修用の動画を、社内ネットワークやLMSに常設して、リモートワーク、在宅ワーク中の自己啓発を後押しすることもできます。
ハラスメント研修の講師は誰が適任?
ハラスメント研修を実施する際は、講師をどうするか迷うこともあるでしょう。相談窓口の担当者や人事労務担当者などの社員を講師にする、あるいは社外の専門家に依頼するといった方法があります。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、自社の事情に合わせて選ぶとよいでしょう。ハラスメント研修の講師について具体的に紹介します。
社員が研修講師となる場合
社員を研修講師に任命する場合、自社の状況に合わせたケーススタディや、研修プログラムを作成できるため、画一的な研修内容にならないというメリットがあります。外部の講師に支払うコストを抑えられるのもメリットの一つです。
現場に即したプログラムにできる反面、法的な内容などについては専門知識が必要になることから、教える内容について、十分な検証が必要になります。
また、担当する社員の経験が浅く講師としてのスキルが十分でない場合には、手間と労力を費やすわりに思うような教育効果をあげられない可能性もあります。
社外に依頼する場合
社外の講師に依頼する場合、ハラスメントの問題に詳しい講師から専門的な内容の研修を受けられるのがメリットです。準備に時間を取られることなく、スムーズに研修を実施できます。
デメリットは、社内講師で実施する場合に比べて、費用がかかることです。予算が限られている場合には、依頼が難しくなるかもしれません。
また、外部に研修を委託する場合、一般的な研修内容にとどまってしまいがちです。たとえば、自社の現状や課題に合わせたケーススタディなどをとり入れたい場合には、事前の打ち合わせをきちんと行って、オリジナルのプログラムを作成を依頼する必要があります。
依頼する講師の選び方
外部の講師を依頼する場合、実際にハラスメントの問題に多く携わっている弁護士やコンサルタントがおすすめです。現場のリアルな事例を紹介してもらうことで、ハラスメントの理解を深めることができます。
ハラスメント研修のポイント
ハラスメント研修を実施する際に、いくつか工夫したいポイントがあります。具体的にご紹介していきます。
会社の理念を伝える
ハラスメント研修では、ハラスメントを許さないことが会社としての理念であることを繰り返し伝えることが大切です。
研修内容にトップからのメッセージをもりこみ、就業規則で禁止されていることも伝えるとよいでしょう。研修の目的が明確になり、従業員に対して強いアピールになります。
全従業員が心がける行動指針として、ハラスメント禁止をうたったクレドを導入するという方法もあります。
継続して行う
ハラスメント研修は、ハラスメントの予防対策として最も効果的な方法です。効果を高めるには、定期的に継続して実施する必要があります。毎年計画を立てて行うとよいでしょう。
また、研修内容は毎回同じではなく、回を重ねるごとにアップデートすることが大切です。ハラスメントに関する業界のトピックを伝えたり、実際に発生した事例をもとに意見交換をしてもらったりなどの内容で、ハラスメント防止についての理解が浸透するように工夫をしていきましょう。
全従業員に対して実施する
ハラスメント研修は、全従業員を対象に実施することが大切です。
ただし、研修内容によっては、受講者が当事者意識を持ちにくい、他人事に感じてしまうという問題が出てきます。参加意欲の湧かない研修では、仕事が忙しいときに参加させられたという感覚を持ちやすく、継続して研修を受けることに前向きになれない従業員も出てくるでしょう。
そのようなことのないよう、対象となる従業員にあわせて、プログラムを調整する必要があります。座学だけではなくロールプレイングを取り入れたり、実際の事例を提示して一人ひとりに考えさせたりするなどの工夫を心掛けたいものです。
実施方法は2通り
講師の選び方のところでもふれましたが、ハラスメント研修の実施方法は、社内で企画して実施する方法と、外部に委託する方法の2通りがあります。
社内で研修を企画して実施する
社内で研修を企画する場合、対象を一般社員と管理職に分けて実施するのが効果的です。最初は一般的なハラスメントの定義や行為類型を確認し、回数を重ねながら自社の環境に合わせた内容にしていきましょう。
研修のプログラムを作るときは、厚生労働省のホームページの資料が参考になります。
外部の研修サービスを利用する
外部の研修サービスを利用する方法もあります。講師の派遣を依頼してインハウス研修を実施する、あるいは公開講座に従業員を派遣する方法です。公開講座では、オンラインで研修を受けられる場合もあります。人事部やコンプライアンス部など、担当部署が自社で企画する際の参考に受講するのもよいでしょう。
まとめ
パワハラ防止法の施行により、企業にはパワーハラスメントの防止措置が義務づけられました。ハラスメントの防止対策として効果的なのが、ハラスメント研修です。
研修は一度だけでなく、定期的に繰り返し実施することが効果を高めるポイントです。社内で研修を実施する、あるいは外部講師を招いて研修を行う、外部の公開セミナーに従業員を派遣するなどの方法があります。テレワークなどで従業員を集めて研修を実施できないという場合には、eラーニングの受講や、イントラに動画教材を設置するなどで、自己啓発を促す方法も検討できるでしょう。
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