階層別教育のご提案

公開セミナー・講師派遣

通信教育・オンライン

DVD・テキスト他

ハラスメント防止法とは何か? 該当基準や放置リスク、対策を解説

2022年7月13日更新

ハラスメント防止法とは何か? 該当基準や放置リスク、対策を解説

職場におけるパワーハラスメントを防止するためのハラスメント防止法が、2020年6月から大企業を対象に、2022年4月からは中小企業を対象に施行されました。全企業の事業主に対して防止措置が義務化されたため、対策に取り組んでいる企業も多いでしょう。今回は、ハラスメント防止法の概要や対策などを解説します。

INDEX

ハラスメント防止法の概要

労働施策総合推進法は、1966年に制定された雇用対策法を改正し、すべての労働者が生きがいを持ちながら働ける社会を目指して施行されました。労働施策総合推進法のなかに、職場におけるパワーハラスメントを防止する規定が盛り込まれていたこともあって、「パワハラ防止法」とも呼ばれています。
職場のパワーハラスメントは、働く人が能力を十分に発揮することの妨げになることはもちろん、個人としての尊厳や人格を不当に傷つける、人権に関わる許されない行為です。
パワハラ防止法では、パワハラを明確に定義し、企業に対して防止措置を義務化しています。

パワハラ防止法では、大企業に対しては2020年6月から、中小企業には2022年4月から防止措置が義務化され、適切な措置を講じていない場合には是正指導の対象となります。職場のマタハラやセクハラを防止するための関連法もすでに施行されているため、企業はハラスメントについて総合的な対策を講じることが急務となっているのです。

ハラスメントに該当する3つの基準

ハラスメントに該当する3つの基準

パワハラ防止法では、職場におけるパワーハラスメントについて、次の3つの要素をすべて満たすものと定義しています。

①優越的な関係を背景とした言動であって、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③労働者の就業環境が害されるもの

また、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しないとされています。本人と上下関係にある上司や先輩からの注意・指導が厳しいものであった場合でも、そのすべてがハラスメントと認定されるわけではないということろに注意が必要です。
各要素について詳しく見ていきましょう。

①「優越的な関係を背景とした言動」とは

職場で仕事をするうえで、抵抗したり拒絶したりできない関係性を利用して行う言動のことです。上司や部下といった上下関係のある間柄で行われます。
ただし、必ずしも上下関係の間柄だけでハラスメントが発生するわけではありません。たとえば、部下から上司、同僚同士において行われる言動もパワハラとみなされることがあります。広義的に捉えることでハラスメントの抑制につながるとされています。

②「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは

職場で仕事をする上で必要のない、あるいは行き過ぎた言動を指します。その言動がハラスメントであるか否かを見極めるには、言動の意図や経緯、関係性などを踏まえたうえで総合的に判断しなければいけません。
また業務において明らかに問題となる行動があったとしても、その行動をとった人に対して、個人の人格を否定するような叱責をしたといった場合にはハラスメントに該当することになります。

③「就業環境が害される」言動とは

身体的かつ精神的に苦痛を与えられ働く環境が不快なものとなったために、本人の能力の発揮に重大な悪影響が生じる等の看過できない程度の支障を生じさせる言動を指します。
この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、「同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうか」が基準とされます。 言動の頻度や継続性は考慮されますが、強い身体的あるいは精神的苦痛を与える言動の場合には、たとえ1回でも就業環境に悪影響が生じることもあります。このような場合はハラスメントとみなされることがあります。

ハラスメントを放置する5つのリスク

パワハラ防止法によって、パワハラは、個々の労働者間の問題ではなく、事業者の責任であることが明確化されました。企業がハラスメントを放置することによって発生するリスクには、次のようなものがあります。

●社員一人ひとりの生産性が低下する
●退職者が増加して人材不足に陥る
●周囲に精神的な悪影響を及ぼす
●採用活動に時間とコストがかかる
●被害者から損害賠償を請求される

それぞれのリスクを確認していきましょう。

1.社員一人ひとりの生産性が低下する

職場でハラスメントの問題が起こると、対象社員は仕事への意欲が低下するため、作業効率が悪化して生産性が下がります。またハラスメントの問題は、職場内で一緒に働くほかの社員にも悪影響を及ぼすため、職場全体の生産性が低下する要因になります。社員一人ひとりの生産性が低下し、職場で仕事が回らなくなると、企業全体の収益に影響が出ることもあります。

2.退職者が増加して人材不足に陥る

近年は労働人口の減少などの影響を受けて、人手不足の問題を抱える企業も少なくありません。それに加えて、職場でハラスメント問題が起こると、関係者の休職や退職につながることがあります。
また、他の社員も、ハラスメント問題が横行する職場で働き続けることに不安を感じ始め、職場で退職の連鎖を引き起こす可能性もあるのです。人手不足の問題を抱える企業にとって、優秀な人材の流出が大きな痛手になることは間違いありません。

3.周囲に精神的な悪影響を及ぼす

職場でハラスメントが横行すると、被害者ではない社員も「いずれは自分が標的になるかもしれない」といった不安を抱き始めます。その結果、自分がハラスメントの次の対象にならないように、ビクビクしながら仕事をしなければいけません。
そうした心理的安全性が保たれていない職場では、働く人が精神的に不安定な状態に陥るため、ミスが増えるなど業務効率が下がってしまいます。またハラスメントが放置されている状態では、会社や上司に対する不信感が湧きます。この影響により、仕事への意欲が低下して離職を考える社員も出てくるでしょう。

4.採用活動に時間とコストがかかる

ハラスメントが横行する職場では、離職者が増えるため、人員を補充するために採用活動を行うことになります。そして、新しく採用した人が入社したとしても、ハラスメントによる離職者が出ると、また人員が足りなくなり、採用活動を行うことになります。こうして常に採用活動を行うことになると、そこに大きなコストがかかり、常にリソースを割くことになります。
さらに、離職者が後を絶たないという状況が社外に広まると、求職者から「この会社はブラック企業ではないか」と不信感を持たれる可能性があります。
このような状態では、優秀な人材からの応募が来ることはありません。

5.被害者から損害賠償を請求される

ハラスメントの被害者から損害賠償を請求されるリスクがあることも忘れてはいけません。実はハラスメントを受けた被害者は、加害者だけではなく、企業に対しても使用者責任や安全配慮義務違反などに関する賠償責任を請求することができるのです。
被害者が賠償責任を誰に請求するかは、当人の意思に委ねられています。被害者から企業が損害賠償を請求された場合には、多額の賠償金を支払うことになるかもしれません。金銭的な損害だけではなく、社会的信用やイメージの低下を招くおそれがあるでしょう。

DVD『上司のハラスメント パワハラ編』はこちら

ハラスメントを防止する3つの対策

ハラスメント防止措置は、2022年4月からは中小企業も義務化の対象になっており、ハラスメント対策への意識が高まっています。ハラスメントを防止する主な対策には、次のようなものがあります。

●企業としての方針を周知し、教育研修を実施する
●状況に応じて対応できる体制を整備する
●相談の申出に迅速かつ適切に対応する

それぞれの対策を確認していきましょう。

1.企業としての方針を周知し、教育研修を実施する

どのような言動がハラスメントに該当するのか、その認識が個人で異なることもあります。個人の認識の差でハラスメントが起こることもあるため、企業としてのハラスメント防止に関する方針を周知することが必要です。
まずは、企業としてのハラスメント防止に関する方針を明文化しましょう。方針には、ハラスメントの加害者に対して厳正に対処する旨や、対処の内容も含めておきましょう。明文化したあとは、全社員に周知し、社員の理解を促すために教育研修を行うといいでしょう。

参考記事:ハラスメント研修の実施に必要なことは? 開催の頻度や講師などを解説

ハラスメント研修動画のデータ提供はこちら

2.状況に応じて対応できる体制を整備する

ハラスメントを受けた被害者から、直接相談を受けることもあります。このような場合に備え、ハラスメントの内容や状況に応じて、適切かつ柔軟に対応できる体制を社内で整えておくことが必要です。たとえば、社内に相談窓口を設置して社員に周知したり、アンケートや面談の機会を設けたりする方法があります。
相談窓口を設置する場合、情報が漏れることを心配して相談できない社員がいるかもしれません。窓口に相談した内容は、漏れる心配がないことを伝え、窓口をしっかり機能させる必要があります。また、担当者の選定や相談内容の管理は慎重におこない、被害者が安心して相談できる環境を整えましょう。

3.相談の申出に迅速かつ適切に対応する

被害者からハラスメントの相談があった場合、担当者は迅速かつ適切に対応しなければいけません。まずは、相談者から内容をしっかりと聞き取ることが大切です。その後、相談内容の事実関係を確認し、ハラスメントに該当するかどうか、専門家の意見を求めつつ見極める必要があります。ハラスメントの事実が確認できたならば、行為者と被害者に対して適切な措置をとることになります。

参考記事:ハラスメント研修の実施に必要なことは? 開催の頻度や講師などを解説

PHP講師派遣「ハラスメント研修」資料ダウンロードはこちら

まとめ

労働者が生きがいを持ちながら働ける社会を目指して施行された労働施策総合推進法のなかには、 メントを防止する規定が盛り込まれました。大企業に対しては2020年6月、中小企業は2022年4月から防止措置をとることが義務化されています。
ハラスメントは、被害者だけの問題ではありません。企業に法的責任が問われるのはもちろん、社員の離職や生産性の低下などさまざまな悪影響をもたらすリスクがあります。
まずは、企業としてハラスメント防止の方針を明文化し、社員に周知すること。そして教育研修に取り組む、相談窓口を設置するなど、ハラスメントを防止するための対策を実施しましょう。

DVD『上司のハラスメント パワハラ編』はこちら

PHPの人づくり・組織づくりTOPへ

新着記事企業は人なり~PHPの人づくり・組織づくり

  • 公開セミナー
  • 講師派遣・研修コンサルティング
  • 通信教育
  • eラーニング
  • DVDビデオ教材

×