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従業員エンゲージメントの高め方 おすすめの方法6選

2021年10月 1日更新

従業員エンゲージメントの高め方 おすすめの方法6選

終身雇用や年功序列といった、旧来の雇用形態が終焉をむかえつつある日本の企業。そうした中で従業員の会社に対する「エンゲージメント」(engagement)が低下していると言われています。そこで、いま、日本企業では従業員エンゲージメントを向上させる取り組みがはじまっています。

では、どのようにエンゲージメントを高めればいいのでしょうか。そもそもエンゲージメントの正確な定義が分からないという方も少なくないかもしれません。今回は、あらためて従業員エンゲージメントとは何か、いかに高めていくかを考えていきます。

INDEX

なお、あわせて下記もご参照ください。

「エンゲージメントとは? 組織風土改革との関係やマネジメントを解説」

「エンゲージメントサーベイとは? 実施の目的と効果・進め方を紹介」

従業員エンゲージメントとは

人事用語としてのエンゲージメントとは、組織と個人間の関係の深さ、また会社、組織への愛着のことを指します。従業員のエンゲージメントを高めることで、離職率低下や生産性向上などさまざまな効果が期待できます。
ただ、エンゲージメントの概念は比較的新しいものであるため、具体的な言葉の定義や用途が曖昧という人もいるでしょう。ここではまず、従業員のエンゲージメントに関する基礎的な事柄について解説します。

エンゲージメントとは従業員の会社に対する「愛着心」のこと

エンゲージメントには「契約」「婚約」の意味があります。しかし、人事用語として使われる場合は本来の言葉の意味とは違い、所属する会社や組織、自社の商品への愛着、あるいは自発的に社業に貢献したいと思う気持ちのことをいいます。
エンゲージメントが今、大きな注目を集める理由は、従来では当たり前だった終身雇用や年功序列などの人事・雇用制度が崩壊し、企業と従業員との関係性が変わりつつあるからといえます。働き方の多様化により、従業員の会社に対するコミットの仕方も変わり、かつてのように画一的な愛着心を求めることが難しくなってきていることが、その背景にあるのです。

参考記事:エンゲージメントとは? 組織風土改革との関係やマネジメントを解説

従業員満足度やロイヤリティとの違い

エンゲージメントと似た言葉に「従業員満足度」があります。「ES」(Employee Satisfaction)と呼ばれることもありますが、従業員満足度は自分の待遇や報酬、職場環境などに対してどのくらい満足しているかを示すものです。一方、エンゲージメントは従業員が会社に対して貢献したい気持ちのことをいいます。
従業員満足度が高い会社だからといって、必ずしも業績がよいとはかぎりません。つまり、エンゲージメントには、会社の業績向上につなげようという意図が明確にあります。この点が、従業員満足度とエンゲージメントとの大きな違いだといえます。

また、「ロイヤルティ」(loyalty)という言葉もよく使われます。ロイヤルティは、従業員が企業に対してどのくらい忠誠心を持っているかを示すものです。エンゲージメントとロイヤルティの違いは、会社と従業員の立ち位置の違いと考えればよいでしょう。
エンゲージメントは、従業員と会社が対等の立場でお互いに作用しながら高めていくものです。一方、ロイヤルティは従業員が抱く忠誠心ですから、かつての日本型雇用における指標のような印象は否めません。

以上、エンゲージメントを理解するために、類似の用語を整理してみました。語句の解釈を細かく定義することはあまり重要ではありません。ただ、人事施策としてのエンゲージメントは、所属する会社や自社の商品への愛着であり、自発的に貢献したいと思う気持ちを高め、業績向上につなげていく試みという理解をしていただければよいと考えます。

日本企業のエンゲージメントは世界最低水準

2017年に米国の調査会社であるギャラップ社が発表した結果によると、日本の従業員のエンゲージメントは、世界139カ国中なんと132位であり「非常に低い」ことが明らかになっています。これは複数の会社による調査結果を含めても、最新の2021年に至るまで改善されていません。
各国の社会情勢や労働環境はそれぞれ異なるため単純には比較できませんが、日本の従業員のエンゲージメントは圧倒的に世界の水準から低いため、その向上に関心をよせる企業が増えているというのが現状です。

従業員エンゲージメントが低い4つの理由

従業員エンゲージメントが低い理由

日本企業におけるエンゲージメントは、世界的に最低水準であることが分かったわけですが、そもそもエンゲージメントの概念は米国で生まれたものですから、日本で浸透が遅れるのは仕方がないことなのかもしれません。
ただ、これからエンゲージメントの向上に向けた取り組みを行うなら、なぜ日本は従業員のエンゲージメントが低いのか、その理由を正しく理解する必要があります。

日本における従業員エンゲージメントが低い理由は、以下の4点といわれます。

●評価・給与・処遇への不満
●成長、達成感、貢献が実感できない
●働きにくい組織風土、人間関係
●過剰なコンプライアンスによる委縮

それぞれの項目を詳しく確認していきましょう。

評価・給与・処遇への不満

当然のことながら、給与や処遇への不満は従業員のエンゲージメントを大きく低下させます。「成果の割に給料が安すぎる」「がんばっているのに上司・会社は認めてくれない」「人事評価が不公平だ」といった不満がつのれば、パフォーマンスは下がります。
その点の不満については、年功序列型賃金制度の名残もよく指摘されます。業績につながる的確な指示が出せない管理職や、社歴が長いだけで給与が高い年配の従業員に対して、若い従業員の不満はたまりがちです。そうした不満はやがて会社へと向かい、エンゲージメントを著しく低下させます。

成長、達成感、貢献が実感できない

給与や処遇への不満はエンゲージメントの低下を招きますが、それでも従業員が仕事へのやりがいや会社・社会への貢献、自分自身の成長を実感できるようにすれば、エンゲージメントを高めることはできます。人は給与のためだけに働くわけではありませんから、この問題は、管理職のマネジメントで対処することは可能です。
しかし、いくら従業員のモチベーションを上げられたからといって、長時間労働やサービス残業を強いるようなことがあれば、それはいわゆる「やりがい搾取」です。エンゲージメントは長続きしないでしょう。

働きにくい組織風土、人間関係

組織風土や人間関係もエンゲージメントを大きく左右します。上下関係が厳しい、仕事の自由度が低い、意見や提案がしにくい、人間関係がギスギスしているといった職場は、従業員にとって、まちがいなく大きなストレスとなります。
調整のために何度も会議を開いたり、同じような資料を作成させられたり、繰り返しの説明を求められるような職場も問題です。本来やるべき業務に時間を費やすことができず、結果として過重労働を強いるようでは、従業員のフラストレーションはたまる一方です。

過剰なコンプライアンスによる委縮

企業の社会的な信用を維持するうえで、法令順守は当然のことです。しかし、過剰なコンプライアンスが従業員を委縮させてしまうケースもあります。「それはコンプラ的にできない」などと、新しいチャレンジが頻繁に阻害されるようでは、組織の活力は失われます。
いたずらに煩雑な社内手続きも、従業員のモチベーションを削ぐことになるでしょう。まして、自分の仕事が「監視」されていると感じるようになれば、従業員のエンゲージメントはどんどん低下していきます。

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エンゲージメントの向上で得られる4つの効果

エンゲージメントの向上で得られる効果

では、従業員のエンゲージメントを向上させることで、どのような効果が期待できるのでしょうが。主なものは、以下のとおりです。

●従業員の離職率低下に繋げられる
●売上高や利益率の向上が期待できる
●結果的に顧客満足度を上げられる
●従業員同士の結束を強化できる

それぞれの効果を確認していきましょう。

従業員の離職率低下に繋がる

エンゲージメントが高くなり、会社に対する愛着が強い状態であれば、従業員には「ここで働きたい」「成長したい」という気持ちが湧いてきます。これにより従業員のリテンションを高め、優秀な人材の流出を防ぐことができます。これは、新たな人材の採用、教育コストが削減できることも大きなメリットです。

売上高や利益率の向上が期待できる

エンゲージメントの高い会社では、売上高や利益率が向上することが分かっています。
エンゲージメントが高い会社に勤務する従業員は、自分の仕事に対して働きがいややりがいを見出しています。プライドや熱意を持って日々業務に取り組んでいるため、仕事の生産性が高まり、利益率向上にも良い影響をもたらしてくれるのです。

結果的に顧客満足度を上げられる

一見、従業員のエンゲージメントと顧客満足度には、直接的な関連がないように思えます。しかし、従業員のエンゲージメントが高まれば、仕事へのモチベーションが上がり、従業員は自社の商品やサービスを、より多くの消費者に利用してもらえるように、仕事に真摯に向き合うようになります。この結果、商品やサービスを購入した顧客の満足度が高まり、最終的に、企業に対する評価にも大きな影響をもたらすのです。

従業員同士の結束を強化できる

従業員のエンゲージメントの向上は、一緒に働く同僚や後輩、上司への信頼にも繋がります。担当業務の内容は違っても、同じ目的に向かって仕事に取り組んでいるということで仲間意識が芽生えるのです。何か問題に直面したときにも協力して解決していこうという空気感が生まれてきます。従業員同士のチームワークが向上し、現場からイノベーションが生まれる可能性も高まります。

エンゲージメントサーベイの具体的な進め方

エンゲージメントサーベイ

では、従業員のエンゲージメントを高めるためには、具体的にどのような方策があるのでしょうか。
どういった方法をとるにせよ、まずは、従業員エンゲージメントの現状について把握することが第一歩となります。そこで、従業員のエンゲージメントサーベイ(調査)を行う方法や注意点について確認していきましょう。

調査する方法はアンケートが主流

従業員のエンゲージメントを調査する際、一般的にはアンケートが多く用いられます。アンケートは実施するハードルが低いことが好まれており、月に1回、もしくは半年に1回のペースで行う会社が多いようです。アンケートの質問数は少ないほうが回答率は高まるため、50~100問を目安に作成されます。

従業員アンケートの実施で注意すべきこと

社内でアンケートを実施する際には、いくつか注意すべきことがあります。
まず1つ目は、アンケートを実施する目的を従業員に共有することです。なぜアンケートに回答しなければいけないのか、その目的の伝え方が曖昧だと、従業員から率直な回答が得られないことがあります。
エンゲージメントサーベイを行う目的は、会社や従業員が抱える問題を明確にして改善策を導き出すことです。アンケート実施の目的を人事担当者だけが把握するのではなく、従業員に対してもしっかり示しましょう。

2つ目として、アンケートの実施後は集計から分析まで、なるべく迅速に対応することです。過去に何度かアンケートを実施している場合は、過去の調査結果と比較して問題点が改善されているか確認しましょう。
もし改善されていないと感じる従業員がいる場合は、さらに詳しい情報を得るために面談を実施して直接話をすることが大切です。

アンケート調査に有効な質問内容の具体例

従業員アンケートでは、5段階もしくは10段階による回答形式が用いられることが多いようです。エンゲージメントサーベイのアンケート調査に有効な質問項目を確認していきましょう。

●会社を良い職場として友人に推薦したいですか?
●職場で自分が期待されていると感じますか?
●自分が正当に評価されていると感じますか?
●1年後もこの会社で働いていると思いますか?
●自分のキャリアを築くのにこの会社は良い場所だと思いますか?
●成果を出すための時間は確保できていますか?

上記はあくまで参考例ですが、従業員のエンゲージメントを計測するのに適した質問です。アンケートの質問項目から、従業員が抱える職場で働くうえでの障害や改善点を知ることができます。

なお、こうしたエンゲージメントサーベイには時間も手間もかかりますし、適切な設問を準備し、集計データから課題を抽出し、改善施策につなげるというプロセスにも知見が必要であることから、プロのノウハウを借りることも考えるべきでしょう。Webで回答し、集計も簡易にでき、有用なアドバイスがもらえるサーベイツールも多数ありますので、ぜひ活用を検討してみてください。

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従業員のエンゲージメントの高め方6選

従業員のエンゲージメントが低い場合は、向上させるための企業努力が欠かせません。従業員のエンゲージメントを高めるには、以下のような方法があります。

1.企業理念やビジョンを従業員に示す
2.従業員の成長を支援する環境を整える
3.従業員が挑戦できる機会を与える
4.仕事に従事しやすい職場環境を整える
5.従業員に対する適切な人事評価を実施する
6.職場の人間関係を活性化させる

それぞれのポイントを確認していきましょう。

1.企業理念やビジョンを従業員に示す

社長や経営幹部の考え方が不明確だと、従業員は会社に対して不信感を抱くことがあります。従業員の会社に対するエンゲージメントを高めたいなら、企業理念やビジョンを明確に示しましょう。
近年は、社会貢献にやりがいを求める若手が増えています。また、処遇や福利厚生などでは大手企業に劣るものの、ビジョンなら勝てるかもしれないという中小企業が多数存在します。従業員が共感できるビジョンはどのようなものかを考えてみましょう。

2.従業員の成長を支援する環境を整える

成長やキャリアの見通しがつかない会社に、信頼や愛着心は湧きません。そういった状態では、いつまで経ってもエンゲージメントは向上しないでしょう。エンゲージメントを高めたいなら、従業員一人ひとりが理想とするキャリアを築けるような環境を整えることが大切です。
例えば、スキルアップを支援する制度を整えたり、従業員が納得できる人事評価制度を導入したりするのもいいでしょう。理想のキャリアを築けることを従業員が感じれば、会社へのエンゲージメントは高まります。

3.従業員が挑戦できる機会を与える

従業員に成長機会を与えることも、エンゲージメントを高めるうえで重要なポイントです。例えば、新しい仕事に挑戦する機会を与えたり、リーダーを育成するための研修を実施したり、社内ベンチャー制度を導入したりするのもいいでしょう。

また従業員一人ひとりの特性や強みを把握して、その特性や強みを活かせる業務を割り当てることも重要なことです。上司や先輩からの期待を感じられるため、従業員の仕事へのモチベーションアップにつながります。また、その仕事で結果が出すことができれば、自己効力感が得られ、上司や会社への信頼も高まるはずです。

4.仕事に従事しやすい職場環境を整える

従業員が自身の能力を最大限に発揮するには、健康状態が良好であることが不可欠です。例えば、残業が多くなっていたりパワハラが横行していたりする場合、その職場は従業員にとって心身の健康を維持しやすい職場環境であるとはいえません。
残業が多い部署の適正人員を検討したり、社内でストレスケアや健康管理を行ったりして、健康を維持し、仕事に従事しやすい職場環境を整えましょう。

5.従業員に対する適切な人事評価を実施する

成果を上げて会社に正当に評価された事実は、従業員にとって仕事の原動力になります。仕事の評価が給与や昇進に直結しているならなおさらでしょう。人事評価が曖昧で、透明性のない制度は、エンゲージメントを低下させる要因になります。
そのため、まずは自社の人事評価制度を見直してみましょう。そのうえで、評価項目や基準、方法を評価者である管理職はもちろん、従業員にもしっかりと理解させ、どのような行動が評価に繋がるのかを、きちんと示す必要があるでしょう。

6. 職場の人間関係を活性化させる

従業員のエンゲージメントを向上させるうえで重要な要素の一つに、社内の人間関係があります。
例えば、意見が言いづらいような雰囲気の職場では、新しい仕事のアイデアや業務改善策をもっている従業員がいたとしても、上司や先輩の指示に従って仕事をこなすだけになってしまいがちです。これでは会社として事業の進展にはつながりませんし、本人も仕事に対する達成感を得られず、モチベーションが上がりません。
また、コミュニケーションが円滑でない職場では、生産性が落ちたり、重大なミスが発生したりといったことになりがちです。
まずはエンゲージメントサーベイで、現状をしっかり把握したいものです。

求められる経営幹部・管理職のリーダーシップ

経営幹部・管理職のリーダーシップ

バブル崩壊後の「失われた20年」で進めた事業構造転換が功を奏して、収益面で復活を果たした企業はたくさんあります。その反面、頻発する不祥事やハラスメント問題に象徴される職場の人間関係の崩壊、働きがい・やりがいの喪失、離職率の増大等々、企業の現場には深刻な問題が山積しています。こうした課題を解決するうえで、エンゲージメントを高める取り組みは、今後の企業の成長発展を大きく左右するといえるでしょう。
では、そのKFS(重要成功要因)は何でしょうか。
私たちは、経営幹部・管理職が「使命感を共有」し、メンバー間の「関係の質の向上」を目指してリーダーシップを発揮することこそが、エンゲージメントを高めるための出発点であると考えます。
それにより、目標達成に向かって一丸となる力強い現場が生まれ、企業理念の具現化と業績の持続的向上が実現できるでしょう。

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