チームコーチングとは? 目的やメリットなどを解説
2023年12月14日更新
働き方や価値観が多様化するなか、リーダーとしてチームを一つにまとめ、成果を上げることは、これまで以上に難しくなっています。チームをまとめるためにはさまざまな手法がありますが、「チームコーチング」もその一つです。本記事では、チームコーチングの特徴や目的、実施することで得られるメリット、ほかの手法との違いなどを解説します。
INDEX
チームコーチングとは?
チームコーチングとは、メンバーのパフォーマンスを最大化し、目標を達成できる組織を築くための手法です。コーチとクライアントが一対一で行う個人的なコーチングとは異なり、複数のメンバーで構成されるチームをクライアントとして、チームの成果を最大化し、メンバーの成長を促す役割を担う組織開発の手法です。
チームコーチングは、当事者意識の醸成や既存の行動パターンからの脱却、課題解決などを支援し、業務の品質やサービスのレベルが向上する効果を期待できます。ここでは、チームコーチングが必要とされる背景やチームコーチングの役割をご紹介します。
チームコーチングが必要とされる背景
チームコーチングが必要とされる背景には、リモートワークの普及によって働き方が多様化したことが影響しています。働き方の自由度は高まったものの、チーム全体の結束感の維持が困難になったのです。
また、働き方の多様化によって、チームには価値観や勤務形態が異なる社員が在籍します。チームとしての結束と一体感を保つためには、組織目標の再確認や、コミュニケーションの活性化が欠かせません。オンライン上であっても意見交換やディスカッションを行えるような環境を確保するなど、エンゲージメント向上につながる施策が求められています。こうした状況にあって、チーム力向上のために注目を集めているのがチームコーチングなのです。
チームコーチングが担う役割
チームコーチングは組織開発の一環として、チームの成長や発展を促進する役割を担っています。「チーム」が意味するのは大規模な集団でも個人でもない、小規模な集団です。チームコーチングは小規模の集団向けの組織開発手法であり、目標の共有やコミュニケーションの促進などに役立ちます。
チームのなかの個人にもアプローチすることで、全体のパフォーマンスを高められるのも特徴の一つです。
チームコーチングのリーダー「チームコーチ」
チームコーチングでは、リーダーである「チームコーチ」がチームを牽引していきます。単にチームの意思決定者やアドバイザーのような存在ではなく、チームメンバーの課題を分析し、メンバーのモチベーションを引き出す役割を担う人です。
一般的には、現場の管理職や社内または外部のコーチ、組織開発を担当するビジネスパートナーがチームリーダーとしてふさわしいでしょう。チームコーチには、個々の力を底上げしてチーム全体のパフォーマンスを向上させることが求められます。そのためには、チームを客観的に把握できる人材が適任といえます。
参考記事:「コーチャブル」な組織風土を作るための3つのステップとは?│PHP人材開発
チームコーチングの主な目的
チームコーチングの主な目的として、次の2点が挙げられます。
●チーム成果の最大化と個々の成長
●問題解決能力や適応能力の獲得
チーム全体のパフォーマンスの発揮はもちろんですが、個々にも焦点を当てることが大きなポイントです。ここでは、チームコーチングの主な目的を詳しく解説します。目的を理解することで、チームコーチングの効果をより高めることにつながるでしょう。
チーム成果の最大化と個々の成長
チームコーチングの目的は、チーム成果の最大化であることは間違いありませんが、それに加えて個々のメンバーが主体的に学び成長する力を獲得することも一つの目的といえるでしょう。チームのパフォーマンスを高めるためには、チームメンバー全員が同じ目標を目指して取り組む必要があります。そのためには、メンバーが自ら学んで行動に移す姿勢が求められるのです。
問題解決能力や適応能力の獲得
もう一つの目的は、問題解決能力と適応能力を身に付けることです。チームコーチはメンバーとともに、チームの問題について考え、課題を発見し、解決策を見出し、行動に移す力を育てます。その過程で、メンバー一人ひとりが問題を解決する能力の獲得をサポートします。チームコーチングでは、メンバー全員が問題解決能力を磨き、新しいアイデアや解決に向けた行動力を身に付けることが必要なのです。
また、企業が成長するためには、常に環境の変化に対応することが求められます。変化の激しいビジネスの環境に対応して競争力を高めるためには、適応能力を身に付けることが必要不可欠です。チームコーチングでは、チームが変化を理解し、それに対応して前進していく力を獲得するための支援をします。
チームコーチングと他の手法との関係性や違い
組織開発による成果拡大の取り組みには、チームコーチング以外にも次のような手法があります。
●チームビルディング
●一般的な研修
●コンサルティング
それぞれ違いはあるものの、お互いに関連する手法です。
チームコーチングとチームビルディングの関係
チームビルディングは、メンバーが個々のスキルや能力を最大限に発揮し、組織のパフォーマンス向上させ、目標を達成できるチームを作り上げていくための取り組みのことです。チームビルディングは、チームコーチングのための方法の一つであり、チームコーチングの目的を達成するために必要なプロセスといえるでしょう。チームビルディングでは、メンバー同士のコミュニケーションの活性化や、チームに一体感を出す取り組みが行われます。
チームビルディングの手法の代表的なものとして、コミュニケーションを取ることでメンバー同士の緊張感を和らげる「アイスブレーク」や、自己紹介に嘘を含め、それを見破る「ウソ?ホント?ゲーム」などが挙げられます。チームビルディングでは、ビジョンの浸透や心理的安全性の確保、人間関係の構築、エンゲージメントの向上などが期待できます。
チームコーチングと一般的な研修の違い
一般的な研修は、能力・スキルアップのために知識、理論、情報等を使って個人の学びに繋げます。研修動画の活用や演習による体験、ロールプレイ実習を活用して学びを深めることも行います。このような場において、受講者のプロセスの変化が学習効果を促進することは多々あります。さらにプロセスの変化や気づきから感情が動くこともあり、PHPゼミナールでは受講者に感動を与える研修を目指しています。
個人の学びを目標とする一般的な研修は、チーム全体の成長と目標の達成を到達点とするチームコーチングとは異なります。
チームコーチングとコンサルティングの違い
コンサルティングは、その分野に精通したコンサルタントによって具体的な施策を提案されるものです。チームコーチやメンバーが自ら施策を練り、具現化していくチームコーチングとは大きく異なります。
コンサルティングでは自社の現状把握や分析、課題の洗い出し、解決策の考案までをコンサルタントに委ねることが可能です。自社で取り組む業務は簡略できますが、社内メンバーの腹落ちが十分でない場合には、課題解決に繋がらないことも懸念されるでしょう。
チームコーチングのメリットと注意点
チームコーチングのメリットや注意点について解説します。それぞれのポイントを理解することで、より効果的にパフォーマンスを向上させたり、事前に策を考えて失敗を回避したりできるでしょう。
チームコーチングのメリット
チームコーチングの大きなメリットとして、チーム全体のパフォーマンスが向上することが挙げられます。個々のメンバーが目標を明確化し、自身の行動や考え方を分析し、見直すことで実現に向けた取り組みを行うためです。課題解決に向けて試行錯誤することで、新たな視点の醸成やアイデアの発案にもつながるでしょう。それによってチームのメンバー一人ひとりの主体性や自発性が磨かれ、結果チーム全体のパフォーマンス向上に繋がるのです。
さらに、チーム内のコミュニケーション不足が改善するメリットもあります。チームコーチングでは多くのコミュニケーションが発生し、会話のスキルが身に付くためです。会話のスキルが上がれば意見のすれ違いが減り、メンバー同士の信頼関係を築きやすくなります。コミュニケーションが円滑になることで、現場の判断もスピーディーに下すことが可能になり、生産性の向上が期待できるでしょう。
チームコーチングの注意点
チームコーチングの効果を感じられるまでには、一定の時間を要します。問いかけや対話を通じ、それぞれの気づきや発見に重点を置きながら進める心理的な要素が多いためです。それも1回や2回ではなく、繰り返しコーチングを行う必要があり、根気と時間が必要になります。
効果が出るまでには、チームメンバー全員が一定のコミットを保ち続ける必要があります。定期的に目標や進捗状況を共有するなど、チームメンバーがモチベーションを維持できるような工夫が必要です。
チームコーチングの流れ
チームコーチングは以下の流れで進めます。それぞれについて詳しく解説していきます。
●チーム課題を明確化する
●コーチングの方向性を決定する
●コーチングを実施する
●成果の評価と改善を行う
1.チーム課題を明確化する
チームコーチングでは、はじめにチームの課題を明確化します。メンバーの特性や習熟レベルなど、チームの現状を多面的に分析したうえで、必要に応じてアンケートやヒアリングを実施するなどして、社員の意見や情報を収集することも効果的です。
十分な情報収集ができたら、チームの抱える問題点や課題を洗い出しましょう。チーム課題が明確化されることで、組織の成長につながる目標や目指すべきゴールが明らかになります。
2.コーチングの方向性を決定する
次に、明確になった課題をもとにコーチングの方向性を決定します。課題解決や目標の達成につながる、戦略的かつ具体的な内容を計画しましょう。課題を解決するには何をするべきか、目標を達成するためには何を改善する必要があるかなど、チームメンバーがイメージしやすい内容であることが大切です。
コーチングの目的を見失うと、効果が出るまでに膨大な時間を要したり、効果を得られなかったりするなどのリスクがあります。コーチングを成功させるためには、チームの状況に合った方向性の設定が必要不可欠です。
3.チームコーチングを実施する
方向性が決定したら、チームコーチングを実施しましょう。チームコーチでは、定期的にメンバーに対してコーチングを行います。メンバーはそれぞれ、自分の行動と結果について振り返って分析し、行動を改善していくことが必要です。
チームコーチはメンバーの成長を促しますが、それぞれのメンバーはコーチ頼りではなく、自分たちで組織の現状や課題を明確にしなければいけません。目標達成に向けた戦略を策定したら、期間を決めてメンバー全員で行動を起こし、自発的に取り組むことが大切です。
4.成果の評価と改善を行う
チームコーチングの実施後は、コーチングの成果を評価するとともに改善点を確認し、次回の計画へとつなげる必要があります。振り返ることで、チームの成長や次回に向けた改善点が明確になり、コーチングの精度がさらに上がるのです。成果を測定する方法として、5W1HやMECEなどのフレームワークが活用できます。
メンバーの成長を踏まえて新たな目標を設定すれば、さらなるコーチングの効果が実感できるでしょう。このような手順を継続していくことが、チームで目標の達成に近づいていくことに繋がります。
チームコーチングに関連する手法
チームコーチングに関連する手法には、以下のものがあります。
●パーソナルコーチング
●チーム開発
●ファシリテーション
●プロセスコンサルテーション
チームコーチングの効果をより高めるためには、それぞれの手法を理解し、目的や状況に応じて並行して取り組んだり、使い分けたりすることが大切です。
パーソナルコーチング
パーソナルコーチングとは、個人を対象に、仕事や人生、プライベート上のさまざまな問題に着目し、自主的な目的の達成や理想の実現を支援するコーチングです。コーチと1対1で個人の事情や理想像などに沿った対話になるため、パーソナルコーチングと呼ばれます。
チームコーチングの中には、個々に対するパーソナルコーチングが含まれることがあるのを覚えておきましょう。
チーム開発
チーム開発とは、複数のメンバーが一つの商品やプログラムの開発に取り組むことです。個人で開発する場合に比べて技術の幅が広がる一方、チーム内での円滑なコミュニケーションが必須になります。メンバーそれぞれのスキルや特性を活かしたり意見を出し合ったりすることで、チーム開発の成功につながります。
人材開発の分野ではないものの、チームで1つの目標に向かって試行錯誤して取り組む点では、チームコーチングと似ているともいえるでしょう。
ファシリテーション
ファシリテーションは、会議やミーティングを円滑に進める技法のことです。会議を進行するだけではなく、参加者から話を引き出し、話を広げながらも意見を整理して重要なポイントをまとめていくスキルで、昨今、人材開発分野で大きな注目を集めています。
参加者の理解が深まりやすいため会議の生産性が向上したり、発言しやすい環境で新しいアイデアを発案できたりするなどのメリットがあります。
プロセスコンサルテーション
プロセスコンサルテーションとは、組織が自発的に改善できるよう、クライアント自らが問題を理解して診断や解決策の考案、実行することを支援するコンサルティング手法です。
外部のノウハウやスキルを使った指導ではなく、組織独自のプロセスに則った改善策を見出すという特徴があります。クライアント自身が考案するため、組織の持続的な改善や成長が期待できます。
まとめ:チームコーチングを通し課題解決を目指そう
チームコーチングは、メンバー全体のパフォーマンスを最大化し、組織の目標を実現するために効果的な手法です。個々が自分の思考や行動についての内省をもとに改善を繰り返すことで、問題解決能力や変化への適応能力を向上させることにつながります。
チームコーチングには一定の時間が必要であることから、成功させるためには、目標を明確にし、チームメンバーのモチベーションを維持することが大切です。