人的資本の情報開示~義務化の内容と19項目をわかりやすく解説
2023年5月 2日更新
2023年3月の決算期より、対象企業は人的資本の情報開示が義務付けられました。現時点では人的資本の情報開示を義務付けられるのは一部の企業に限られますが、世界的規模ですすむ「人的資本経営」の流れをふまえ、自社の戦略人事をすすめていくことは、企業経営者、人事部門における重要課題と言えるでしょう。
そこで、人的資本情報開示の動向や開示が求められる19項目、おさえるべきポイントについて確認しておきましょう。
INDEX
人的資本とは?人的資源との違い
「人的資本」とは、「人」が持つ能力や技能、資格など、生産力や経済活動に価値をもたらすものを「資本」とみなす考え方をいいます。従来は、モノやカネのような有形資産が企業の市場価値を構成すると認識されていました。 しかし、近年は無形資産こそが企業の価値や競争力を左右すると考えられています。世界的にも無形資産が重要視されており、ある調査によると米国では企業価値に占める無形資産の割合が年々増加していることが明らかになりました。数多くある無形資産のなかでも、特に「人」の重要性が注目されています。
これまでは「人的資源」(human resources)という考え方が一般的でした。「人」は資源として消費されるものであり、できる限り少ない人数でコストを抑えて業績を上げるのが効率的であるとの考え方です。しかし最近は「人的資本」(human capiral)という考え方が主流になっています。人材は資本であり、企業の成長発展に欠かせない存在と考えるようになったのです。
資源であるならば消費してしまえばおしまいですが、資本であればば投資した分のリターンを得ることができます。人を資源・コストとしてみるのではなく、組織に競争力とイノベーションをもたらす資本と考え、積極的に投資をしていこうという企業が世界的に増えているのです。
国内における人的資本の情報開示の動向
2020年、米国証券取引委員会が上場企業に対して、人的資本に関する情報開示を義務付けました。日本でも、2020年頃から人的資本の情報開示における動きが進んでいます。国内における情報開示の流れをおさえていくと、「人的資本経営」の本質を理解することができます。まずはそこを確認していきましょう。
2020年「人材版伊藤レポート」公開
日本で人的資本の情報開示に注目が集まるきっかけになったのが、2020年に公開された「人材版伊藤レポート」です。経済産業省が実施した「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」の最終報告書として公開されました。
人材版伊藤レポートでは、グローバル化・デジタル化・少子高齢化・コロナ禍の環境変化に対し、経営戦略と人材戦略の課題が直結する時代であることが述べられています。2022年には、経営戦略と連動した人材戦略の実現を目指す「人材版伊藤レポート2.0」も公開されました。
※参考:経済産業省│持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書 ~人材版伊藤レポート
※参考:経済産業省│「人材版伊藤レポート2.0」を取りまとめました
2021年「コーポレートガバナンス・コード」改定案の策定
2021年、東京証券取引所におけるコーポレートガバナンスコードの改定により、以下2点の人的資本における情報開示の義務化が明記されました。
取締役会の機能発揮
企業の中核人材の多様性の確保
取締役会の機能発揮では、プライム市場上場企業において独立社外取締役を3分の1以上選任、指名委員会・報酬委員会の設置、各取締役のスキルとの対応関係の公表について記載されています。企業の中核人材の多様性の確保に関しては、多様性の確保に向けた人材育成方針や社内環境整備方針の公表、管理職の多様性確保、測定可能な自主目標設定が明記されました。
※参考:日本取引所グループ│改訂コーポレートガバナンス・コードの公表
2021年「非財務情報の開示指針研究会」スタート
2021年6月には、経済産業省による「非財務情報の開示指針研究会」が発足されました。非財務情報の開示指針研究会は、日本の立場を明確にし、非財務情報開示に関する国際的評価を高めることを目的として設置された研究会です。具体的には、気候変動と人的資本を中心に議論されています。同年11月には、研究会での議論をまとめた中間報告書が発表されました。非財務情報に関しては、IFRS財団が国際サステナビリティ基準審議会の設立を表明するなど、国際的な動きが加速しているのが現状です。中間報告書では、サステナビリティ関連情報開示を実現するために情報の作成者、または利用者が意識すべきポイントが明記されています。
※参考:経済産業省│「非財務情報の開示指針研究会」中間報告を取りまとめました
2022年「非財務情報可視化研究会」スタート
2021年に、岸田首相が所信表明演説で人的資本開示について言及しました。これを受けて、2022年2月から内閣官房内で「非財務情報可視化研究会」が定期開催されています。非財務情報可視化研究会では、非財務情報の開示ルール策定や開示の必要性、指針などを中心に議論されていることが公表されました。
2022年6月に開催された研究会では、人的資本の可視化の方法や可視化に向けたステップに関する議論がおこなわれています。このような政府の動きは、2020年から21年にかけてアメリカ証券市場でおこなわれた動きを真似たものであり、日本においても人的資本開示の義務化は避けられないと考えられていました。
2023年「有価証券報告書における情報開示」義務化
2023年に入ると、人的資本の開示義務化に向けて一部の企業で情報開示が求められました。有価証券報告書を発行する大手企業4,000社に対し、2023年3月の期決算以降の有価証券報告書に人材投資額や社員満足度の記載を義務付けたのです。この金融庁の発表により、3月期決算の上場企業は早急な対応が求められました。
有価証券報告書は金融商品取引法に基づく法定開示であり、虚偽記載をすれば罰則の対象となります。しかし現時点では、人的資本に関する将来の記述においては、記載内容と実際の結果に差異があっても虚偽記載には問われず、企業側の開示姿勢が萎縮しないように配慮されています。
※参考:金融庁│有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項及び有価証券報告書レビューの実施について(令和5年度)
人的資本の情報開示が求められる4つの理由
国内で人的資本の情報開示への意識が高まるのには、さまざまな理由が考えられます。人的資本の情報開示が求められる理由を確認していきましょう。
人的資本の価値の向上
人的資本の情報開示が求められる理由には、人的資本の価値の向上が挙げられます。従来、企業における市場価値は、モノやカネといった有形資産が重要視されていました。しかし近年は、市場価値の構成要素が有形資産から無形資産へと移行しています。
米国で実施された調査によると、企業価値に占める無形資産の割合が年々増加していることが明らかになりました。人が持つ能力や資格、技能などが企業の価値や競争力につながると考えられています。こうした考え方の変化により、人的資本における情報開示の重要性が高まっているのです。
欧米の報開示義務化の流れ
欧米では、人的資本の情報開示義務化が進んでいます。特に欧州は環境問題やサスティナビリティへの関心が高く、米国よりも早く人的資本の情報開示における議論を進めてきました。一方の米国は、2008年に起きた連鎖的な世界金融危機であるリーマンショックをきっかけに、人的資本における情報開示義務化の流れが進んでいます。
情報開示への議論が進むなか、欧州で本格的に義務化されたのは2014年です。欧州委員会が社会・従業員を含む情報開示を義務付けました。米国で情報開示が義務化されたのは、2020年です。上場企業に対して人的資本の情報開示を義務化しています。人的資本の情報開示が世界的な主流となり、それを受けて日本でも意識が高まったのです。
ESG投資への関心の高まり
ESG投資における関心の高まりも、人的資本の情報開示が求められる理由に挙げられます。ESG投資とは、環境・社会・ガバナンスを考慮した投資のことです。環境や社会に配慮した事業を展開するだけではなく、ガバナンスにも優れた企業は、ESG課題の解決といった社会の要請に応える製品を提供できます。
こうした取り組みが、企業価値の向上につながると考えられているのです。また、ESG投資においてヒトは社会に関連すると位置づけられ、企業に投資する際の判断材料となります。このようなESG投資の考え方を受けて、国内でも人的資本の価値向上が注目されているのです。
ISO30414の公開
欧米で人的資本の情報開示が進んだ理由には、ISO30414の公開があります。ISO30414とは、人的資本開示における国際的ガイドラインのことです。2018年12月、スイスのジュネーブを拠点に活動する国際標準化機構が発表しました。
ISO30414は、組織における人的資本の貢献を考察し、透明性を高めるために制定されています。ガイドラインでは組織文化やダイバーシティ、後継者計画、労働力など全11領域に関する指標が定められました。
ISO30414の目的と11領域
ISO30414の目的は、人的資本の情報を投資家やステークホルダーなどに開示して、企業の持続的な経営と成長を促すことです。ISO30414で設けられたガイドラインには、人的資本状況を定量的かつ定性的に開示するための指標が定められています。
情報開示により、投資家やステークホルダーは、組織における人的資本の貢献度や投資対効果を判断することが可能になりました。企業も情報をまとめることで人的資本状況を可視化できるため、経営戦略に沿った人材戦略の見直しをおこなえます。
ISO30414のガイドラインで定められている人的資本の開示項目は、次のとおりです
- コンプライアンスと倫理:コンプライアンスを問う指標
- コスト:採用や離職に伴うコストを問う指標
- 多様性:ダイバーシティ経営を問う指標
- リーダーシップ:管理職への信頼度を問う指標
- 組織文化:定着率や従業員エンゲージメントを問う指標
- 健康・安全・福利:健康・安全に配慮しているかを問う指標
- 生産性:生産性や従業員一人ひとりの貢献度を問う指標
- 採用・異動・離職:適切な人的資本を提供しているかを問う指標
- スキルと能力:従業員一人ひとりの質や内容を問う指標
- 後継者計画:承継候補者が育成されているかを示す指標
- 労働力:従業員数や雇用形態別の割合などを問う指標
※参考:人的資源管理 -- 社内外の人的資本報告に関するガイドライン
情報開示が求められる人的資本「7分野19項目」とは
2022年、内閣官房内で定期開催されている非財務情報可視化研究会から「人的資本可視化指針」が発表されました。国際標準化機構や米証券取引委員会などの指針を踏まえ、推奨する開示項目を挙げています。人的資本可視化指針で開示が推奨されているのは、7分野19項目です。
これらのなかから企業は自社の戦略にあう項目を選択し、情報開示するといった方向で議論が進められています。また、情報開示はガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標の4つの要素を踏まえておこなうと効果的かつ効率的です。これらの4つの要素は、内閣官房より発表された人的資本可視化指針で言及されています。
ここからは、情報開示が推奨される7分野19項目を詳しく確認していきましょう。
人材育成
情報開示が推奨される項目は、リーダーシップ・育成・スキル・経験です。これらの人材育成の現状に加えて、優秀な人材を中長期的に維持するためのシステム整備についての情報も含まれます。
たとえば、従業員が受講した研修の平均時間や常勤換算当たりの平均研修費用、定期的なレビューを受けている従業員の割合などです。ほかにも、研修と人材開発の効果やプログラムの種類、研修の参加率や受講率、人材定着の取り組みなどがあります。
※参考:ピープルマネジメントとは? 人的資本経営を成功させるための課題
多様性
情報開示が推奨される項目は、ダイバシティ・非差別・育児休業です。具体的には性別や部署、人種ごとの従業員比率、育休や産休の取得率などに関する項目が含まれます。また、多様なアイデンティティや異なる背景を持つ従業員を受け入れるための環境整備についての情報開示も必要です。
たとえば従業員別区分の年齢層や性別など、多様性の指標から見た雇用割合、フルタイム従業員の基本給や報酬の男女別平均給与格差などがあります。ほかにも、経営層の男女比率や正社員・非正規社員等の福利厚生の差、育児休業等の後の復職率などの情報開示も必要です。
健康・安全
情報開示が推奨される項目は、精神的健康・身体的健康・安全です。具体的には、従業員の労働災害発生率や欠勤率などで、企業が健康面や安全面にどれだけ配慮しているかを情報開示します。これらの情報は、投資家やステークホルダーが企業を評価するうえで重要な指標になる項目であるため、情報開示の内容を考慮することが必要です。
開示事項の例として、業務以外で従業員の医療やヘルスケアサービスの利用を適切に促進しているかを説明します。ほかにも、健康・安全に関する企業独自の取り組みや労働災害関連の死亡率、安全衛生マネジメントシステムなどの導入有無といった情報開示が必要です。
労働慣行
情報開示が推奨される項目は、労働慣行・児童労働・強制労働・賃金の公正性・福利厚生・組合との関係です。具体的には、賃金の男女比や福利厚生の種類、労働に関連するコンプライアンス違反の有無などに関する情報開示をおこないます。
開示事項の例としては、平均時給や最低賃金における地域別の平均時給、または最低賃金を得ている店舗従業員の割合などです。ほかにも、児童労働・強制労働に関する説明や、団体労働協約の対象者割合などの情報開示が労働慣行の例として挙げられます。
従業員エンゲージメント
従業員エンゲージメントで情報開示が推奨される項目は、従業員満足度です。福利厚生やマネジメントや職場環境、働きがいなどに関する従業員の満足度を表す指標を指します。労働環境や待遇、働き方など、従業員の満足度を情報開示することが必要です。
たとえば、従業員エンゲージメントの管理指標には、エンゲージメント・従業員満足度・コミットメントがあります。この管理指標を軸に従業員がどれだけ労働環境や働き方、仕事内容に満足し、やりがいを持って働いているかを示すことが必要です。
流動性
流動性において情報開示が推奨される項目は、採用・維持・後継者育成です。具体的には、適切な人材確保や定着がおこなえているのか、また採用コストや離職率などを情報開示します。たとえば、離職率の開示項目は年齢層や性別による従業員の離職の比率です。
採用や離職コストにおいては、従業員1人あたりにかかる採用・離職コストを情報開示します。ほかにも、従業員の定着率や人材を確保・定着させるための取り組み、後継者の有効率や準備率、採用充足に要する期間などを情報開示することが必要です。
コンプライアンス
コンプライアンスにおいて情報開示が推奨される項目は、法令遵守です。具体的には、企業運営をおこなううえで、法律を守れているかを報告します。また法令遵守のみならず、社会的な規範・倫理観に則した経営活動ができるかも情報開示することが必要です。
開示事項の例としては、労働力に関係する深刻な人権問題や報告された事件数、コンプライアンスや人権等の研修を受けた従業員割合などを情報開示します。ほかにも、人権問題に関する対応措置やコンプライアンス関連の説明、業務停止や苦情件数、罰金の金額などを情報開示する場合があります。
人的資本を情報開示する際におさえるべきポイント
人的資本の情報開示は、単に数値を報告するだけではありません。情報を開示するうえで、企業の価値向上や社内外への見られ方を踏まえて準備を進めることが必要です。人的資本の情報開示でおさえておくべきポイントには、次のようなものがあります。
- 開示する情報を収集して可視化する
- 数値ではなくストーリーを開示する
- 他社との差別化や優位性を考慮する
まずは、開示が求められている情報を収集して可視化しましょう。特に施策で得られた成果は、できる限り数値化して人的資本情報に具体性を持たせることが大切です。開示情報は、投資家やステークホルダーも注目しています。どのような情報を求めているのか、投資家やステークホルダーのニーズを踏まえたうえで情報を開示することが重要です。
また、投資家やステークホルダーは、人的資本に関する数値的な情報だけがほしいわけではありません。現状を踏まえたうえで、今後人的資本価値を高めるための施策や戦略を検討しているのか、それらを経てどのような成果を得られるのかを知りたいと考えています。現状の数値を開示するだけでは不十分です。現状から成果を得るまでの道筋にストーリー性を持たせましょう。
人的資本において、どのような情報を開示するかは企業に委ねられています。しかし、すべての情報を開示して企業価値が低下したり、社内外への見られ方が悪くなったりすると意味がありません。情報開示は、他社との差別化や優位性を考慮することが大切です。たとえば、女性活躍推進や働き方改革などの社会的に興味関心が高い項目を開示しないと、情報開示していないこと自体がリスクになる可能性があります。
人的資本の情報開示への対応法
人的資本の情報開示は企業によって手順が変わるため、事前に確認しておくことが大切です。これから情報開示する企業や、すでに情報を開示した企業に向けて一般的な流れを解説します。
これから情報開示に向けて動く企業
はじめて人的資本の情報開示をおこなう企業の場合は、以下の手順で準備を進めていきます。
- 情報可視化に向けた体制を整える
- 情報開示における目標を設定する
- 現状とのギャップを埋める施策を実施する
- 実施した施策の検証を繰り返す
人的資本の情報開示にあたって情報を可視化するための体制を整えましょう。情報可視化に向けた体制とは、データの計測環境を整備することです。データを計測できる環境が整備されていないと、人的資本における正確な情報を把握できません。たとえば、組織の状態を可視化できる診断ツールや総務・人事向けツールの導入を検討しましょう。
人的資本の情報を収集できたならば、次は情報開示における目標を設定します。自社が目指すべきビジョンを明確にし、それに見合う重要業績評価指標も考えましょう。重要業績評価指標はKPIと呼ばれ、目標達成の過程における達成度を観測する指標です。適切なKPIを定めれば、目標達成まで進められます。
最終目標やKPIを設定したならば、現状と理想のギャップを可視化しましょう。可視化した現状を踏まえ、理想とのギャップを埋められる施策を講じます。施策を講じたのちには必ず検証し、内容を改善したうえで繰り返し実施することが大切です。時間はかかりますが、説得力のある情報を開示できます。
すでに情報開示を行っている企業
すでに人的資本の情報開示をはじめている企業は、情報開示する目的を改めて意識しましょう。人的資本の情報開示は、ステークホルダーの要望を汲み取れる良い機会です。情報開示においてステークホルダーからのフィードバックがあれば、積極的に施策に取り入れ、実際に検証することが重要です。
必要であれば新しい指標を掲げ、それを達成できる施策を講じましょう。施策に対して成果が出れば、積極的に情報を公開することも大切です。情報を隠さずに積極的に開示すればステークホルダーの信頼を獲得できるため、深い関係を構築できます。施策内容もブラッシュアップできるため、ステークホルダーとの対話を大切にしましょう。
※参考:人的資本の価値を高めるには~定量的アプローチと定性的アプローチ
人的資本の情報開示事例
これから人的資本の情報開示をおこなう場合、企業事例を参考にするのがおすすめです。実際に人的資本の情報開示を実施した企業事例を確認していきましょう。
オムロン株式会社
オムロン株式会社は、多様な個性やスキルを持つ人財が活躍し、働きがいや充実感を得ながら新たな価値創造に邁進できる取り組みを実施しています。この取り組みの支柱になるのが、「企業理念の実践の拡大」「多様で多才な人財の活躍」「リーダーの育成と登用」です。
これら3つの柱を軸にさまざまな施策と連動させ、従業員一人ひとりが高いパフォーマンスを発揮できる組織風土づくりに注力しました。そうしたオムロン株式会社では、自社の課題と状況をモニタリングし、環境改善を図る取り組みを開示しています。
※参考:オムロン株式会社「企業理念経営を支える人財マネジメント」
旭化成株式会社
旭化成株式会社では、1970年から環境安全・品質保証活動のために経営資源を投入したり、環境保全のためのコストを把握したりなど、サスティナビリティに関する取り組みを実施しています。
また、サスティナビリティ基本方針として、「持続可能な社会への貢献」と「持続的な企業価値向上」の好循環を挙げているのも特徴です。情報開示でサスティナビリティの取り組みを強調したい場合は、旭化成株式会社の事例を参考にしましょう。
※参考:旭化成株式会社「ESGデータ」
第一生命ホールディングス株式会社
第一生命ホールディングス株式会社では、すべての人々のwell-being実現に貢献するために、50種類の社会課題を選出して重点的に取り組んでいます。この取り組みは中期経営計画「Re-connect 2023」の事業戦略に反映されており、人的資本を経営資源のひとつとして明確に示しているのです。
また、サスティナビリティも追求しており、目標や実施した取り組みはレポートして公開されています。ESG投資をはじめとする指標も積極的に公開し、情報の透明性を確保しているのも特徴です。
※参考:第一生命ホールディングス株式会社「第一生命グループ」
まとめ:人的資本の価値を高める計画策定を
欧米を中心に義務化が進む人的資本の情報開示ですが、近年は日本でも一部の企業に対して情報の開示が求められるようになりました。今後は、すべての企業を対象にした情報開示の義務化が本格的に導入される可能性があります。
しかし、人的資本の情報開示にはすぐに対応できるわけではありません。柔軟に対応できるように情報開示への理解を深め、人的資本の価値を高めておくことが大切です。
eBook「HR責任者のための 人的資本経営完全ガイド」無料配布中
人的資本経営を推進するために、具体的にどのように取り組んでいけばいいのでしょうか。HR責任者の皆様向けに、eBookをご用意しました。 本ガイドでは、PHP研究所創設者・松下幸之助の人間観をもとに、人的資本経営の本質を明らかにすると同時に、成功するための具体的な取り組みを解説します。