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OJT担当者に向いていない人とは? 不向きと感じる原因や適性をのばす方法を紹介

2022年12月23日更新

OJT担当者に向いていない人とは? 不向きと感じる原因や適性をのばす方法を紹介

人材育成の施策のなかで、OJTを特に強化している企業が増えています。ところが、担当する上司・先輩のなかには「自分はOJTに向いていない」と感じる人が増えているといいます。本記事では不向きと感じる原因や適性を伸ばす方法、身に付けておくべきスキルや考え方、人事教育部門でとるべき施策や支援体制づくりについてご紹介します。

INDEX

OJTが向いてないと感じる人は多い。その原因とは?

OJTは、実際に業務を行いながら、主に新入社員や若手社員を指導育成する方法で、特に業務上必要とされる知識やスキルを身に付けて職場の戦力として働いてもらうためには効果的です。ただ、職場の上司や先輩社員が担当することが多く、担当者の指導力によって、教育効果に差が出るというデメリットがあります。

また、指導にあたる上司や先輩社員のなかには、自分がOJTの担当に向いていないと感じている人も少なくありません。その原因を考えてみましょう。

関連記事:PHP人材開発「OJTとは? 人材育成における意味や目的、可能性を解説」

上司・先輩(OJT担当者)がOJTの意義や指導内容を正しく理解していない

指導の担当者がOJTに向いていないと感じる理由は、OJTの意義や指導内容について正しく理解していないことがあげられます。
OJTはただ業務のやり方を教えるだけでなく、新入社員を企業にふさわしい人材として育成する目的があります。そうした企業内での位置づけや、期待する成果を理解していないために、ただでさえ忙しい日常業務のなかで、部下・後輩へのOJTに時間をとられることが煩わしく感じることもあるかもしれません。

担当する部下・後輩との相性が悪い

担当する部下・後輩との相性が悪いために、OJTに積極的に取り組めないというケースもあります。
OJTは、部下・後輩とのコミュニケーションを通して信頼関係を築きながら育成することが肝心です。
しかし、例えば、相談する前に自己判断で行動するタイプの部下・後輩と、細かいプロセスも管理したい担当者との組み合わせは、どちらにもストレスがかかるでしょう。これを改善できないと、OJTの効果が十分に得られないばかりでなく、職場の雰囲気が悪くなる場合もあります。

上司・先輩(OJT担当者)への教育・研修が不十分

OJTは、同じ職場で働く上司や先輩が担当するケースが多いでしょう。担当者は「仕事ができる人」という理由で選ばれるかもしれません。しかし、仕事ができるから指導もうまいとは限らず、会社側から育成方針や心構え、指導方法について教育・研修を行っておくことが望ましいでしょう。
会社として十分な対応をしないままOJTを実施すれば、成長レベルにも差がでてしまいます。最悪の場合、放置してモチベーションを損ない、早期離職につながるといった事態も起こり得ます。

上司に新人を教育する気がない

人事教育部門がOJTの体制を整備することで、ある程度、「OJTに向いていない人」を減らすことができます。しかし、それでも、本人に適性がないケースがあることも確かです。
たとえば、以下のような人があげられます。
●新人を教育する気がない
●自分のやり方を押し付ける
●背中を見て学べの精神を通す
上司や先輩の中には、部下や後輩が成果を出すことを認めたくない人もいます。組織としては人材の成長が第一ですが、それに反して「自分より成果を上げられては立場がなくなる」と感じ、成長を阻もうとする人も存在します。このような人がOJTの担当になると、マイナスの結果しか生まれないでしょう。
また、どれだけ体制が整備されていても、自分自身の基準を通してしまう人はOJTに向いていません。自分の経験や強みなどが前提となり、それに外れると「こんなこともできない」と判断するような人です。新人ごとの特性に合わせ、柔軟な指導ができなければなりません。
さらに、「仕事は上司の背中を見て学ぶべき」という精神が強すぎる人も、OJTには不向きです。OJTではしっかりと業務の手順を説明し、実践しながらフィードバックすることが成長のために欠かせません。

世代による価値観の違いに配慮できていない

世代の違いに配慮できないと、効果的なOJTはできません。担当者と新入社員の年齢が離れている場合、仕事に対する価値観や考え方が大きく違ってくる可能性があります。
特に「デジタルネイティブ」と呼ばれる世代の新入社員は、年代の離れた上司・先輩と適切なコミュニケーションが取れない人が少なくないとも言われます。新入社員のOJTについては、できれば世代が近い人材を担当にすることも検討が必要です。

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OJTに向いてないと感じる人でも、適性は身につけられる

自分はOJTに向いていないと思っている人も、OJTについて学ぶことによって対応できるようになるケースは少なくありません。後発的に適性を身に付けられる可能性はあります。教える側を育成する「OJT担当者研修」「OJTトレーナー養成研修」を実施するなど、人事教育部門の取り組みで、OJTを成功に導く体制を強化しましょう。

OJTを担当する人、つまり教える側の上司・先輩を教育するポイントは以下の2点です。
●指導者としての心構えを持つ
●指導スキルを身につける

OJT担当者はただ仕事を教えるのではなく、指導者としての責任があることを自覚する必要があります。 組織として人材育成に取り組むという人事施策の趣旨や、担うべき役割を理解してもらわなければなりません。
また、指導内容のばらつきを抑えるためにも、担当者にはトレーナーとしてのスキルを備えることが求められます。

トレーナーとして必要とされるスキルとして、以下の5つがあげられます。

●コミュニケーション力
●目標設定
●フィードバック
●ティーチング
●コーチング

これらのスキルを身につけるには、研修の実施が必要です。OJT実施の教育体制を整備する一環として、OJT担当向けの研修は必須といえるでしょう。

日本では61.8%の事業所がOJTを実施している

厚生労働省が実施した令和3年度調査において、常用労働者30人以上を雇用している事業所のうち、61.8%の事業所が計画的なOJTを実施していると回答しています。企業規模別にみると、「1,000人以上」の企業のうち82.4%が正社員に対するOJTを行っており、規模が大きくなるほど実施率は高いという結果が出ています。

労働環境の変化や「働き方改革」の推進によって、個人のワークスタイルの選択肢が広がりました。働く人にとってのメリットは大きいものの、組織に遠心力が働き、個人と組織がバラバラになるリスクもはらんでいます。こうした問題を解決するために、OJTを強化する企業が増えているといえるでしょう。

参考:厚生労働省「令和3年度 能力開発基本調査」

OJTを成功させている日本企業の事例

OJTで人材育成に成功している企業は数多くあります。成功事例を見て自社の人事施策の参考にするのもひとつの方法です。
なかでも、OJTを「人づくり」の一環として重視し、長期計画で人材を育成している三菱電機ビルソリューションズ株式会社や、正社員からアルバイトまでOJTを実施するスターバックスコーヒージャパンの事例が参考になります。

OJTとフォローアップにより優秀な人材を育成する三菱電機ビルソリューションズ

三菱電機ビルソリューションズ株式会社(旧社名:三菱電機ビルテクノサービス株式会社)は、エレベーターやエスカレーターで日本国内トップシェアを誇る会社です。人材育成を「人づくり」と捉え、OJTを取り入れた教育手法で新人教育に成功しています。
技術職では、およそ3カ月の寮生活で入社時研修が行われ、現場から集められた「ビッグブラザー(BB)」と呼ばれる先輩社員が研修の講師を務めながら生活面も指導します。
OJTにおいては「育成責任者」と、実際に指導する「OJTトレーナー」を選任し、育成計画を立てて履修項目の進捗管理をしながら計画的に進めていくという体制です。技術系は5年、事務系は3年で一人前にするという長期スパンで、その間にも定期的に集合研修を行います。OJTとOff-JTを連動させることで、育成レベルのばらつきを抑える手法も注目です。

東京にある同社の教育センターでは、年間計画に基づきさまざまな研修が開催されています。教育カリキュラムも充実しており、Off-JTで業務に必要な知識を学び、技術を習得します。さらに各職場でOJTにより業務知識・技術を学ぶという内容です。

参考:三菱電機ビルソリューションズ株式会社|教育制度

ミッションへの共鳴を目指して80時間のOJTが行われるスターバックスコーヒー

コーヒーストアの経営を行うスターバックスコーヒージャパンでは、正社員・アルバイトを問わず80時間のOJTを行います。80時間のOJTの中では、接客やコーヒーの淹れ方といった業務だけでなく、企業理念やミッション、企業の歴史についての勉強にも多くの時間が割かれています。
OJTはエンゲージメントを高める人材育成メカニズムとして、4段階に分けられているのが特徴です。

●第1段階:ミッションへの共鳴
●第2段階:ビジョニング&ロールモデル
●第3段階:コーチング&フィードバック
●第4段階:内発的動機の醸成

第1段階ではミッションに共感し、強いつながりを感じる環境に身を置きます。第2段階は店舗ごとに掲げているビジョンへの共感が問われるもので、同じ目標を目指している仲間がロールモデルとなり、目指す姿を明らかにしていきます。
第3段階では目標を達成するため努力するとともに、周りのパートナーからのコーチングやフィードバックをもらいます。第4段階は、次はこうなりたいという自分の中から湧き出す成長への意欲が自分を動かす原動力となる最終段階です。
また、OJTのサポートツールに「グリーン・エプロン・カード」があります。社員が企業の行動方針やミッションに沿った行動を見つけたら、カードに感謝の気持ちを書いて渡すという取り組みです。上司が部下に渡すだけでなく、部下が上司に渡す場合もあります。これにより、社員同士で行動を認め合う企業文化が育てられています。

参考:スターバックスコーヒージャパン

OJT教育の効果を高める方法

OJT教育の効果を高めるポイントとして、OJT担当者の育成研修や教育マニュアルの支給、業務量の調整があげられます。それぞれ、詳しくみていきましょう。

OJT担当者育成研修を実施する

初めてOJT担当者になった人には、効果的な指導スキルを習得するための育成研修を実施することがOJT成功の秘訣です。企業によっては「職場に人材育成の風土が根付くと組織力の向上につながる」という考えから、すべての社員にOJT研修を行うところもあります。
育成研修では、OJTトレーナーとしての役割を理解し、目標設定やコミュニケーション、ティーチング、コーチングといった具体的なスキルを習得します。

教育マニュアルを支給する

OJTでは、担当者の指導スキルや熱意により、成果に差が出やすいという問題があります。この課題を解決するため、会社から教育マニュアルを支給することが必要です。指導者向けの教育マニュアルの項目として、以下の内容があげられます。

●OJTの目的
●OJTの実施計画
●指導者の役割
●指導方法
●業務内容
●評価基準

基本的な事項をマニュアル化することで、担当者の負担が軽減されます。指導方法や業務内容では人によってばらつきやすい手順を統一し、担当者の能力によって効果に差が出ることを防ぎます。
評価基準は教わる側ができていること・できないことを明確にし、フィードバックするべきことやOJTの進捗状況を判断する目安になります。

上司・先輩(OJT担当者)側の業務量を調整してOJTを行う時間を確保する

OJTの担当者は自分の仕事と並行して新入社員の指導にあたります。担当者に任命される社員は新入社員の手本となるような優秀な人材が選ばれることが多く、業務を多く抱えている場合が少なくありません。
あまりに仕事が忙しいと、指導に時間をかけらず、指示だけして「放置」するという状況にもなりかねません。担当者の業務量を調整してOJTに費やす時間を確保することも考えましょう。

研修のフォローアップ期間を設ける

育成研修から数カ月後に、育成研修のフォローアップの機会を設けるのも有効です。フォローアップではOJTを実施したあとの振り返りを行い、担当者として新入社員の指導中によくできたこと・できなかったことなどを共有します。
できなかったことについては他のOJT担当者とともに「解決策」を考え、不足しているスキルや課題を抽出することも大切です。今後は何をすればよいか具体的に考え、各自が今後の目標設定を行います。
さらに新入社員のモチベーションやパフォーマンスを上げるためのスキルを学ぶようにすれば、よりOJTの効果が高まり、また、OJT担当者自身の成長にもつながるでしょう。

OJT担当者のモチベーションを高める方法

OJT担当者のモチベーションを高める方法

OJTでは、教える側(上司・先輩)のモチベーションが上がらないという問題があります。自身の業務が多忙なことに加え、評価につながらないトレーナーの仕事はやりたくないという本音があるのが実情です。モチベーションアップについては、人事教育部門で対策を講じる必要があります。

評価指標のうち「部下の目標達成」を上位に設定する

OJT担当の業務に対して具体的に評価する制度がなければ、担当者はモチベーションを発揮できません。熱意を持てず、OJTの成果にも影響するでしょう。
担当者のモチベーションが低いのは、OJTは優先度が低いという意識があるのも理由のひとつです。OJTの優先度を上げるため、人事評価の指標のなかで「部下の目標設定」を上位に設定することもモチベーションを高める方法になります。

OJT業務に対するサポート体制を整える

自らの担当業務と並行してOJTを行うことには、担当者の負担になり、悩みを抱えるケースも出てくるでしょう。 そのようなときに相談できる場を設けるなど、サポート体制の整備も求められます。

OJT担当者としての適性をのばすために個人ができること

OJTの適性をのばすため、担当者自身にできることがあります。まず、OJTの意味と目的を正しく理解することがOJTに取り組む上での前提です。さらに、以下のスキルを高めることがOJTの適性を高めるためのポイントとなります。

●ロジカルコミュニケーションスキル
●リフレクションスキル
●コーチングスキル

ロジカルコミュニケーションスキル

OJTの担当者にはコミュニケーション能力が求められますが、特に大切なのがロジカルコミュニケーションです。ロジカルコミュニケーションスキルとは、相手に伝えたいことを整理し、わかりやすく伝える話す技術を指します。具体的には、以下のような要素があります。

●情報をきちんと整理して伝える
●相手の理解に合わせて言葉を選ぶ
●伝えたいことをブレることなく説明する

自分の持っている知識を、ロジカルシンキングを基礎として、上手に伝えるコミュニケーションスキルは、OJTの場面だけでなく、プレゼンテーションなどにも活かせるでしょう。結論・理由・具体例・結論の流れで伝えるPREP(プレップ)法を意識してみるのもおすすめです。

●P:Point(結論)
●R:Reason(理由)
●E:Example(具体例)
●P:Point(結論を繰り返す)

リフレクション(内省)スキル

リフレクションスキルを身につけることも、OJT担当者としての適性をのばします。リフレクションとは内省という意味で、自分の行動を客観的に振り返ることです。
失敗や間違いを振り返る反省と異なり、良い面も悪い面も含めてフラットに振り返り、新たな気づきを得て次の行動へ活かす方法です。リフレクションを行うことで改善点を見出し、経験を成長につなげることができます。
リフレクションスキルがあるOJT担当者は自身の指導を振り返り、次の指導に活かせるのがメリットです。より効率的な指導方法や伝え方を考え、さらに良い指導ができるようになります。
さらに、リフレクションスキルにより、OJTの対象である部下・後輩にリフレクションを促すこともできます。リフレクションの習慣を身に付ければ、経験を成長につなげることができるようになります。

参考記事:PHP人材開発「経験学習モデルとは? ~D.コルブが提唱する経験を学びにする方法」

コーチングスキル

コーチングもOJTには不可欠なスキルです。コーチングとは相手の言葉に耳を傾け、質問や提案などを行いながら、相手の内面にある答えを引き出す方法です。自発的な成長を促す方法であり、OJTでも役立ちます。
OJTでは知識やスキルを指導するティーチングが中心になりますが、必要に応じてコーチングの手法を取り入れることで、新入社員の自発的な成長を促すことができるでしょう。

参考記事:PHP人材開発「ビジネスコーチングとは? その目的、メリット、求められるスキルを紹介」

まとめ:OJTの適性は教育で身に付けられる

OJTは人材育成においては、昔から行われている教育手法ですが、昨今、働く環境が変わっていくなかでエンゲジメントという面から特に注目を集めています。
OJTに苦手意識を持つ人もいますが、教育体制の整備で解決できる場合もあります。OJTトレーナーとしてのスキルを身につけるなどで適性をあげることは可能です。
人事教育部門では、トレーナー育成研修の実施や教育マニュアルの支給など、OJT成功のために実施するべきことが多いでしょう。OJTの体制を整備して、人材育成の精度を上げていきたいものです。

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