オンライン研修とeラーニングの違いとは? それぞれの特徴、メリット・デメリットも紹介
2023年4月25日更新
オンラインで行う社内研修には、オンライン研修とeラーニングがあります。両者はライブ配信かそうでないかなど、目的や特徴が異なります。導入の際には、よく違いを理解して自社に合う方法を選ぶことが必要です。本記事ではオンライン研修とeラーニングの相違点を説明し、それぞれの効果を高めるための方法をご紹介します。
オンライン研修とeラーニングはどう違う?
オンライン研修とeラーニングはどちらもオンラインで受講するという点で共通しており、ほぼ同じ意味として使われているケースもあります。しかし、一般的には別のものとして考えられていることが多く、それぞれの特徴には異なる点があります。ここでは、オンライン研修とeラーニングについて、一般的に考えられている定義、それぞれの違いをみていきましょう。
オンライン研修とは
オンライン研修とは、講師と受講者がWeb会議システムなどを使い、オンライン上でリアルタイムに行う研修のことをさすことが一般的です。あらかじめ決められた時間に接続し、ライブ形式で研修を行います。従来は会場で行っていた研修をオンラインに代えて実施するものといってよいでしょう。
オンライン研修はライブ配信のため、講師は受講者の理解度を確認しながら進めることができます。受講者同士で、グループワークやグループディスカッションを行うことも可能です。オンライン研修では双方向のコミュニケーションができるという特徴があり、受講者はわからないことを講師に質問し、その場で疑問を解消することもできます。
参考記事:オンライン研修 成果を高めるための留意点│PHP人材開発
eラーニングとは
eラーニングは、あらかじめ準備された教材コンテンツがWEBで配信され、リアルタイムの配信ではなく、受講者はいつでも好きなときにオンデマンドで受講できます。個人学習によ情報の共有、知識の習得が主な目的です。
eラーニングでは繰り返しの学習ができ、知識を確実に身につけるのに役立ちます。LMS(学習管理システム)の活用により受講の進捗状況や履歴、成績を一元管理でき、データを蓄積し教育記録として残せるのもメリットです。
オンライン研修とeラーニングの違い
オンライン研修とeラーニングは、ライブ配信かどうかという点が異なります。それにより両者は目的が異なり、どのような内容の学習に適しているかも違います。
オンライン研修の目的と適していること
リアルタイムで行うオンライン研修は、参加型の研修スタイルに向いています。働き方改革によるリモートワークの普及とともに、導入する企業が増えています。対面で行っていた研修の代わりとして行われることも多く、会場で行う研修と同じように、受講生の反応を見ながら進めることができます。また、オンライン研修では受講生同士でグループワークやディスカッションを行い、受講生同士が議論を深めて気づきを得ることもできます。リーダーシップ、問題解決力、コミュニケーションなど、いわゆる「ヒューマンスキル」を研修したい場合に向いているでしょう。
eラーニングの目的と適していること
eラーニングは、知識習得と情報共有が目的です。いつでもどこでも学習できるため、空いている時間に学習したり、苦手な部分を反復して受講したりして、知識を定着させることができます。また、忙しい社員のために学習できる環境を作り、研修の機会を増やしたいときに役立ちます。
語学学習、PCスキル、機器の操作方法や商品知識の習得などに好適なツールです。また、コンプライアンスや情報セキュリティ、すべての社員が同じ知識・情報を共有する必要がある場合にも向いているといえるでしょう。
なお、eラーニングの導入にあたっては下記の記事もご覧ください。
参考1:eラーニングとは? 導入の仕方やメリット、成功のポイントを解説
参考2:eラーニングの基礎となるLMS(学習管理システム)とは? 機能やメリット、選び方を解説
オンライン研修のメリット・デメリット
それでも、オンライン研修のメリット・デメリットを、もう少し具体的にみていきましょう。
インターネット環境があればどこでも学習できる
オンライン研修はインターネットとパソコン、Zoomなどのオンライン会議システムがあればどこにいても学習できるのがメリットです。従来の会場で行う集合研修では、会場の準備や移動にかかる時間、人件費などのコストがかかります。しかし、オンライン研修ではこのような手間やコストがかかりません。遠隔地からも参加でき、気軽に学習できるのがメリットです。最近ではオンラインに適した研修技法も開発されており、経験豊富な講師であれば従来の集合型の研修と同じか、それ以上の効果も期待できるでしょう。
リアルタイムに質問できる
オンライン研修はライブ配信で研修が行われるため、わからないことがあれば講師に質問できる点もメリットです。オンライン研修はツールによっては、チャット機能や「手を挙げる」機能などで、オフラインの研修よりも質問しやすい環境を作ることができます。オンライン研修の開始時に「チャットでも発言や質問をしてよい」というルールを設定しておくことで、会場で挙手するよりも気軽に質問ができるのも利点です。
たとえば新入社員研修の場合、大勢の前で挙手して質問するのは緊張してしまい、躊躇する場合もあるでしょう。画面を通したオンライン研修であればリラックスでき、質問もしやすくなるかもしれません。
チャットの利用で活発なコミュニケーションが促され、疑問点がすぐに解消することで理解がより深まるでしょう。チャットからは講師からのフィードバックもでき、受講者の学習への意欲も高まります。
また、投票機能で単一回答・多項目選択式の投票を作成し、受講生から回答を集めることもできます。さまざまな機能で、オンライン研修ならではの活発な双方向コミュニケーションが生まれるでしょう。
グループディスカッションができる
ライブ配信のオンライン研修では、受講者をグループ分けしたディスカッションも可能です。グループディスカッションにより、受講者同士のコミュニケーションの促進を図れます。ただし、オンラインのディスカッションでは議論をスムーズに進めるため、以下のようなルールを設定すると効果的です。
- 一回の発言に時間制限を設ける
- 最初の発言に順番をつける
- 発言したいときは画面上で見えるように手を挙げる
- 発言した人が次の発言者を指名する
オンラインは対面よりも相手の感情がわかりづらいため、いつもより表情や動きに注意するよう呼びかけるとよいでしょう。
また、以下のようなさまざまな機能を使ってオフラインと同じようなグループワークも可能になってきています。
- ロールプレイング:ブレイクアウト機能などで部屋を振り分ける
- ブレインストーミング:Googleドキュメントなど共有して書き込めるドキュメントツールを使う
- 意見交換:オンライン版のカードゲームなどを活用する
オンライン研修はまだまだ発展途上な面はあります。ただし、テレワークがすすんでいくこれからの時代を視野に入れれば、積極的に採り入れていきたいところです。最近ではオンラインならではのインストラクション技法やツール、プログラムも生まれてきていますので効果的に活用していきましょう。
オンライン研修のデメリット
オンライン研修はWebカメラやマイクが備わったパソコンなど、最低限の機能を揃えなければならなりません。機器やインターネットは通信トラブルも起こりがちで、全員が同じ環境で参加できないこともあります。通信回線が不安定で音声や映像が途切れる可能性があり、良い状態で参加できない受講生も出てくるでしょう。
質問を受け付ける環境では、積極的に発言する受講生とそうでない受講者がいるので、理解の差が発生するかもしれません。画面越しの講義では、対面よりも受講生の反応が見えにくいという講師もいます。このあたりは講師の経験がものをいう部分といえるでしょう。
また、名刺交換などの実技を伴う研修が難しいのもオンライン研修のデメリットです。
eラーニングのメリット・デメリット
つづいて、eラーニングのメリット・デメリットについて詳しくみていきましょう。
自分の都合、ペースで学習できる
eラーニングはオンデマンドな教育コンテンツなので、受講者は自分の都合が良い時間や場所で学べるのがメリットです。企業側でも研修時間や場所、講師を確保する必要なく、手間とコストを削減できます。最近はスマホやタブレットでも利用できるeラーニングが主流になっており、受講者は隙間時間を利用して効率的に学習できるのもメリットです。
スマホやパブレットを使ったeラーニングは、マイクロラーニングにも活用できます。マイクロラーニングとは、5分程度の短い時間で学習する方法で、短時間での復習を繰り返すことで学習効果を高める効果が期待できるものです。マイクロラーニングで受講することで、忙しい社員でも効率的な学習ができるでしょう。
繰り返し見ながら学習できる
eラーニングは、教育コンテンツを一時停止したり繰り返し見たり、自由な学習が可能です。わからない部分を重点的にリピートし、理解を深めることができます。リアルタイムのオンライン研修では、一度では理解できない部分があるかもしれません。しかし、eラーニングであればよくわからなかった内容を繰り返し学習し、知識を定着させることが可能です。
また、eラーニングでは全員が同じ教材を利用するので教育の質を均一に保てます。オンライン研修や対面の集合研修では、講師により研修の質が左右されることもあります。受講者の習熟、学びのペースも異なります。しかし、eラーニングであれば適切な教材コンテンツを選び、LMSで受講者の学習進捗や理解度を管理していけば、一定レベル以上の学習効果が見込めるでしょう。
企業は学習の進捗を管理できる
先にも述べましたが、eラーニングでは受講者の学習がどの程度進捗したのかを一元管理できます。また理解度を測定するためのテスト機能もありますから、効果測定も可能です。学習状況や成績を把握できれば、一人ひとりの社員に丁寧な指導、フィードバックができるでしょう。
受講者の学習データは人事評価にも活用できます。期日までに学習を終えているか、計画的に学習しているかなど、社員の成長意欲や規律性などの評価材料にすることもできます。データが蓄積されれば、従業員エンゲージメントや離職率といったデータとつきあわせてみるのもよいかもしれません。
疑問をすぐに解消できない
eラーニングのデメリットは、わからないことをすぐに解消できないことです。繰り返しの学習はできますが、講義の内容自体が理解できない場合、何度見直しても疑問は解消できません。オンライン研修であれば講師に質問し、すぐに解決できます。eラーニングで繰り返し見てもわからないことは、そのままになってしまう可能性もあります。
eラーニングのデメリット
eラーニングもオンライン研修と同様、受講者のインターネット環境の確保が必要です。
eラーニングは受講者がいつでも好きなときにできるのがメリットですが、各人のモチベーションに依存している部分もあり、学習頻度に差が出やすいのがデメリットです。「いつでもどこでもできる」というメリットは、「そのうちやればいいや」ということにもなりかねません。導入にあたっては、受講者の前向きな学習意欲を引き出す指導も大切になります。
そういう意味では、eラーニングコンテンツの選定がきわめて重要です。学習していて「すぐにあきてしまう」「つまらない」「ストレスがたまる」ようなコンテンツでは学習効果は期待できません。
なお、PHP研究所では新入社員や管理職向けの階層別に、コンプライアンスや1on1などテーマ別に、受講者の学習意欲が持続し研修効果を高めるコンテンツメニューをご用意しております。また、これまで社員研修用に制作してきたDVDの動画ファイルを社内ネットワークで配信利用できるサービスもありますので、コンテンツの準備にお困りな方はご相談ください。
まとめ:オンライン研修/eラーニングを効果的に行う方法
社内研修の効果を上げるには、オンライン研修とeラーニングの特徴を理解し、目的に合う方法を選ぶことが大切です。
オンライン研修はリアルタイムで受講生の反応を見ながら研修を進めることができます。グループディスカッション・グループワークもできます。
一方、eラーニングは情報共有と知識習得が目的です。全員が同じ知識を習得することがメインの目的であれば、eラーニングの方が効率的です。
そういう意味ではオンライン研修や集合研修でモチベーションを上げたり、問題意識を高めたうえで、eラーニングで情報や知識、スキルを個人のペースで学習してもらうというような「ハイブリッド型」もおすすめです。お互いの手法のメリットを生かすような研修設計をぜひ、考えてみてください。